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第2章 説明が足んない
説明が足んない 5
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筒状のガラスの内側にキッチンタイマーがくっついてる。リンゴ型の百均とかでよく見るやつ。
僕の方――ガラスの外側からその弱々しいアラーム音は聞こえなかったけども、猫のコスプレをした彼女はそれを停止させると同時に、筒状ガラスは自動で観音開きになった。
猫の彼女はニャハハと笑いながら僕の方に向かって歩いてくる。
短いスカートから綺麗で健康的な脚が見える。それでも相変わらず、僕の中の小さな僕はピクリとも反応しやしない。
「ようこそにゃん、拓海様」
「……えーと、こんにちは」
何から話せばいいのかわからない。
幾つだろう。僕と同じか、少し上に見える。
「あたしは猫助。マンチカンの2歳にゃん」
仮だとしても何ちゅう名前だ。
マンチカン? 猫の種類だろう。本当になりきってる。
そして僕は2歳じゃない。彼女も人間年齢で中学生くらいだろう。
「僕は……」
名乗りかけてやめた。彼女は既に二度も僕の名前を呼んでる。
もし彼女が屋敷内にいる宇宙服メイドの一人なら、当然ながら僕のことは知ってる筈だ。
とりあえず、猫助のアイデンティティはスルーして別の質問しとこう。
「ここって、リップアーマーを作ってるところだと思ったんだけど……?」
「作ってるにゃん。今、あたしのダシをとってたにゃんよ」
「ダシ? ニボシみたいに?」
「にゃん」
確かに、キッチンタイマーで時間を計ってたもんな。そのわりに、ガラスの中に液体なんてないけど。
「よくわかんないけど、キミのダシがリップアーマーの成分の一つなんだね?」
「そうにゃんよ。処女特有のニオイにゃん。下のホースで吸い取ってたにゃん」
ホントだ。ガラスの下部にホースがくっついてて、それは怪しい黒色の装置に送り込まれてた。
処女……動物性愛者だもんな。まさか、本気で猫とエッチなんてしないだろう……多分。
「キミの他には誰もいないの?」
「二人いるにゃん。今にょっと材料取りに魔界に行ってるにゃん」
魔界って……。
「簡単に言ってくれたね?」
「簡単に行けるから簡単に言ったまでにゃんよ? にゃあ、魔界にもピンキリあるにゃんが」
「でも、キミみたいな女の子が魔界に行って、もしインキュバスに遭遇したら……あ、そうか!」
「どしたにゃん?」
僕は「いいんだ」と言って話を切る。
猫助は動物性愛者だからどんなイケメン夢魔が誘惑しようと、それになびかない。
インキュバスにとって彼女みたいなタイプは苦手なんだ。
ゆえに、彼女にリップアーマーはいらない。
いわば、彼女自身がリップアーマーの原鉱みたいなもんだ。
ハーフ・インキュバスである僕が彼女に興味を示さないのも同じ理由だろう。
猫助はジーッと僕が持ってるティッシュBOXを見つめている。
「拓海様はあたし見てシコシコしにゃいにゃん?」
「え?」
「いつもお屋敷でやってるにゃん?」
み、見られてたのか! メイド軍団、油断ならねえッ!
「ねえ、あたしでシコシコしてみるにゃん?」
どんな催促だ!
「……してほしいの?」
「是非するにゃん。あたし達、人のオスのシコシコに興味あるにゃん」
「自分だって人じゃんか。それに、悪いけどできないよ。僕の中の小さい僕がメタモルフォーゼしないから」
「あたしだとスーペニ勃起しにゃいにゃんか?」
「業界風に言ってもわかるから! こっちはあえてメタファーで表現してんのにッ!」
あたし達?
まさか、こんなのがあと二人控えてる?
見世物じゃないぞ!
僕の哀しいティッシュ生活を何だと思ってるんだ!
僕の方――ガラスの外側からその弱々しいアラーム音は聞こえなかったけども、猫のコスプレをした彼女はそれを停止させると同時に、筒状ガラスは自動で観音開きになった。
猫の彼女はニャハハと笑いながら僕の方に向かって歩いてくる。
短いスカートから綺麗で健康的な脚が見える。それでも相変わらず、僕の中の小さな僕はピクリとも反応しやしない。
「ようこそにゃん、拓海様」
「……えーと、こんにちは」
何から話せばいいのかわからない。
幾つだろう。僕と同じか、少し上に見える。
「あたしは猫助。マンチカンの2歳にゃん」
仮だとしても何ちゅう名前だ。
マンチカン? 猫の種類だろう。本当になりきってる。
そして僕は2歳じゃない。彼女も人間年齢で中学生くらいだろう。
「僕は……」
名乗りかけてやめた。彼女は既に二度も僕の名前を呼んでる。
もし彼女が屋敷内にいる宇宙服メイドの一人なら、当然ながら僕のことは知ってる筈だ。
とりあえず、猫助のアイデンティティはスルーして別の質問しとこう。
「ここって、リップアーマーを作ってるところだと思ったんだけど……?」
「作ってるにゃん。今、あたしのダシをとってたにゃんよ」
「ダシ? ニボシみたいに?」
「にゃん」
確かに、キッチンタイマーで時間を計ってたもんな。そのわりに、ガラスの中に液体なんてないけど。
「よくわかんないけど、キミのダシがリップアーマーの成分の一つなんだね?」
「そうにゃんよ。処女特有のニオイにゃん。下のホースで吸い取ってたにゃん」
ホントだ。ガラスの下部にホースがくっついてて、それは怪しい黒色の装置に送り込まれてた。
処女……動物性愛者だもんな。まさか、本気で猫とエッチなんてしないだろう……多分。
「キミの他には誰もいないの?」
「二人いるにゃん。今にょっと材料取りに魔界に行ってるにゃん」
魔界って……。
「簡単に言ってくれたね?」
「簡単に行けるから簡単に言ったまでにゃんよ? にゃあ、魔界にもピンキリあるにゃんが」
「でも、キミみたいな女の子が魔界に行って、もしインキュバスに遭遇したら……あ、そうか!」
「どしたにゃん?」
僕は「いいんだ」と言って話を切る。
猫助は動物性愛者だからどんなイケメン夢魔が誘惑しようと、それになびかない。
インキュバスにとって彼女みたいなタイプは苦手なんだ。
ゆえに、彼女にリップアーマーはいらない。
いわば、彼女自身がリップアーマーの原鉱みたいなもんだ。
ハーフ・インキュバスである僕が彼女に興味を示さないのも同じ理由だろう。
猫助はジーッと僕が持ってるティッシュBOXを見つめている。
「拓海様はあたし見てシコシコしにゃいにゃん?」
「え?」
「いつもお屋敷でやってるにゃん?」
み、見られてたのか! メイド軍団、油断ならねえッ!
「ねえ、あたしでシコシコしてみるにゃん?」
どんな催促だ!
「……してほしいの?」
「是非するにゃん。あたし達、人のオスのシコシコに興味あるにゃん」
「自分だって人じゃんか。それに、悪いけどできないよ。僕の中の小さい僕がメタモルフォーゼしないから」
「あたしだとスーペニ勃起しにゃいにゃんか?」
「業界風に言ってもわかるから! こっちはあえてメタファーで表現してんのにッ!」
あたし達?
まさか、こんなのがあと二人控えてる?
見世物じゃないぞ!
僕の哀しいティッシュ生活を何だと思ってるんだ!
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