異世界列車囚人輸送

先川(あくと)

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2章 二人の悪人

7、シノは冷淡にそう言った

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    ◇

 シノは速度を緩めて止まった。
「逃げられたわね」
 ジョーが追いついてきて言う。
「まだチャンスはあります」
「そうかしら」

「ジョーは部下に裏切られた。そのうえ、あれだけの傷を負ってる。あれでは拠点には戻れません」

「どこかで治療をすると?」
「じゃあ、治癒魔法をかけてもらいに教会に行ったんだに!!」
 レナがジョーの隣に馬をつける。
「教会は焼けたよ。聞いてなかったのか?」

 デュアメルは呆れたようにレナを見た。昨夜、列車の中では、教会がドラゴンによって焼き尽くされた話でもちきりだった。
「焼けたって神父の一人くらいいるに!!」
「まさか。あいつには信仰心なんてものはねえよ。医者の家に行ったんだ」

 シノはデュアメルのセリフに頷いた。
 全く同じ意見だった。
 聖職者がほどこす治癒魔法は、魔晶石から取り出したエネルギーを生命力に変えて患者に送り込む。まったくの迷信というわけではなかったが、信仰心がその効果を左右する。
聖職者はあくまで神の代理であり、神の恩恵の媒体に過ぎないからだ。

 トウセキは聖職者の魔術よりも、医術に頼ろうとするだろう。

 そうなると、この近くで医者が住んでいる町はそう多くはない。
 恐らく……。

「恐らく、トウセキはアヴィリオンに向かったんでしょう。デュアメル、怪我人には列車に乗って次の駅で治療を受けさせろ」

「死人はどうします?」

「とにかく動ける者以外は放っていくしかないだろう」

 シノは冷淡にそう言った。

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