シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

404 星暦554年 藤の月 24日 旅立ち?(45)

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「ようシェイラ、久しぶり。
調子はどうだ?」
通信機に向かって話しかけるのってなんとはなしに馬鹿っぽくて嫌なんだよなぁ。
学院長とか魔術院の受付とかだったらそうでも無いんだけど、何かシェイラを相手にしているのに魔道具に話しかけるのって違和感がある。
まだ、王都に居る時に次の休みの日の予定とかを決めるために軽く話し合うのは構わないのだが。ほぼ1月ぶりに話すシェイラが魔道具(これ)だと思うとなんとも微妙だ。

「あら、本当に連絡が取れるのね。
ちょっと半信半疑だったんだけど、遅くまで起きていた甲斐があったわ」
通信機からシェイラの声が返ってくる。
遠いせいか、ちょっと声が細いかな?
魔力もかなり使われている感覚だ。

アファル王国との時間の違いが思っていたよりも酷くて、まず宿屋の人を通信機で捕まえるのに半日かかり、宿屋の人にシェイラへ伝言を頼み、シェイラからいつなら通信機の傍に居られると返事を貰うのにまた半日かかり・・・という感じで、結局通話しようと思いたってから2日掛ってしまった。

「遅くまで起きていることになってゴメンな。
無事に東の大陸に着いたよ~というお知らせと、何かお土産に欲しい物を思いついたか聞いておこうと思って」
シャルロが一緒にいる船旅で、何かが起きるなんて事はまず考えられないとシェイラには説明してあったが、1月も連絡を取り合わなかったことなんて付き合い始めてから今まで無かったからな。

考えてみたら、その間にシェイラが病気になっていたり遺跡の巨樹から落ちて怪我をおったりなんている可能性もあったのだ。

うん、連絡が取れて良かった。
「ウィルだったらどんな状況でもしぶとく生き残るとは思って居たけど、無事な声を聞こえて良かったわ。
お土産?
特にないけど・・・もしもそちらで遺跡の発掘物とかが売り出されていたら、是非欲しいかも?」
ちょっと冗談がかっていたが、これって実はマジな要求だよな?

そんな無茶な。
「おいおい。
俺が選んだんじゃあ、遺跡の発掘物になるか、単なる偽物になるか、五分五分以下の確率になるぞ?」

「あら、固定化の術が掛っている古い物を選べば良いのよ。
そう言うの得意でしょ?」
あっさりとシェイラの声が無情に告げた。

そりゃあねぇ。
固定化の術を見極めるのは簡単だ。
古い物・・・というのもある程度は、なんとはなしに分かる。
だが。
「俺達、明日出発なんだけど?
普通の街中の店で売っている物でお土産に貰っても悪くないな~って言う物、ない?」

「あら、そちらはまだ朝なんでしょう?
今日一日、探してみてよ。見当たらなかったら別に構わないわ。
適当にスカーフなり、お茶なりで十分よ」

おやま。
お茶とスカーフを買ったことは既にお見通しか。
この口ぶりだと、特にそれらが欲しいわけでもないようだな。

はぁぁぁ。
しょうがない。
バルダンにどっかそれっぽい物を売っている店がないか、聞いてみるか。

◆◆◆◆

「遺跡の発掘物?
まあ、そういうのを売っている店は幾つかあるけど・・・9割方は偽物らしいぜ?」
朝食後に来たバルダンは、俺の要請を聞いて鼻で笑った。

「大丈夫。
ウィルなら偽物は分かるから。
ただ、実際に偽物の中に本物を売っているかどうかは問題だけどね~」
楽しげにニコニコしながらシャルロが答える。

既に買いたい物は買い揃えたらしきシャルロは、俺の最後の土産物探しの話を聞いてついてくることにした。
どうも、俺がシェイラに振り回されているのが楽しくてしょうが無いんじゃないかという気がする。
・・・気のせいだよな?

ちなみに、アレクはまだ何か商会関係ですることがあるとかで別行動だ。

「へぇぇ。
魔術師だと考古学とかにも詳しくなるのか?」
街中へ足を勧めながらバルダンが尋ねてきた。

「詳しくは無い。
だが、遺跡から発掘された物だったら固定化の術が掛けられていないと現在まで形が残る事なんてほぼ無いだろ?
だからそう言うのを見ればある程度は分かるだけだ」
まあ、本当に古い物というのは心眼《サイト》に何か違う感覚があるんで分かることが多いが。

これは遺跡での手伝いをしている間に気が付いた事だ。シャルロ達は特に何も感じないと言っていたから、魔術師の一般的な能力というよりは、心眼《サイト》の能力の一部なのだろうな。

「・・・取り敢えず、ここがそう言うのを扱っている店だぜ」
港から南へ進んだ方にあった店は・・・大きかった。
比較的港の傍にあり、これだったら船から下りた商人とかも来そうだ。

・・・いかにも偽物を掴まされそうな店だな、こりゃ。
はぁぁぁ。
今日1日かけて、何か買うだけの価値がある物が見つかると良いんだけど。



【後書き】
買い物が嫌いながらも、最後の1日をシェイラのために買い物に費やすウィル君でしたw
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