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46:第三形態
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黒影は後退した。
痛みを感じるわけではない。
ただ、“不具合”として認識し、
次の対処を計算している。
胸の疑似心臓が、赤黒く脈打った。
「……脈拍が上がってる……!」
「“恐怖”じゃない。これは“最適化処理の高速化”……!」
「削られたデータを補填しつつ、“刃への耐性”を……!!」
影獣の胴体が、不気味に震えた。
削られた右前脚の断面から、
糸のような黒い“回復ライン”が伸び――
再構築を始める。
「影が回復してる!!?」
「……違います。これは“回復”ではなく――」
「“別の形を試してる”だけだよ」
影獣の右前脚は――
腕ではなく、槍状の突起へと変化した。
「形状記憶……いや、形状選択だ……!」
「刃に触れないよう、
“最も細い一点突破型”に――!」
「貫通を狙うつもりだ!!」
影獣の槍が、
“ひゅ”と空間を切った。
シロガネが叫ぶ
「凰翔さん!! 正面!!」
「うわわわわわッ!!」
凰翔は器を前に突き出した。
ガンッ!!
金属のような硬質音。
火花のような黒い欠片。
「防いだ……!」
「刃の拒絶力が槍の“存在情報”を削ってる!」
「でも速い……! 保てるのは長くない……!」
影獣が、凰翔の動きを読むように
連続で槍突きを放つ。
カンッ! ガッ! ギャキン!!
「凰翔さん、後ろ下がらないで!!
その角度は危険――」
ズバァッ!!
影獣の槍が床を切り裂き、
凰翔の足の横を掠めた。
「ひぃいい!!
死ぬ死ぬ死ぬ!!
俺そろそろ本当に勇者辞めたい!!」
「凰翔。ちゃんと“やり返したい!”って思え! 君が思わないと器が成長しない」
「今は第三形態への進化の途中……
でも、“少しでも攻撃意欲”があれば……完成するはず……!」
(ああもう!! そう言われても!!)
そのとき――
ぐっ。
器の裏から、
ほんのわずかに“力”が湧き上がった。
まるで、凰翔の腕を引っ張るように。
「え……?」
刃縁が、赤黒く発光しはじめる。
「始まった……!」
「第三形態の核生成……!」
「“器・刃(じん)”の完全体……!」
影獣が、最後の突撃態勢をとった。
低い姿勢。
一直線の軌道。
狙いは――凰翔の心臓。
「来る……!!」
「この速度……!」
「もう止められない……!!」
影獣が弾丸のように走る。
赤い線のように伸びたその瞬間――
ガキィィィィィィンッ!!!!
赤い刃が、
盾の中心から“展開”された。
円盤状だった盾の前面に――
“半円形の刃”がスライドし、
まるで輪刃(リングブレード)のように開いた。
「完成した……!!」
「第三形態――!」
「“器・刃(じん)”!!」
「いやいやいや!!!
俺こんなの使えるわけないって!!?」
刃の輪が、影獣を正面から迎え撃つ。
そして。
すれ違いざま――
影獣の胴体が、
音もなく、二つに切断された。
「…………」
影の体が崩れ、
ドサッ、と床に黒い液体のように落ちた。
「……削除成功……!」
「存在情報の断絶……!」
「……え? 俺……勝ったの……?」
「正確には“器が”勝ちました」
キツネが小さく微笑む。
「凰翔。たぶん次の影は、もっと強いよ」
「…………」
黒影の残骸は、
ゆっくりと影溜まりへと還りながら、
最後に“心臓だけ”を残して跳ねた。
まるで、伝えるように。
――これで終わりではない、と。
痛みを感じるわけではない。
ただ、“不具合”として認識し、
次の対処を計算している。
胸の疑似心臓が、赤黒く脈打った。
「……脈拍が上がってる……!」
「“恐怖”じゃない。これは“最適化処理の高速化”……!」
「削られたデータを補填しつつ、“刃への耐性”を……!!」
影獣の胴体が、不気味に震えた。
削られた右前脚の断面から、
糸のような黒い“回復ライン”が伸び――
再構築を始める。
「影が回復してる!!?」
「……違います。これは“回復”ではなく――」
「“別の形を試してる”だけだよ」
影獣の右前脚は――
腕ではなく、槍状の突起へと変化した。
「形状記憶……いや、形状選択だ……!」
「刃に触れないよう、
“最も細い一点突破型”に――!」
「貫通を狙うつもりだ!!」
影獣の槍が、
“ひゅ”と空間を切った。
シロガネが叫ぶ
「凰翔さん!! 正面!!」
「うわわわわわッ!!」
凰翔は器を前に突き出した。
ガンッ!!
金属のような硬質音。
火花のような黒い欠片。
「防いだ……!」
「刃の拒絶力が槍の“存在情報”を削ってる!」
「でも速い……! 保てるのは長くない……!」
影獣が、凰翔の動きを読むように
連続で槍突きを放つ。
カンッ! ガッ! ギャキン!!
「凰翔さん、後ろ下がらないで!!
その角度は危険――」
ズバァッ!!
影獣の槍が床を切り裂き、
凰翔の足の横を掠めた。
「ひぃいい!!
死ぬ死ぬ死ぬ!!
俺そろそろ本当に勇者辞めたい!!」
「凰翔。ちゃんと“やり返したい!”って思え! 君が思わないと器が成長しない」
「今は第三形態への進化の途中……
でも、“少しでも攻撃意欲”があれば……完成するはず……!」
(ああもう!! そう言われても!!)
そのとき――
ぐっ。
器の裏から、
ほんのわずかに“力”が湧き上がった。
まるで、凰翔の腕を引っ張るように。
「え……?」
刃縁が、赤黒く発光しはじめる。
「始まった……!」
「第三形態の核生成……!」
「“器・刃(じん)”の完全体……!」
影獣が、最後の突撃態勢をとった。
低い姿勢。
一直線の軌道。
狙いは――凰翔の心臓。
「来る……!!」
「この速度……!」
「もう止められない……!!」
影獣が弾丸のように走る。
赤い線のように伸びたその瞬間――
ガキィィィィィィンッ!!!!
赤い刃が、
盾の中心から“展開”された。
円盤状だった盾の前面に――
“半円形の刃”がスライドし、
まるで輪刃(リングブレード)のように開いた。
「完成した……!!」
「第三形態――!」
「“器・刃(じん)”!!」
「いやいやいや!!!
俺こんなの使えるわけないって!!?」
刃の輪が、影獣を正面から迎え撃つ。
そして。
すれ違いざま――
影獣の胴体が、
音もなく、二つに切断された。
「…………」
影の体が崩れ、
ドサッ、と床に黒い液体のように落ちた。
「……削除成功……!」
「存在情報の断絶……!」
「……え? 俺……勝ったの……?」
「正確には“器が”勝ちました」
キツネが小さく微笑む。
「凰翔。たぶん次の影は、もっと強いよ」
「…………」
黒影の残骸は、
ゆっくりと影溜まりへと還りながら、
最後に“心臓だけ”を残して跳ねた。
まるで、伝えるように。
――これで終わりではない、と。
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