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忠告4.もう少し疑ってください

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 眠る場所が変わり、慣れないことからまだ日が昇る前に目が覚めた私はやはり睡眠時間が足りなかったのかポカポカとした昼の日光を受け、微睡んでいた。いつもなら父の仕事を手伝っているがオルウェンのもとへ来た私に用事は何もなくただこの温室でお茶を飲み、時間を潰すだけ。大変いいご身分な状況に少々居心地が悪く、私は何か手伝えることでもあるかと執事にそれとなく聞いても何もないらしく、オルウェン自体が私に何もしないことを望んでいるのだと執事の言い分から汲みとれたため大人しくしていた。決して怠けているわけではないのだと誰に聞かせるわけでもないが私は正当性の言い分を用意しながら船を漕ぐのだ。

 春の温室が保つ心地よい温度、届く光、飲みかけの茶葉の香り、私を包む品のいい椅子、何もかもが重なった微睡に相応しい条件は私を夢に誘い、時を流す。

 声がした、落ち着いた低い声。その声は何か言っている。私は耳を傾けたがそのうちに声は消え、そっと頬を撫でられた気がしたがあまり確信はない。これはおそらく夢……。



「……様、……ェイン様」

 トントンと肩を叩かれ「シェイン様」と名前が呼ばれた私は目を開ける。すると茶髪の男がこちらを見ていた。

「ん、セルビス?」
「はい、そろそろお夕食のお時間ですのでお声がけ致しました」

 どこも乱れなくきっちりと執事服を着る目の前の男、セルビスは私に用意された執事なのだが彼に私の膝掛けを無慈悲に剥がされる。
 剥がされて寒いということはないが早く動けという意思は感じる行動に前の使用人達が私に接する対応と似ていてどこか懐かしさと安心感があった。私の執事が彼でよかったとまだ二日目の関係だが思いながら腰をあげ、先導する彼について自室に戻った。外はとうに暗く、自分がかなり寝ていたことは言うまでもない。

「また着替えるのか?」
「はい、旦那様のご要望ですから」

 自室に戻れば使用人達が服を持って待機していたため私はつい、不満げに聞いてしまったが拒否権はないとセルビスが私の今着るベストを脱がし始める。私は大袈裟に目を回してため息をひとつ吐くも素直に着替えに応じた。なぜなら“旦那様のご要望”では、確かに拒否権はないから。

「……別に私にも気遣いは必要ないんだけどな」

 上等品と分かる絹の服が私にピッタリのサイズからこれもまたオルウェンが用意したのだろう。毎夜、彼は形式上だけの伴侶である私へ律儀に服を贈るつもりなのかと少し正気を疑う。私は世の伴侶のように夫からの愛ある贈り物など求めていないし、当然愛もいらない。この結婚は尻拭いの人質、そう政略結婚だ。彼もわかっているはずだが真面目なのか形式上の伴侶相手にも夫婦にある行いをするつもりなのかもしれない……優等生か?

「お疲れ様でした。それでは食堂に向かいましょうか」

 セルビスの声に私は思考をやめて、頷く。

 
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