勇者、チー牛

１４：屋根

牛丼屋予定地。

柱4本がしっかり立ち、凰翔は肩に掛けた古びた木槌を軽く振り下ろした

「……よし、四隅は揃ったか」

ギンが柱の間を歩き回り、中央で前足を「コツン」と置く。まるで「次は屋根だ」と言っているかのようだ。

凰翔は柱の天端をじっと見つめる。屋根を作るには、まず横木を渡す必要がある。しかし、丸太をただ柱の上に置くだけでは、少しの衝撃で滑り落ちるのは確実だ。

「……ちょっと切り込みを入れれば、丸太が収まる……か」


凰翔は柱の天端を見つめ、屋根を支える横木のための溝を彫ろうとナイフを握った。

最初の一振りは思ったより浅く、ナイフはすべり、手元が危うくぐらついた。

「うっ……！」

何度か角度を変えて試すが、柱の硬さに刃が弾かれ、思ったように溝が掘れない。

「少しずつ削るしかないか……」

結局、刃をぎゅっと押し込み、ゆっくりと慎重に削っていく。そしてようやく、丸太がぴたりと収まる浅い溝が完成したのだ。


「……ふう、なんとか……」

手こずった分、丸太を置いたときの安定感に少し誇らしさを感じる。

浅くはめ込むことで、簡単にはずれない。森の木材を使った、原始的だけど理にかなった固定方法だ。


「……これなら、軽い屋根ならいけそうだな」

ギンは横木の上に前足を置き、安定性を確認する。まるで「バランスOK」と言っているかのようだ。

「……よし、次は屋根材だな。そんな立派な屋根は作れないし、大きな葉っぱでも集めるか」


ギンが嬉しそうに尻尾を振る。どうやら彼も、冒険心が芽生えたようだ。

森の入口に立つと、木々の間から優しい光が差し込み、落ち葉がカサカサと音を立てる。

ギンはすぐに森の中へ駆け出す。凰翔も追いかけながら、目を皿のようにして葉っぱを探す。
大きくて丈夫そうな葉を見つけるたびに、手でそっと摘み、古びた布袋に押し込む。

「おお、これはいいぞ。厚みもあるし、水も弾きそうだ」
ギンも鼻をひくひくさせながら、葉っぱを口にくわえてきては、嬉しそうに凰翔の前に置く。


森の奥に入るにつれ、葉っぱはますます大きく、丈夫そうなものばかりになった

「これだけ集めれば、屋根に十分だな……」

ふたりは少し汗をかきながらも、次第に楽しい気分になっていった。
ギンは葉っぱをくわえたまま、嬉しそうに尻尾を振り、森の中で小さな冒険を楽しんでいる。

「さて、そろそろ戻って、屋根を作ろうか」
凰翔は満足げに葉っぱを抱え、拠点へと戻るのだった。