君と見た黄昏の夕焼け

霧野新庄

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出航

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それから数年が経ち、真司は中学を卒業し、江戸崎に戻ることを決めた。
 
真司が江戸崎を発って、決まって日曜日。一通のたわいもない手紙が茜と愁平から届くようになっていた。
 
だが、彼の中学も後半期。2年に入った頃から、ばったりと手紙が届かなくなってしまった。真司は返事が来なくなった手紙を何度も何度も書き続けた。しかし…それ以降。茜や愁平からの手紙が届くことはなかった。

『ブオオ。ブオオ』

船の汽笛が聞こえる。

「じゃあ、行ってくるね。お父さん。お母さん」

「ああ。行ってこい!江戸崎のみんなにもよろしくな」

「ごめんね…真司。2人ともついて行ってあげられなくて…」

「いいんだよ母さん」

「全く。背丈だけでなく、心もしっかり大人になったな」

『ブオオ。ブオオ』  

「もう出ないと。じゃあ、行ってくるよ」

「ああ」

真司は両親に、両親は真司に、互いに別れの挨拶を告げた。

『ブオオ。ブオオ』

真司は振り返らなかった。

「今日も夕日が綺麗だ。丁度小学校5年の時だったかな?俺がここに来たの…全く、本当懐かしいよ」

真司は一人、夕日に向かって自分の過去を振り返っていた。

「俺。成長できたかな?あいつら、俺のこと分かってくれるかな?色々あったなぁ…ほんとう長いように感じたけど、あっという間だったなぁ。愁平。茜。んー早く会いたいぜ」

真司の心は期待でいっぱいだった。そんな彼がこの先、絶望の深淵に立たされるとは一体、誰が想像できたでしょうか? 

『ピンポンパンポーン』

「ご搭乗の皆様にお知らせ致します。当便は約5時間後に江戸崎に到着する予定です。それまでの間ごゆっくりおくつろぎください」

船内アナウンスが流れた。

真司はお言葉に甘えて、部屋で休むことにした。
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