シーフな魔術師

極楽とんぼ

文字の大きさ
120 / 1,309
魔術学院3年目

119 星暦551年 桃の月 20日 交渉

しおりを挟む
「これは俺たちが新しく造った乾燥機なんだが、どう思う?」

俺たちは3人で頑固おやじとの交渉に下でに出るか、挑戦的にいくか、金で話をつけるか、方法を色々話し合った。
頑固おやじと評判なだけに、それなりに気難しいだろうから話の持っていき方も工夫した方がいいだろうが・・・。

イマイチどういう方法がいいのか想像がつかない。
結局、色々悩んだモノの単純に意見を聞く方法でいってみていから状況に応じて方法を変えようと言うことになった。

スタルノの紹介状を持って現れ、お茶を飲んでいたと思ったら突然魔具を取り出した俺たちをあっけにとられたように眺めていたダビーだが、少なくとも怒りだしはしなかった。

「どう思うって・・・何の話だ?」

「濡れた服を乾かす便利な魔具として売り出そうと思うんだけど、使い勝手や造りやすさの点から何か思うところがあるか見てくれない?」
シャルロが説明した。

「濡れた服を乾かすねぇ・・・。面白いアイディアではあるな」
興味深げに乾燥機を眺めまわしてから、スイッチを入れてみる。

首を回しながら温風を出し始めた乾燥機を見て、老職人は笑い出した。

「ははは!自分で首を振って乾燥を早めるか。ある意味当然な工夫だが、誰も造っていなかったな、確かに」

あれ?
頑固親父だったんじゃなかったの?

ダビーは乾燥機にタオルを直接かけ、俺たちの方へ向き直った。

「何を俺にさせたいのか、はっきり説明してもらおうか」

ということで、俺たちがビジネスを始めようと思っていることを説明。
アイディアと工夫は人よりも才能があると思うが、造る実務的な経験が無いことから熟練魔具職人のアドバイスが欲しいこと。
そんでもってこれが一号であること。
勿論、これがテストであるとは明言しなかったけど・・・ま、想像はついていたんだろうな。

「ということは、お前らは長期的に俺にアドバイザーとして働いてもらいたい訳だ。
となったら機密事項のある契約書でも結ばせるのか?俺がアイディアを売っぱちまったらどうするつもりだ?」

「アドバイザーとして働くことを合意してくれたら、勿論契約書にサインしてもらうことになる。
今回の試作品に関しては・・・最初のハードルと言うことである程度のリスクはしょうがないと思っている」
アレクが説明した。

「ふむ」
ダビーは乾燥機にかけてあったタオルを手に取り、熱くなり過ぎていないことを確認してから乾燥機を手にらとって調べ始めた。

「発火防止の工夫もされているのか。
確かにモノとして悪くないかもしれないな。だが、お前たちが何日かけたのか知らんがそれなりに研究と工夫で作ってきたものを半刻で問題点を指摘するのは無理だ。
とりあえず、5日程くれ。機密保護の契約が無いが、あんたたちの信頼は裏切らないと約束しよう」

約束、ねぇ。
そんなものを信じて安心していたらやっていけないと思うが・・・。ま、これも初期ハードルの一つだと思って我慢するか。

アレクとシャルロに目をやって、頷いて見せた。

「分かった」
アレクが答える。

もうすぐ卒業だからさっさとアドバイザーの選択も決めちまいたかったんだけどねぇ。
ここで躓いたら後から面倒だからしょうがないか。
急ぎすぎて失敗したら後々はもっと時間と金がかかることになる。

◆◆◆◆



「原価が高すぎるだろう、これ。もっと安く仕上げないと」
というのが5日後のいの一番に出されたダビーの指摘だった。

どうやら、俺たちの手伝いをすることには合意してくれたらしい。アレクが用意していた契約書も一通り目を通したら文句言わずにサインしていたし。

だけど・・・。
高いか。
魔具としては悪くない値段になると思ったんだが。
もっと安くしないと普通の大衆が買うには厳しいか。

工夫はこれからだな。

とりあえず、目をつけて価格交渉を始めていた工房・住居用の場所を買って開業準備をしなくちゃ。

しおりを挟む
感想 50

あなたにおすすめの小説

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪役令嬢が処刑されたあとの世界で

重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。 魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。 案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。

俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?

くまの香
ファンタジー
 いつもの朝、だったはずが突然地球を襲う謎の現象。27歳引きニートと27歳サラリーマンが貰ったスキル。これ、チートじゃないよね?頑張りたくないニートとどうでもいいサラリーマンが流されながら生きていく話。現実って厳しいね。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

処理中です...