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卒業後
1263 星暦558年 橙の月 2日 ちょっと寄り道(2)
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「光よ!……の後に、水打《ヒタン》!」
ゼリッタの港を離れ、周囲の船から離れたところでトプンと海底に沈む。前方に光球を飛ばした上で、目についた大き目な塊に水打《ヒタン》を当てる。
「舞い上がった砂が落ち着くぐらいのタイミングであそこの横を通るぐらいの速度でパストン島の方向へ船を動かしてくれる?」
水打《ヒタン》が右横の塊にぶつかって砂が舞い上がったのを見て、シャルロが蒼流に頼んだ。
『だったらここからパストン島まで、海底の砂を一度洗い流そうか? 一々ウィルたちが砂を払ってそれが落ち着くのを待つよりも効率的だよ?』
清早が出てきて提案した。
おっと。
そういうのも、可能なのか。
今まで俺たちが光球を出して近くの海底を照らし、目についた塊に水打《ヒタン》を当てて砂を払っていたが、海の中だったら清早か蒼流に頼めば、どば~と一気に砂を払ってもらえるのか。
「う~ん、一気に砂をどけてもらって、海の生き物に何か支障が出たりしない?」
シャルロがちょっと心配そうに尋ねた。
『海底の砂を根こそぎ払うのではなく、海底から少し飛び出した部分の砂をどける形にすれば影響は小さいだろう』
蒼流があっさり答えた。
「だったら……100メタ幅ぐらいでここからパストン島までの直線ルート上の砂払いを願いできるかな?
その100メートル以外のすぐそばに沈没船があるようだったらそれも教えてくれてもいいぜ?」
折角なので、清早に頼むことにした。
これで沈没船探しが大分とお手軽になる!
まあ、お手軽になりすぎると楽しみが減るかも知れないが……探しながらゆっくり海底を進む作業だって大抵半日もしないうちに飽きるからな。
そこら辺を手っ取り早く出来るんだったら、効率化は悪くない。
アレクとシャルロも頷いているし。
『おっし、任せとけ~』
ぶんっと清早が船の進行方向に向けて腕を振った。
ぶるんっと何か水の中を振動が通り抜けたような感触があったと思ったら、光球に照らされている右前のでっぱりの砂が奇麗に払われていた。
「おお~。
凄いね!
でもあれは岩だったんだね」
先ほど水打《ヒタン》をぶつけた塊がはっきり見えたのをじっと見つけて確認したシャルロが、ちょっと残念そうに言った。
「まあ、まだ港を出て直ぐだからな。
考えてみたらあるここら辺で沈没したら、生存者が岸に辿り着いて引き揚げ屋に情報を売っていただろう」
アレクが肩を竦めた。
「よし、じゃあ左右をしっかり照らしながら探すぞ」
砂が落ち着くまで待たなくて済むが、あまり早く進み過ぎるとでっぱりを見逃しちまうかも知れないから、結局はそれ程早くは進まない方が良いかな?
◆◆◆◆
「これも漁船っぽいね~」
四つめの木材っぽい塊に近づいて確認したところ、今回も漁船だった。
意外と東大陸の漁船って大きいんだな。
それとも小さな漁船だと嵐とかで海が荒れた際に沈没する際にバラバラになって、塊として残らないのかな?
次の塊はどこか……と前方に目を遣ったら、先が見えていないことに気がついた。
「お??
なんか急に海が深くなってる」
よく見ると、まるで海の中に崖があるかのように一気に海底が深くなっているっぽい。
『ここが東側の大陸棚の切れ目だ。
高い山が二つか三つ入るぐらいの深さの海溝があり、その向こうは山半分ぐらいの深さに戻って、島がある辺りはちょっと盛り上がっているぞ』
蒼流が現れてシャルロに教えた。
え??
高い山が二つか三つって……本当に高い山なんて見たことがないが、西大陸の内陸側にあると聞く。
アファル王国だって陶器の名所なんかはちょっと山っぽい地形だが、あそこはそこまで『山』と呼ぶのも烏滸がましいレベルだと以前聞いた。
……海の底ってそんなに深い場所があのか。
「う~ん、そこまで深く探しに行くの、大変そうかも?」
シャルロがちょっと困ったように此方を見て首を傾げた。
「今まで探した海域にはそこまで深い海溝はなかったが、東大陸沿いにはあるんだなぁ。
あまり深いと水の重さで船の積み荷も潰されていそうだし、降りていくのに時間が掛るだろうから、この海溝部分は飛ばさないか?」
アレクが提案した。
「だなぁ。
山二つとか三つって、どんだけ深いんだか」
蒼流と清早だったら時間を掛けずにぐんっと船を動かせるかもしれないが……やっぱちょっと怖いし、時間の無駄っぽい気がする。
高い山の上って空気が薄いと聞くが、深い海の底ってどうなるんだろ?
空気がないけど水が重すぎると、屋敷船の周りの空気を保つのに蒼流でも大変な思いをすることになるのかも?
どちらにせよ。
まだまだ先は長いのだ。
普通の海底を探していこう。
ゼリッタの港を離れ、周囲の船から離れたところでトプンと海底に沈む。前方に光球を飛ばした上で、目についた大き目な塊に水打《ヒタン》を当てる。
「舞い上がった砂が落ち着くぐらいのタイミングであそこの横を通るぐらいの速度でパストン島の方向へ船を動かしてくれる?」
水打《ヒタン》が右横の塊にぶつかって砂が舞い上がったのを見て、シャルロが蒼流に頼んだ。
『だったらここからパストン島まで、海底の砂を一度洗い流そうか? 一々ウィルたちが砂を払ってそれが落ち着くのを待つよりも効率的だよ?』
清早が出てきて提案した。
おっと。
そういうのも、可能なのか。
今まで俺たちが光球を出して近くの海底を照らし、目についた塊に水打《ヒタン》を当てて砂を払っていたが、海の中だったら清早か蒼流に頼めば、どば~と一気に砂を払ってもらえるのか。
「う~ん、一気に砂をどけてもらって、海の生き物に何か支障が出たりしない?」
シャルロがちょっと心配そうに尋ねた。
『海底の砂を根こそぎ払うのではなく、海底から少し飛び出した部分の砂をどける形にすれば影響は小さいだろう』
蒼流があっさり答えた。
「だったら……100メタ幅ぐらいでここからパストン島までの直線ルート上の砂払いを願いできるかな?
その100メートル以外のすぐそばに沈没船があるようだったらそれも教えてくれてもいいぜ?」
折角なので、清早に頼むことにした。
これで沈没船探しが大分とお手軽になる!
まあ、お手軽になりすぎると楽しみが減るかも知れないが……探しながらゆっくり海底を進む作業だって大抵半日もしないうちに飽きるからな。
そこら辺を手っ取り早く出来るんだったら、効率化は悪くない。
アレクとシャルロも頷いているし。
『おっし、任せとけ~』
ぶんっと清早が船の進行方向に向けて腕を振った。
ぶるんっと何か水の中を振動が通り抜けたような感触があったと思ったら、光球に照らされている右前のでっぱりの砂が奇麗に払われていた。
「おお~。
凄いね!
でもあれは岩だったんだね」
先ほど水打《ヒタン》をぶつけた塊がはっきり見えたのをじっと見つけて確認したシャルロが、ちょっと残念そうに言った。
「まあ、まだ港を出て直ぐだからな。
考えてみたらあるここら辺で沈没したら、生存者が岸に辿り着いて引き揚げ屋に情報を売っていただろう」
アレクが肩を竦めた。
「よし、じゃあ左右をしっかり照らしながら探すぞ」
砂が落ち着くまで待たなくて済むが、あまり早く進み過ぎるとでっぱりを見逃しちまうかも知れないから、結局はそれ程早くは進まない方が良いかな?
◆◆◆◆
「これも漁船っぽいね~」
四つめの木材っぽい塊に近づいて確認したところ、今回も漁船だった。
意外と東大陸の漁船って大きいんだな。
それとも小さな漁船だと嵐とかで海が荒れた際に沈没する際にバラバラになって、塊として残らないのかな?
次の塊はどこか……と前方に目を遣ったら、先が見えていないことに気がついた。
「お??
なんか急に海が深くなってる」
よく見ると、まるで海の中に崖があるかのように一気に海底が深くなっているっぽい。
『ここが東側の大陸棚の切れ目だ。
高い山が二つか三つ入るぐらいの深さの海溝があり、その向こうは山半分ぐらいの深さに戻って、島がある辺りはちょっと盛り上がっているぞ』
蒼流が現れてシャルロに教えた。
え??
高い山が二つか三つって……本当に高い山なんて見たことがないが、西大陸の内陸側にあると聞く。
アファル王国だって陶器の名所なんかはちょっと山っぽい地形だが、あそこはそこまで『山』と呼ぶのも烏滸がましいレベルだと以前聞いた。
……海の底ってそんなに深い場所があのか。
「う~ん、そこまで深く探しに行くの、大変そうかも?」
シャルロがちょっと困ったように此方を見て首を傾げた。
「今まで探した海域にはそこまで深い海溝はなかったが、東大陸沿いにはあるんだなぁ。
あまり深いと水の重さで船の積み荷も潰されていそうだし、降りていくのに時間が掛るだろうから、この海溝部分は飛ばさないか?」
アレクが提案した。
「だなぁ。
山二つとか三つって、どんだけ深いんだか」
蒼流と清早だったら時間を掛けずにぐんっと船を動かせるかもしれないが……やっぱちょっと怖いし、時間の無駄っぽい気がする。
高い山の上って空気が薄いと聞くが、深い海の底ってどうなるんだろ?
空気がないけど水が重すぎると、屋敷船の周りの空気を保つのに蒼流でも大変な思いをすることになるのかも?
どちらにせよ。
まだまだ先は長いのだ。
普通の海底を探していこう。
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