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魔術学院3年目
119 星暦551年 桃の月 20日 交渉
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「これは俺たちが新しく造った乾燥機なんだが、どう思う?」
俺たちは3人で頑固おやじとの交渉に下でに出るか、挑戦的にいくか、金で話をつけるか、方法を色々話し合った。
頑固おやじと評判なだけに、それなりに気難しいだろうから話の持っていき方も工夫した方がいいだろうが・・・。
イマイチどういう方法がいいのか想像がつかない。
結局、色々悩んだモノの単純に意見を聞く方法でいってみていから状況に応じて方法を変えようと言うことになった。
スタルノの紹介状を持って現れ、お茶を飲んでいたと思ったら突然魔具を取り出した俺たちをあっけにとられたように眺めていたダビーだが、少なくとも怒りだしはしなかった。
「どう思うって・・・何の話だ?」
「濡れた服を乾かす便利な魔具として売り出そうと思うんだけど、使い勝手や造りやすさの点から何か思うところがあるか見てくれない?」
シャルロが説明した。
「濡れた服を乾かすねぇ・・・。面白いアイディアではあるな」
興味深げに乾燥機を眺めまわしてから、スイッチを入れてみる。
首を回しながら温風を出し始めた乾燥機を見て、老職人は笑い出した。
「ははは!自分で首を振って乾燥を早めるか。ある意味当然な工夫だが、誰も造っていなかったな、確かに」
あれ?
頑固親父だったんじゃなかったの?
ダビーは乾燥機にタオルを直接かけ、俺たちの方へ向き直った。
「何を俺にさせたいのか、はっきり説明してもらおうか」
ということで、俺たちがビジネスを始めようと思っていることを説明。
アイディアと工夫は人よりも才能があると思うが、造る実務的な経験が無いことから熟練魔具職人のアドバイスが欲しいこと。
そんでもってこれが一号であること。
勿論、これがテストであるとは明言しなかったけど・・・ま、想像はついていたんだろうな。
「ということは、お前らは長期的に俺にアドバイザーとして働いてもらいたい訳だ。
となったら機密事項のある契約書でも結ばせるのか?俺がアイディアを売っぱちまったらどうするつもりだ?」
「アドバイザーとして働くことを合意してくれたら、勿論契約書にサインしてもらうことになる。
今回の試作品に関しては・・・最初のハードルと言うことである程度のリスクはしょうがないと思っている」
アレクが説明した。
「ふむ」
ダビーは乾燥機にかけてあったタオルを手に取り、熱くなり過ぎていないことを確認してから乾燥機を手にらとって調べ始めた。
「発火防止の工夫もされているのか。
確かにモノとして悪くないかもしれないな。だが、お前たちが何日かけたのか知らんがそれなりに研究と工夫で作ってきたものを半刻で問題点を指摘するのは無理だ。
とりあえず、5日程くれ。機密保護の契約が無いが、あんたたちの信頼は裏切らないと約束しよう」
約束、ねぇ。
そんなものを信じて安心していたらやっていけないと思うが・・・。ま、これも初期ハードルの一つだと思って我慢するか。
アレクとシャルロに目をやって、頷いて見せた。
「分かった」
アレクが答える。
もうすぐ卒業だからさっさとアドバイザーの選択も決めちまいたかったんだけどねぇ。
ここで躓いたら後から面倒だからしょうがないか。
急ぎすぎて失敗したら後々はもっと時間と金がかかることになる。
◆◆◆◆
「原価が高すぎるだろう、これ。もっと安く仕上げないと」
というのが5日後のいの一番に出されたダビーの指摘だった。
どうやら、俺たちの手伝いをすることには合意してくれたらしい。アレクが用意していた契約書も一通り目を通したら文句言わずにサインしていたし。
だけど・・・。
高いか。
魔具としては悪くない値段になると思ったんだが。
もっと安くしないと普通の大衆が買うには厳しいか。
工夫はこれからだな。
とりあえず、目をつけて価格交渉を始めていた工房・住居用の場所を買って開業準備をしなくちゃ。
俺たちは3人で頑固おやじとの交渉に下でに出るか、挑戦的にいくか、金で話をつけるか、方法を色々話し合った。
頑固おやじと評判なだけに、それなりに気難しいだろうから話の持っていき方も工夫した方がいいだろうが・・・。
イマイチどういう方法がいいのか想像がつかない。
結局、色々悩んだモノの単純に意見を聞く方法でいってみていから状況に応じて方法を変えようと言うことになった。
スタルノの紹介状を持って現れ、お茶を飲んでいたと思ったら突然魔具を取り出した俺たちをあっけにとられたように眺めていたダビーだが、少なくとも怒りだしはしなかった。
「どう思うって・・・何の話だ?」
「濡れた服を乾かす便利な魔具として売り出そうと思うんだけど、使い勝手や造りやすさの点から何か思うところがあるか見てくれない?」
シャルロが説明した。
「濡れた服を乾かすねぇ・・・。面白いアイディアではあるな」
興味深げに乾燥機を眺めまわしてから、スイッチを入れてみる。
首を回しながら温風を出し始めた乾燥機を見て、老職人は笑い出した。
「ははは!自分で首を振って乾燥を早めるか。ある意味当然な工夫だが、誰も造っていなかったな、確かに」
あれ?
頑固親父だったんじゃなかったの?
ダビーは乾燥機にタオルを直接かけ、俺たちの方へ向き直った。
「何を俺にさせたいのか、はっきり説明してもらおうか」
ということで、俺たちがビジネスを始めようと思っていることを説明。
アイディアと工夫は人よりも才能があると思うが、造る実務的な経験が無いことから熟練魔具職人のアドバイスが欲しいこと。
そんでもってこれが一号であること。
勿論、これがテストであるとは明言しなかったけど・・・ま、想像はついていたんだろうな。
「ということは、お前らは長期的に俺にアドバイザーとして働いてもらいたい訳だ。
となったら機密事項のある契約書でも結ばせるのか?俺がアイディアを売っぱちまったらどうするつもりだ?」
「アドバイザーとして働くことを合意してくれたら、勿論契約書にサインしてもらうことになる。
今回の試作品に関しては・・・最初のハードルと言うことである程度のリスクはしょうがないと思っている」
アレクが説明した。
「ふむ」
ダビーは乾燥機にかけてあったタオルを手に取り、熱くなり過ぎていないことを確認してから乾燥機を手にらとって調べ始めた。
「発火防止の工夫もされているのか。
確かにモノとして悪くないかもしれないな。だが、お前たちが何日かけたのか知らんがそれなりに研究と工夫で作ってきたものを半刻で問題点を指摘するのは無理だ。
とりあえず、5日程くれ。機密保護の契約が無いが、あんたたちの信頼は裏切らないと約束しよう」
約束、ねぇ。
そんなものを信じて安心していたらやっていけないと思うが・・・。ま、これも初期ハードルの一つだと思って我慢するか。
アレクとシャルロに目をやって、頷いて見せた。
「分かった」
アレクが答える。
もうすぐ卒業だからさっさとアドバイザーの選択も決めちまいたかったんだけどねぇ。
ここで躓いたら後から面倒だからしょうがないか。
急ぎすぎて失敗したら後々はもっと時間と金がかかることになる。
◆◆◆◆
「原価が高すぎるだろう、これ。もっと安く仕上げないと」
というのが5日後のいの一番に出されたダビーの指摘だった。
どうやら、俺たちの手伝いをすることには合意してくれたらしい。アレクが用意していた契約書も一通り目を通したら文句言わずにサインしていたし。
だけど・・・。
高いか。
魔具としては悪くない値段になると思ったんだが。
もっと安くしないと普通の大衆が買うには厳しいか。
工夫はこれからだな。
とりあえず、目をつけて価格交渉を始めていた工房・住居用の場所を買って開業準備をしなくちゃ。
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