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16 Side 司 01話
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歌の練習で渋々第三音楽室へ来ていた。
今日は俺たちが準備室で、教室は翠たちが使っている。
とりあえずは人前で歌うことに慣れろ、ということで、優太と朝陽が俺についているわけだが、正直うんざりだ。けど、それを一週間も強要されれば慣れてしまう自分の順応力の高さを若干恨む。
翠は大丈夫だろうか……。
きっと、翠は人前で何かをするということに慣れてはいない。とくに言葉を発することにおいては拍車をかけて。
「そういやさ、司のその態度ってわざと?」
急に優太に訊かれた。
態度ってなんの話だか……。
「あぁ、俺も気になってた」
朝陽も便乗するからには何か芯のある話と思うべきか。
「さすがに色々やばいと思うんだけど」
優太が俺の隣に腰を下ろせば、朝陽は俺の正面に腰を下ろす。
「なんの話か見えないんだけど」
「ばれないほうがおかしいでしょ?」
朝陽の抽象的な言い方に少しイラつく。と、優太が俺以上の苛立ちを見せた。
「だからさ、翠葉ちゃんにとばっちりがいかないように動けないのかって話」
「何、それ……」
こいつら何を今さら……?
「司の行動じゃ周囲にばればれだよ?」
呆れたように朝陽が口にする。
だから何?
「……今まで、とくに隠してきたつもりはないけど」
楽譜に目を通しながら答える。
「……なんだそういうこと」
朝陽が視界の端で口端を上げていた。
それは何か面白いことを見つけたような表情に見える。
「何それ……。翠葉ちゃんが呼び出しされてもいいと思ってるわけっ!?」
「そうは言ってない」
なんだか面倒な話だな……っていうか、何を今さらこんな話――
突っ込むなら一学期にでも突っ込めたはずだ。
「でも、必然とそうなるだろっ!?」
優太は発火寸前。朝陽は納得したのか余裕そうな雰囲気を纏い始めた。
「つまり、そういうことだろ?」
朝陽が、「おまえが自分で話せ」と目で言ってくる。
「別に……呼び出されたら呼び出されたで迎えに行くまでのこと」
ただそれだけだ。
すでに風紀委員は動き始めているし、通常なら風紀委員しか動かないものを、最初から藤宮警備と連動させる程度には予防措置をとっている。
何も間違いなど起きないし、起こさせるつもりもない。
「……なんだ、そういうことか。司って意外と大胆なのな?」
優太も優太なりに納得したらしく、食いつく勢いはなくなった。
「でも、なんだってそんな態度に出して行動してるわけさ。それがわかんないよ」
優太の顔が歪み、朝陽がクイズにでも答えるようなノリで口を開いた。
「態度に出しても口でそれっぽいことを言っても気づかないから?」
「えっ!? 何、あれだけ態度に出していて、翠葉ちゃん全然気づいてないの? それ、あり得なくないっ!?」
いや、あり得るから……。
「なんだったら、俺がひとり気づかないほうに賭けてもいいけど?」
ばれるならとっくにばれていていいはずだ。
周りは気づいていて当の本人、翠だけが気づいていないというのも変な話だし、いい加減慣れた。その状況にすら順応していて、態度に出す出さないなんて考える必要すらない。
そうだな……。
「期間は紅葉祭が終わるまで」
ふたりに笑みを向ければ、
「負け戦っぽいけど乗ってやるよ」
朝陽がにこりと笑う。
「あの子、どれだけ鈍感なんだろう」
優太が机に突っ伏すと、ゴンといい音がした。
「でもさ、呼び出しの件は本当に気をつけてあげてほしい。うちの生徒灰汁の強い人間多いからさ」
優太は嵐の件で目の当たりにしているから、翠が心配なのだろう。
「わかってる」
「おまえ、本物の白馬の王子になれるかもね」
朝陽が楽しそうに口にした。
「さぁね」
俺にそんなことを言っている暇があるなら、こんなところにいないで戻って働け……。
今言われたようなことを自分で考えた時期もあった。かまいすぎるのもどうなのか、と……。
気になって仕方がなくて、翠を知りたいと思い始めたときにはかまいすぎと言われてもおかしくない状態になっていた。
そのとき、少し距離を置くことも考えた。けど、結果的には実行には移せず……。
側にいたいと思う気持ちと、目の届くところに置いておかないと不安だから、というのと――夏休みにおいては、翠自身に側にいることを望まれていると思えたから。
俺と一緒にいることで、翠に何か危害が加わるのだとしたら、そんなものは俺がどうにかすればいいだけのこと。
翠を傷つけたいわけじゃない。
もしそういうことになったとしても、必ず助けにいく、ということをわかってほしい。
翠は意外と条件の刷り込みには弱いから、パブロフの犬よろしく的に、何かあれば俺が助けにいく、という図式さえ構築できれば、俺はもう一歩翠に近づける気がした。
何よりも、やっと一緒にいる口実ができた。
生徒会で会計というポジション。先輩後輩で見るならそういうポジションにいることで、俺のテリトリーに入れる人間になる。
そこをやっかむ人間もいるらしいが、そんなのは門前払いもいいところだ。
第一、生徒会は成績がものを言う。それすらクリアしていない人間が翠にどうこう言える立場ではない。
そんなことすらわからない低次元な人間たち。
それら全般を面倒としか認識できないし、何よりも嫌悪の対象。が、それならそれで利用してやろうと思っている俺は、やっぱり腹黒いのかもしれない。
今日は俺たちが準備室で、教室は翠たちが使っている。
とりあえずは人前で歌うことに慣れろ、ということで、優太と朝陽が俺についているわけだが、正直うんざりだ。けど、それを一週間も強要されれば慣れてしまう自分の順応力の高さを若干恨む。
翠は大丈夫だろうか……。
きっと、翠は人前で何かをするということに慣れてはいない。とくに言葉を発することにおいては拍車をかけて。
「そういやさ、司のその態度ってわざと?」
急に優太に訊かれた。
態度ってなんの話だか……。
「あぁ、俺も気になってた」
朝陽も便乗するからには何か芯のある話と思うべきか。
「さすがに色々やばいと思うんだけど」
優太が俺の隣に腰を下ろせば、朝陽は俺の正面に腰を下ろす。
「なんの話か見えないんだけど」
「ばれないほうがおかしいでしょ?」
朝陽の抽象的な言い方に少しイラつく。と、優太が俺以上の苛立ちを見せた。
「だからさ、翠葉ちゃんにとばっちりがいかないように動けないのかって話」
「何、それ……」
こいつら何を今さら……?
「司の行動じゃ周囲にばればれだよ?」
呆れたように朝陽が口にする。
だから何?
「……今まで、とくに隠してきたつもりはないけど」
楽譜に目を通しながら答える。
「……なんだそういうこと」
朝陽が視界の端で口端を上げていた。
それは何か面白いことを見つけたような表情に見える。
「何それ……。翠葉ちゃんが呼び出しされてもいいと思ってるわけっ!?」
「そうは言ってない」
なんだか面倒な話だな……っていうか、何を今さらこんな話――
突っ込むなら一学期にでも突っ込めたはずだ。
「でも、必然とそうなるだろっ!?」
優太は発火寸前。朝陽は納得したのか余裕そうな雰囲気を纏い始めた。
「つまり、そういうことだろ?」
朝陽が、「おまえが自分で話せ」と目で言ってくる。
「別に……呼び出されたら呼び出されたで迎えに行くまでのこと」
ただそれだけだ。
すでに風紀委員は動き始めているし、通常なら風紀委員しか動かないものを、最初から藤宮警備と連動させる程度には予防措置をとっている。
何も間違いなど起きないし、起こさせるつもりもない。
「……なんだ、そういうことか。司って意外と大胆なのな?」
優太も優太なりに納得したらしく、食いつく勢いはなくなった。
「でも、なんだってそんな態度に出して行動してるわけさ。それがわかんないよ」
優太の顔が歪み、朝陽がクイズにでも答えるようなノリで口を開いた。
「態度に出しても口でそれっぽいことを言っても気づかないから?」
「えっ!? 何、あれだけ態度に出していて、翠葉ちゃん全然気づいてないの? それ、あり得なくないっ!?」
いや、あり得るから……。
「なんだったら、俺がひとり気づかないほうに賭けてもいいけど?」
ばれるならとっくにばれていていいはずだ。
周りは気づいていて当の本人、翠だけが気づいていないというのも変な話だし、いい加減慣れた。その状況にすら順応していて、態度に出す出さないなんて考える必要すらない。
そうだな……。
「期間は紅葉祭が終わるまで」
ふたりに笑みを向ければ、
「負け戦っぽいけど乗ってやるよ」
朝陽がにこりと笑う。
「あの子、どれだけ鈍感なんだろう」
優太が机に突っ伏すと、ゴンといい音がした。
「でもさ、呼び出しの件は本当に気をつけてあげてほしい。うちの生徒灰汁の強い人間多いからさ」
優太は嵐の件で目の当たりにしているから、翠が心配なのだろう。
「わかってる」
「おまえ、本物の白馬の王子になれるかもね」
朝陽が楽しそうに口にした。
「さぁね」
俺にそんなことを言っている暇があるなら、こんなところにいないで戻って働け……。
今言われたようなことを自分で考えた時期もあった。かまいすぎるのもどうなのか、と……。
気になって仕方がなくて、翠を知りたいと思い始めたときにはかまいすぎと言われてもおかしくない状態になっていた。
そのとき、少し距離を置くことも考えた。けど、結果的には実行には移せず……。
側にいたいと思う気持ちと、目の届くところに置いておかないと不安だから、というのと――夏休みにおいては、翠自身に側にいることを望まれていると思えたから。
俺と一緒にいることで、翠に何か危害が加わるのだとしたら、そんなものは俺がどうにかすればいいだけのこと。
翠を傷つけたいわけじゃない。
もしそういうことになったとしても、必ず助けにいく、ということをわかってほしい。
翠は意外と条件の刷り込みには弱いから、パブロフの犬よろしく的に、何かあれば俺が助けにいく、という図式さえ構築できれば、俺はもう一歩翠に近づける気がした。
何よりも、やっと一緒にいる口実ができた。
生徒会で会計というポジション。先輩後輩で見るならそういうポジションにいることで、俺のテリトリーに入れる人間になる。
そこをやっかむ人間もいるらしいが、そんなのは門前払いもいいところだ。
第一、生徒会は成績がものを言う。それすらクリアしていない人間が翠にどうこう言える立場ではない。
そんなことすらわからない低次元な人間たち。
それら全般を面倒としか認識できないし、何よりも嫌悪の対象。が、それならそれで利用してやろうと思っている俺は、やっぱり腹黒いのかもしれない。
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