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5-2.妖精卿と解放の誘い編2【R-15:深めのキス】
しおりを挟むヴァルネラに手を引かれて廊下を歩くと、血の匂いと魔力が強く漂ってきた。
それは激戦の名残だろうが、ふと竜と戦ったにしては帰宅が早いことに気づく。
「にしてもこんなに早く帰ってくると思わなかった。ちゃんと倒したんだよね?」
「貴方の方が大事なんで、手早く片付けてきました。それとお土産見てください!」
彼の帰還が早かったことに裏はないようで、単純に力で竜を排除してきたらしい。
そしてヴァルネラは立ち止まると懐から赤黒い塊を取り出し、俺に手渡してきた。
(すごい魔力だ。見てるだけで気持ち悪くなる、けど取り入れたら確実に強くなる)
竜の心臓が結晶化した核は、未だ高濃度の魔力を帯びて存在感を主張している。
下手に手を出せば、受け入れ側が負けて浸食されかねない迫力だ。
「なかなか強い魔力ですから、一欠片だけ飲み込んでください。後は私が頂きます」
「それこそ俺、魔力汚染を起こさない? 一口でもかなりきつそうなんだけど」
核から放たれる魔力に俺がたじろいでいると、ヴァルネラがそれを摘まみ上げる。
そして彼は躊躇なく核を口に含み、咀嚼しては飲み下していった。
「では私が取り込んで、経口で徐々に魔力を与えましょうか。……んっ」
(うわ、飴みたいに一口で飲み込んだ。しかも全然平気そうだし)
改めてヴァルネラが一般人とは違うことを思い知り、俺は若干の畏敬を覚える。
けれど当の本人は気にした様子はなく、ゆっくりと俺に身を寄せてきた。
「グレイシス、口を開けて。唾液を媒介に、魔力を流し込みますので」
「え、こんな窓際で? あ、ん、んうっ」
俺たちは未だ部屋にも辿りついていないのに、廊下の一角で唇を奪われる。
けれどヴァルネラの舌が俺の口内に入り込むと、異質な魔力が伝わってきた。
「……ちゃんと魔力が流れているの、分かりますか」
「うん、なんだか頭がぼぅっとする……」
唾液を通じて俺の全身を魔力が循環し、酩酊感にも似た熱が体を駆け巡る。
行為を重ねた末に抵抗感は薄まり、今はヴァルネラの舌先を追ってしまう。
「魔力を受け入れられている証拠ですよ、良い子ですね」
「んっ、んふ、っん……」
舌を擦り合わせると甘い痺れが走って、俺はヴァルネラに縋りついた。
すると彼は俺の体を抱き寄せ、更に深く唇を貪ってくる。
「ん、……は、ぁ」
「そろそろやめておきますか。少しずつ、できるようになればいいですからね」
俺が息苦しそうなこと気づいたヴァルネラは、唇を一舐めしてから体を離した。
まだ熱の引かない頭は朦朧としていて、失われた距離に寂しさを覚えてしまう。
「……グレイシス?」
「やだ、待って。お願いヴァルネラ、もうちょっとだけしようよ」
俺はヴァルネラの襟を握りしめて引き止め、自分から唇を寄せて啄んでいく。
彼は一瞬目を丸くしたが、すぐに俺の腰を抱いて応えてくれた。
「! ……はい、貴方が望むなら!」
(ヴァルネラ、嬉しそうな顔してる。まだ続けてくれそうだ)
鼻先を擦り合わせるように唇を合わせ、俺は魔力と血の匂いに酔う。
息継ぎよりも、舌先を擦り合わせるのに夢中になっていく。
「こういう行為に、だいぶ抵抗なくなってきましたね。グレイシス」
「んぅ、だって魔力を受け入れるには、これが一番の手段でしょ」
唇が離れると混ぜ合わされた唾液が糸を引き、ヴァルネラの口元を濡らす。
妖艶に光るそこにも舌を這わせようとすると、指を押しあてられて止められた。
(あ、今度は不機嫌になった。でもなんで)
目の前の男に不満を表されるが、理由が分からず俺は首を傾げるしかない。
するとヴァルネラは深々と溜め息を吐いて、俺の唇を指でなぞる。
「……そうでしたね、貴方は。じゃあもう少し、深くしましょうか」
「んぅ!? ま、待って。なんかぞくぞくする……!」
ヴァルネラは噛みつくように俺の唇を塞ぎ、舌を根元まで入れて貪ってくる。
今度は獰猛に歯列を撫でられ、舌裏をくすぐられる度に背筋が震えた。
「んっ、ん……っ! ヴァルネラ、苦しい……!」
「グレイシス、ちゃんと息継ぎをして。酸欠になりますよ」
胸を叩いて抗議しても、ヴァルネラは唇を離すどころか激しく責め立ててくる。
段々と酸素が足りなくなっていき、溺れるような感覚に体から力が抜けていく。
「ん、ふぅ、……っあぁ!」
「立てなくなっちゃいましたか? ふふ、じゃあ私に寄り掛かって」
膝を震わせながら、俺は言われた通りに体を預けてヴァルネラに縋りつく。
いつの間にか彼の機嫌は治っていて、優しく俺の体を抱き留めていた。
「も、おしまいでいい! 魔力も充分受け取ったから! っはぁ、あぁ……!」
「経口摂取、思ったより良さそうですね。これから積極的に行いましょうか」
口移しを終えたヴァルネラは嬉しそうに提案をしながらも、俺を離そうとしない。
体液を介していないから魔力は伝わらないが、俺は好きなようにさせていた。
(こんなことしたって、意味ないのに。でも振り解こうと思わない自分もいる)
最近は唇を落とされる度に多幸感に包まれ、抵抗する力を奪われてしまう。
けれどいつの間にかヴァルネラは窓の外へと目を移し、鋭く目を細めていた。
「……? どうしたのヴァルネラ、窓の外になんかいる?」
「いえ、気にしなくて結構です。それよりまた、おかえりって言ってくれませんか」
再び俺に目を戻した時には、ヴァルネラの表情は甘やかなものに変わっていた。
俺は少しだけ違和感を覚えつつも、彼の望む言葉を口にする。
「え、おかえり。これってそんなに嬉しい?」
「はい! 何度でも聞きたくなります!」
俺にとっては珍しくもない言葉だが、ヴァルネラには心底魅力的なものらしい。
その表情に嘘は見つけられず、つまりは混じりけのない本心だと伝わってくる。
「そんな大層な挨拶じゃないのにな……」
俺が困惑しながらも帰宅の挨拶を口にすると、彼は抱きしめる力を強めてくる。
するともう魔力は不足していないのに、どうしてか胸が疼いてやまなくなった。
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