お飾りな伴侶になった過去の自分へ忠告します「お飾りは捨てるな」と

るい

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忠告3.興味をもつべきです

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「やあ、よくきてくれた、シェイン」

 手を広げ、歓迎の気持ちを表すオルウェンに戸惑い気味だが私も倣えば抱擁がくる。「学園以来だが元気そうで何より」と耳元で言われ、一応覚えてはいるのかと謎の感心をしてしまう。もしかすると調べて知っただけかもしれないがこちらも当たり障りなく学園に触れながら似たように返せば彼は離れた。
 私の記憶する彼から大人の顔つきになった一年分の違和感が少しある彼は今回の形式上の結婚にも父の尻拭いの件にも触れず、軽く話すと今日は部屋で休むよう言う。確かに一日かけて馬車で来た疲れはあり、拒否する理由もなく私は案内された部屋に向かった。


 さすが公爵家と言える広さの屋敷を歩き、前の伯爵領の自室とは雲泥の差がある煌びやかさと広さをもつこれからの自室に着く。使用人には下がってもらいひとりになった私はとりあえず近場にあった椅子へ腰掛ける。

「揺れない椅子が心地いい……」

 一日ガタゴト揺れる馬車で座っていたことで揺れないただ包み込むだけの椅子が素晴らしい。
 しばらくの間、座って休息をとっていると扉をノックされ食事の用意だと言って使用人数名が入ってくる。私はここに食事が並べられるかと考えて座っていると使用人達が私を誘導し、今の服を別のものに替え始めた。今の服はそんなに駄目だったかと疑問だが嫁いだというか人質に近い私が問題を起こしても父が困るだけなので面倒でも素直に従い、先ほどとあまり違いのわからない服に着替える。

「お疲れ様でした。それではお食事の方へ案内致します」

 着替えが終われば私の前に執事服を着た茶髪の男が礼をしてから扉を開ける。私は頷くがここまでなんでもしてくれる必要はないのだと少し訴えたかった。前も執事に使用人と一応貴族なのでいたがここまで優しくなかった為にむず痒さを感じてしまうのだ。

 父にはズバズバ言えるもそれ以外には口が開きにくい私が家の使用人ならともかくこの公爵家の知らない使用人達に何か言えるわけもなく、食堂まで静かについていく。対応はいいが私の前後に人がつき歩く今の気分は捕虜か囚人かである。
 そうして初日から気が思いやられるなか食堂に着き、先に座っていたオルウェンと目が合う。

「来てくれてありがとう」

 微笑まれたがいまいちオルウェンといることに慣れない私は目を合わせていられず伏せながら「……いえ、ご一緒出来てこちらも嬉しいです」と咄嗟に浮かんだ返答をする。背後で使用人に椅子をひかれ座るも未だに視線をあげずにいた私を小さく笑う声がして顔をあげればそれは彼であった。
 こちらの視線に気づいたオルウェンは最後に一度笑ってから「すまない、僕たちのこの空気に笑えてしまったんだ」と申し訳なさそうには見えない表情で言った。

「そ、そうですか」
「ああ、僕たちはこれまで顔を合わせてきたほうだが会話を積み重ねてなければこんなにも初対面のような反応になるのかとね」

 オルウェンの視線は私から運ばれてきた料理に移る。一方で私は確かに年数だけ見れば彼とはよく顔を合わせているなと知った。興味がなさすぎて年数など考えたこともなかった私はまた「そうですね」と相槌を打つ。すると彼はこちらを見て苦笑いになった。

「そう気を張らなくてもいい。形だけだが僕の伴侶だ、気遣いは必要ない」
「あ、はい。ありがとうございます……」

 ここで漸く、関係性について触れられ動揺したが父の言う通り、形だけというのは両者同じ意見でいいようだ。ただ、気遣いはいるのではと少し思いながらも何も言わずに私たちは食事を摂り始めた。彼も私もその後は無言だったがたびたび彼からの視線は感じ、ひたすら疲れる夕食となった。

 オルウェンが席を立ち、解放されると私が内心喜び、彼が食堂を出るのを待っていると目の前を通る彼が立ち止まりこちらを見た。なんだと身構える私に彼は「言うのが遅いと思うが美しいきみにその服はよく似合う。用意して心からよかった」と微笑んで告げた。私はパチパチと瞬きを繰り返すだけで言葉が出なかった。顔は赤いと思うが……。

「ふふ、ではシェイン、いい夢を」

 何も返さなかったことにご満悦な顔のオルウェンは夜の挨拶とともに食堂から出ていく。残された私は熱い顔に手の甲を押し当て、熱がひくのを待つのだった。
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