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23 Side 優太 02話
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外部生で藤宮の人間を特別視しない人間。それでいて、成績が上位二十位以内であること。根気強くものごとに打ち込める性格であること。
それらの条件を満たしている人間が外部生の中で俺しかいなかったらしい。
「孤高の王子様をいい加減どうにかしたいんだ」
会長がそう言った。
「俺たちは小中高と一緒だったけど、それでも司の内面には踏み込めていない。でも、俺たちは先に卒業しちゃうから」
寂しそうに笑う会長を見て、ものすごく後輩思いの先輩なんだな、と思った。
それだけでなんか胸を打たれちゃったんだよね。
藤宮の人間とか財閥の御曹司とか、俺はそんなことどうでもよくて。でも、ずっとこの学園で過ごしてきた人間たちにとっては違うのかな、と想像くらいは試みるわけで。
ま、どこぞの御曹司やら令嬢やらが通う学校ということで有名なのは知っていたから、親の会社のしがらみも子どもに関係しちゃうのかもしれない、と安直に想像した。
幸い、俺の親は教師だから会社間のしがらみなんてものはないし、この高校に入ったのだって屋内プールだけが目的だったりするし……。
「条件をひとついいですか?」
にこりと笑顔を作ると、会長もお返し、と言わんばかりににこりと笑った。
「当てようか?」
でも、実際口にしたのは茜先輩。
「荒川嵐子ちゃんでしょう?」
ふふ、とかわいらしく笑った。
「リサーチ済みだよ。でも、今のままじゃ彼女には生徒会に入る資格がないんだ」
資格……?
「成績が上位二十位以内じゃないと生徒会には入れないの」
ごめんね、というような顔をふたりがした。
「先輩方……嵐子が去年の夏までどの高校を受けるつもりだったかまでは知りませんよね?」
今度はふたり顔を見合わせる。
「鳴沢です。この高校よりも三ランクから四ランク下の高校を受けるつもりでいました。半年でこの藤宮に受かるまでの偏差値になりました」
「あら……それはすごいことよ?」
「じゃぁさ、もう少しがんばってもらおうか? 生徒会役員が決まるのは中間考査と全国模試のあとなんだ。だから、そのふたつで上位二十位に入ってもらえれば問題なく引っ張れる」
「努力します」
「うん。君ってそういう人だよね? 現状で諦めるんじゃなくて、その先の努力をする人間。そういう人じゃないと司には付き合いきれないと思う」
いったいどんな人間なんだ、と不安になりはしたものの、会ってみればそんなに癖のある人間だとは思わなかった。ただ、人にもものにも執着がない。ひどく淡白な人間ってだけだった。
女子に自分から話しかけることはなく、男子にだって自分から話しかけるということをめったにしない。いつも教室の窓際で視界に本しか入れてないような人間で、人を寄せ付けない雰囲気をまとっていた。
こんなやつ、本当に懐柔できるものか、と思い続けて今に至る。
相変わらず学校外での付き合いはない。けど、ひとりの女の子と出逢ってから司は変わった。
あの司が自分から女子に声をかけた。それだけでもかなり衝撃的な進歩っていうか、進化か……?
俺たちとも必要以上の会話などしなかったのが、最近では日常会話くらいはするようになったと思う。突っ込んだことを訊いても何かしら反応するようになった。
一年以上にわたる俺の努力よりも翠葉ちゃん効果かよ……と落胆したくもなるけれど、そう思っているのは俺だけじゃなくて、朝陽やケンは幼稚部のころから絡みまくって今の状態だ。俺なんてまだ一年半なんだよね。
「お互い、懐柔し甲斐のある同級生がいると苦労しますよね」
苦労しますよね、なんて言いながら、佐野くんの表情はそれに伴っていない。
「どっちかっていうと、攻略し甲斐あるって顔してるけど?」
「あー、それ間違ってません。御園生が笑うと嬉しいし、何か話してくれるとしてやったり、って思うし。恋愛対象じゃないけど、妙に一喜一憂させられる相手なんですよ」
そう言って笑う。
「俺の場合はさぁ、対象が女の子じゃなくて男なんだよね。でも、気持ちはわからなくはない。司の表情が豊かになったと思えば、心境は若干親心に近いものが……」
そんな話をしていると、ピーッ、と笛が鳴り、「休憩終わり」という声が聞こえてきた。
「すんません。じゃ、俺練習に戻ります」
佐野くんはスプリンターらしい足のバネでフィールドへ下りていった。
あれは後輩っていうよりも、
「同士、かな……?」
佐野くんの走りを一本みてから図書棟へ戻ると、不機嫌大魔王と茜先輩の姿がなかった。
「優太先輩、これ茜先輩から」
海斗に渡されたメモを読めば、
『優太ごめんっ! 司借りていくから、その仕事よろしく! あっ、海斗と千里を駆使してかまわないわ』
女の子らしいかわいい字が並んでいた。
「その仕事」と書かれているが、このテーブル上のどの山ですかね……。茜先輩……。
「その山全部だそうです」
海斗がテーブルの上を指差し苦笑する。
あの不機嫌な司がいたら空気は重いが仕事は早く終わる。でも、これをこのメンバーで……ねぇ。
気が遠くなるなぁ……。
そう思ったときだった。
「それ、手伝うよ」
「え? 秋斗先生?」
「司が穴開けてるんだろ?」
そう言って俺の向かい、つまりはいつもの司の席に着く。
「秋斗先生仕事は?」
「明後日の分まで終わらせてあるから大丈夫だよ」
海斗に似た顔で甘く笑う。
「明日から楽しみな予定があってね、とっとと終わらせるつもりではいたんだけど、こんなに早く終わるとは思っていなかったんだ」
そう言って、目の前の「山」に着手した。
この甘いマスクにこの気遣い。そりゃ、女の子は軒並みつれるよね。
そんなことを考えながら仕事を始めた。
それらの条件を満たしている人間が外部生の中で俺しかいなかったらしい。
「孤高の王子様をいい加減どうにかしたいんだ」
会長がそう言った。
「俺たちは小中高と一緒だったけど、それでも司の内面には踏み込めていない。でも、俺たちは先に卒業しちゃうから」
寂しそうに笑う会長を見て、ものすごく後輩思いの先輩なんだな、と思った。
それだけでなんか胸を打たれちゃったんだよね。
藤宮の人間とか財閥の御曹司とか、俺はそんなことどうでもよくて。でも、ずっとこの学園で過ごしてきた人間たちにとっては違うのかな、と想像くらいは試みるわけで。
ま、どこぞの御曹司やら令嬢やらが通う学校ということで有名なのは知っていたから、親の会社のしがらみも子どもに関係しちゃうのかもしれない、と安直に想像した。
幸い、俺の親は教師だから会社間のしがらみなんてものはないし、この高校に入ったのだって屋内プールだけが目的だったりするし……。
「条件をひとついいですか?」
にこりと笑顔を作ると、会長もお返し、と言わんばかりににこりと笑った。
「当てようか?」
でも、実際口にしたのは茜先輩。
「荒川嵐子ちゃんでしょう?」
ふふ、とかわいらしく笑った。
「リサーチ済みだよ。でも、今のままじゃ彼女には生徒会に入る資格がないんだ」
資格……?
「成績が上位二十位以内じゃないと生徒会には入れないの」
ごめんね、というような顔をふたりがした。
「先輩方……嵐子が去年の夏までどの高校を受けるつもりだったかまでは知りませんよね?」
今度はふたり顔を見合わせる。
「鳴沢です。この高校よりも三ランクから四ランク下の高校を受けるつもりでいました。半年でこの藤宮に受かるまでの偏差値になりました」
「あら……それはすごいことよ?」
「じゃぁさ、もう少しがんばってもらおうか? 生徒会役員が決まるのは中間考査と全国模試のあとなんだ。だから、そのふたつで上位二十位に入ってもらえれば問題なく引っ張れる」
「努力します」
「うん。君ってそういう人だよね? 現状で諦めるんじゃなくて、その先の努力をする人間。そういう人じゃないと司には付き合いきれないと思う」
いったいどんな人間なんだ、と不安になりはしたものの、会ってみればそんなに癖のある人間だとは思わなかった。ただ、人にもものにも執着がない。ひどく淡白な人間ってだけだった。
女子に自分から話しかけることはなく、男子にだって自分から話しかけるということをめったにしない。いつも教室の窓際で視界に本しか入れてないような人間で、人を寄せ付けない雰囲気をまとっていた。
こんなやつ、本当に懐柔できるものか、と思い続けて今に至る。
相変わらず学校外での付き合いはない。けど、ひとりの女の子と出逢ってから司は変わった。
あの司が自分から女子に声をかけた。それだけでもかなり衝撃的な進歩っていうか、進化か……?
俺たちとも必要以上の会話などしなかったのが、最近では日常会話くらいはするようになったと思う。突っ込んだことを訊いても何かしら反応するようになった。
一年以上にわたる俺の努力よりも翠葉ちゃん効果かよ……と落胆したくもなるけれど、そう思っているのは俺だけじゃなくて、朝陽やケンは幼稚部のころから絡みまくって今の状態だ。俺なんてまだ一年半なんだよね。
「お互い、懐柔し甲斐のある同級生がいると苦労しますよね」
苦労しますよね、なんて言いながら、佐野くんの表情はそれに伴っていない。
「どっちかっていうと、攻略し甲斐あるって顔してるけど?」
「あー、それ間違ってません。御園生が笑うと嬉しいし、何か話してくれるとしてやったり、って思うし。恋愛対象じゃないけど、妙に一喜一憂させられる相手なんですよ」
そう言って笑う。
「俺の場合はさぁ、対象が女の子じゃなくて男なんだよね。でも、気持ちはわからなくはない。司の表情が豊かになったと思えば、心境は若干親心に近いものが……」
そんな話をしていると、ピーッ、と笛が鳴り、「休憩終わり」という声が聞こえてきた。
「すんません。じゃ、俺練習に戻ります」
佐野くんはスプリンターらしい足のバネでフィールドへ下りていった。
あれは後輩っていうよりも、
「同士、かな……?」
佐野くんの走りを一本みてから図書棟へ戻ると、不機嫌大魔王と茜先輩の姿がなかった。
「優太先輩、これ茜先輩から」
海斗に渡されたメモを読めば、
『優太ごめんっ! 司借りていくから、その仕事よろしく! あっ、海斗と千里を駆使してかまわないわ』
女の子らしいかわいい字が並んでいた。
「その仕事」と書かれているが、このテーブル上のどの山ですかね……。茜先輩……。
「その山全部だそうです」
海斗がテーブルの上を指差し苦笑する。
あの不機嫌な司がいたら空気は重いが仕事は早く終わる。でも、これをこのメンバーで……ねぇ。
気が遠くなるなぁ……。
そう思ったときだった。
「それ、手伝うよ」
「え? 秋斗先生?」
「司が穴開けてるんだろ?」
そう言って俺の向かい、つまりはいつもの司の席に着く。
「秋斗先生仕事は?」
「明後日の分まで終わらせてあるから大丈夫だよ」
海斗に似た顔で甘く笑う。
「明日から楽しみな予定があってね、とっとと終わらせるつもりではいたんだけど、こんなに早く終わるとは思っていなかったんだ」
そう言って、目の前の「山」に着手した。
この甘いマスクにこの気遣い。そりゃ、女の子は軒並みつれるよね。
そんなことを考えながら仕事を始めた。
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