シーフな魔術師

極楽とんぼ

文字の大きさ
48 / 1,309
魔術学院2年目

047 星暦550年 青の月 17日 学院祭再び!

しおりを挟む
究極の文官職であると見られがちな魔術師の卵ながら、学生は学生。
お祭り騒ぎが大好きで、イベントの際には元気がはち切れそうだ。


「再び学院祭の時期が来た。
去年はコメディー路線で見事最優秀賞を勝ち取ったグリフォン寮だが、同じものを続けてやっても面白くない。
何かアイディアを上げてくれ!」

今年の寮長であるダンカン・マックダーが食堂に集まれた寮生の前で声をあげていた。

「もう学院祭の時期か」
お茶を淹れながらつぶやいた。

「そう、今年は僕たちが活躍しないとね!去年はウィルが活躍したけど僕たちは裏方だったからね」
シャルロが元気に返してくる。

例年この学院祭は2,3年が大まかな部分を企画して実行に1年を巻き込むことで学年を越えた人間関係を築かせる役割を果たす。

だから去年の俺たちは基本的にこき使われた。まあ、実は2,3年が色々気を使ってくれていたようだけど。
今年は俺たちが気を使う番か。
イマイチ1年生になんぞ興味が無かったから誰がいるのか、名前と顔が一致してないぞ、考えてみたら。

「今年は真面目な『雪の姫君の魔法剣士』をやるとか?」
「いやいや、どうせならもっと華々しく戦闘場面を演出できる『アサダール砦の攻防』とかは?」
前でわらわらと提案があげられる。

「演劇ではなく手品のショーとかはどうだ?」
アンディが提案していた。
「そんなもん、魔術を使ったら全然面白くないし、使っていなかったら『魔術を披露する』というポイントが入んないじゃない?」
思わず突っ込みを入れてしまった。

まあ、基本的に例年演劇らしいからなぁ。
たまには違うのをやった方が面白いとは思うが。

「『絹の踊り』の完全コピーというのはどうだ?
あのサーカス団のショーはいい感じに纏まっていて見ていて面白いし、体を動かすことに関しては素人な我々が、魔術を使ってあのショーをコピーするっていうのは評価されないかね?」
アレクが提案した。

『絹の踊り』は最近この街に来たサーカス団のことだ。
魔術が利用される一般的なサーカスと違い、このサーカス団は安全網の為の魔術以外、一切魔術を使わないのが売りだ。

幾ら身軽に優雅な動きをしていても『魔術を使っているから』と一般の人からは『面白いけどどこも同じ』といったようにしか評価されない普通のサーカスに比べ、『絹の踊り』は魔術なしの動きであれだけの曲芸をするということで爆発的な人気を誇っている。

ま、他のサーカス団だって多少魔術を使っているが、高額な魔術師よりも普通の人間の筋肉と技術で曲芸の殆どをしているんだけどね。
それを『全ての動きは魔術の援助なしです』とアピールすることであれだけ売っているんだから、あの団長は売出しがうまい。

ま、来年には他のサーカス団も似たようなことをやりだして、サーカス団に勤めていた魔術師は失業ということになるんだろうけど。

「魔術を使えば同じ動きは可能だが、あのスピードでやろうと思ったらそれなりに身体能力も必要だぞ。体を動かすのが得意な人間って何人ぐらいいるんだ?」

思わず聞いてしまった。
俺は曲芸なら得意だし、ダレン・ガイフォードも身体能力はダントツにいいだろう。
だが、俺たち二人だけではあのショーは出来ないぞ。
というか、あれって奇麗な若い女性の華やかな演目が特に人気なんだから。

「お前にダレン、タニーシャ。
あとは・・・」
ダンカンが数え始める。

「アルラン!」
「ザビア!」
「イリスターナも!」

次々と提案の声が上がる。

「とりあえず、『絹の踊り』ショーということで皆いいか?」
熱心な反応を見て、ダンカンが寮生に確認を取った。
「おお~~!!」
ノリノリな返事。
皆お祭り騒ぎが好きだよなぁ。

「じゃあ、高所恐怖症じゃない、究極の運動オンチ以外は全員体育館に明日の授業の後すぐに集まってくれ。
全員とりあえずテストしてみよう。」

ということで、今年はサーカスになるようだ。
俺の活躍の場面が盛り沢山になりそうだが、去年よりも練習中に肉体的に痛い思いをしそうだな・・・。



しおりを挟む
感想 50

あなたにおすすめの小説

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪役令嬢が処刑されたあとの世界で

重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。 魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。 案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。

俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?

くまの香
ファンタジー
 いつもの朝、だったはずが突然地球を襲う謎の現象。27歳引きニートと27歳サラリーマンが貰ったスキル。これ、チートじゃないよね?頑張りたくないニートとどうでもいいサラリーマンが流されながら生きていく話。現実って厳しいね。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

処理中です...