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魔術学院3年目
121 星暦552年 藤の月 4日 新居2
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「では、これから5年間、ご自由にお使いください。」
代官の手の者は捺印された契約書を俺たちに渡し、出て行った。
屋敷の中には商人が出て行った際に残して行った家具がいくつか残っているだけで殆ど何もない。
埃と蜘蛛の巣だけと言った方がいいか。
「誰か掃除に雇おうかと思ったんだが、これだけの広さを清掃するのに何日かかるか分からないからな。シャルロ、蒼流に水洗いを頼めるかな?1階と2階をやってくれたら清早が3階と外部を洗うから」
契約には関与していなかった代わりに契約後の準備の担当だった俺が指示を出す。
「蒼流、お願いできる?」
シャルロが精霊に頼み込んでいた。
ま、一応清早にどうやって清掃するのかは説明してそれを蒼流にもそれとなく伝えておいて貰ったから問題は無いだろう。
高位精霊に掃除を頼むなんて前代未聞だろうけどさ。
シャルロ溺愛の蒼流なら問題なし!
本当は近所の人を雇って徹底的に清掃させた方が周りとの近所付き合いもできて一石二鳥なんだけど・・・。数年程放置されていた為汚れがひどく、水洗い無しにはちょっと使えないレベルだったんだよね。
そんでもって冬の今に水洗いなんてやる方も嫌だし、やった後にも渇くのに時間がかかって下手したら家中カビだらけになってしまう。
ということで近所付き合いはまたの機会にすることにした。
蒼流がシャルロにどう答えたのかは聞こえなかったが、あっという間に水が家の中を流れ周り、汚れを洗い落として姿を消していく。
清早も同じことを3階の小部屋と外壁にやっている。
流石水の精霊、見事だ。
あっという間に建物の中は埃一つない、清潔な状態になっていた。
「家の中の家事を頼む為に近所の人を何人か通いで雇っているから、扉とか床のワックスがけはおいおいやってもらう予定。だから床に艶が無くても気にしないでおいて。
とりあえず、家具を入れちまおう」
一応、ディナーテーブルとリビングルームのソファはアレクとシャルロが相談して適当なモノを入手して、朝一番に敷地まで運びこんである。
あまり人を招く気はないが、それなりに家族や仕事相手が訪れる可能性があるからあまり安物一辺倒では困るから、俺は口を出さなかった。
工房は現実的な物でいいということでダビー氏とも相談しながら俺が製作台と本棚を複数入手した。
「厩に干し草と飼い葉類はもう運び込ませた。水も厠と風呂場と台所へちゃんと流れるし排水も確認してある。あとは・・・あ、パディン夫人が来たから紹介するよ」
俺たちの新居で家政婦として働く人だ。
本当は3人でちゃんと面接とかした方が良かったんだが、何と言っても時間が無かったので俺が独りで選ぶことにした。うまくいかなかったらシャルロが『実家から人が来ることになったから』と言って辞めてもらうことで密かに話は付いている。
外に積んである家具を疑わしげに見ていた女性が扉の前に来たので、玄関を開いて相手を中へ招く。
「シャルロ、アレク。こちらがこれから俺たちの家と工房の家政婦をしてくれるアレシア・パディン夫人。パディン夫人、こちらがシャルロ・オレファーニとアレク・シェフィートね。これからよろしく」
「よろしくね。何か困ったことがあったら言って」
シャルロがにこやかに挨拶をし、アレクが続く。
「色々音がしたり変なことをしていると思われたりする時もあるかもしれないが、気にしないでくれ。
そういえば、ウィルが説明したと思うが、この家の中で見たことは我々の許可なしには他の人には言わないということは理解していただけているのだな?」
パディン夫人はこの郊外の農村には珍しい、若き日に貴族の家で勤めていたという経歴を持つ人間だ。住む予定の人間の素性を説明した時には驚いていたが、しっかりと約束してくれたから大丈夫だろう。
何故か雇用人探しに付き合ってくれたシャルロの妖精王も信頼できると言ってくれたし。
「勿論ですわ。
ところで、掃除は手配してあるとのことですが、いつごろ終わりますか?色々運び込みたいものがあるのですが」
「ああ、もう終わったから。水洗いだから後で時間がある時にワックスがけをしておいて。運び込みたいモノは台所に入れればいいの?家具を動かすついでに動かすよ」
俺の返事に微妙に『嘘つけ』という顔をしたが、流石にそれは口に出さずに頷き、『よろしくお願いします』とだけ言って夫人は上にあがって行った。
自分で確認しに行ってやんの。
ま、いいんだけどさ。
以前勤めていた貴族は魔術師の家系では無かったらしいから魔術師と暮らすのには慣れていないんだろうな。
「そんじゃ、運び込みますか」
「「ん」」
契約完了まで家の中に物を運び込めなかったので、朝一に敷地まで運びこませた(本当は敷地内に運び込むのも厳密にはいけないんだが)家具のところへ行き、浮遊をかけて動かす。
ついでに荷車に積んであった料理道具やら食材やら掃除道具も。
この家はそれなりに立派な台所があったので3人で相談した結果、料理も頼むことにしたのだが・・・料理人は一応パディン夫人が候補者を見つけてきて俺たちに試食させることになっている。
そろそろ腹が減ってきたんだが、その候補人はいつ来るんだ?
代官の手の者は捺印された契約書を俺たちに渡し、出て行った。
屋敷の中には商人が出て行った際に残して行った家具がいくつか残っているだけで殆ど何もない。
埃と蜘蛛の巣だけと言った方がいいか。
「誰か掃除に雇おうかと思ったんだが、これだけの広さを清掃するのに何日かかるか分からないからな。シャルロ、蒼流に水洗いを頼めるかな?1階と2階をやってくれたら清早が3階と外部を洗うから」
契約には関与していなかった代わりに契約後の準備の担当だった俺が指示を出す。
「蒼流、お願いできる?」
シャルロが精霊に頼み込んでいた。
ま、一応清早にどうやって清掃するのかは説明してそれを蒼流にもそれとなく伝えておいて貰ったから問題は無いだろう。
高位精霊に掃除を頼むなんて前代未聞だろうけどさ。
シャルロ溺愛の蒼流なら問題なし!
本当は近所の人を雇って徹底的に清掃させた方が周りとの近所付き合いもできて一石二鳥なんだけど・・・。数年程放置されていた為汚れがひどく、水洗い無しにはちょっと使えないレベルだったんだよね。
そんでもって冬の今に水洗いなんてやる方も嫌だし、やった後にも渇くのに時間がかかって下手したら家中カビだらけになってしまう。
ということで近所付き合いはまたの機会にすることにした。
蒼流がシャルロにどう答えたのかは聞こえなかったが、あっという間に水が家の中を流れ周り、汚れを洗い落として姿を消していく。
清早も同じことを3階の小部屋と外壁にやっている。
流石水の精霊、見事だ。
あっという間に建物の中は埃一つない、清潔な状態になっていた。
「家の中の家事を頼む為に近所の人を何人か通いで雇っているから、扉とか床のワックスがけはおいおいやってもらう予定。だから床に艶が無くても気にしないでおいて。
とりあえず、家具を入れちまおう」
一応、ディナーテーブルとリビングルームのソファはアレクとシャルロが相談して適当なモノを入手して、朝一番に敷地まで運びこんである。
あまり人を招く気はないが、それなりに家族や仕事相手が訪れる可能性があるからあまり安物一辺倒では困るから、俺は口を出さなかった。
工房は現実的な物でいいということでダビー氏とも相談しながら俺が製作台と本棚を複数入手した。
「厩に干し草と飼い葉類はもう運び込ませた。水も厠と風呂場と台所へちゃんと流れるし排水も確認してある。あとは・・・あ、パディン夫人が来たから紹介するよ」
俺たちの新居で家政婦として働く人だ。
本当は3人でちゃんと面接とかした方が良かったんだが、何と言っても時間が無かったので俺が独りで選ぶことにした。うまくいかなかったらシャルロが『実家から人が来ることになったから』と言って辞めてもらうことで密かに話は付いている。
外に積んである家具を疑わしげに見ていた女性が扉の前に来たので、玄関を開いて相手を中へ招く。
「シャルロ、アレク。こちらがこれから俺たちの家と工房の家政婦をしてくれるアレシア・パディン夫人。パディン夫人、こちらがシャルロ・オレファーニとアレク・シェフィートね。これからよろしく」
「よろしくね。何か困ったことがあったら言って」
シャルロがにこやかに挨拶をし、アレクが続く。
「色々音がしたり変なことをしていると思われたりする時もあるかもしれないが、気にしないでくれ。
そういえば、ウィルが説明したと思うが、この家の中で見たことは我々の許可なしには他の人には言わないということは理解していただけているのだな?」
パディン夫人はこの郊外の農村には珍しい、若き日に貴族の家で勤めていたという経歴を持つ人間だ。住む予定の人間の素性を説明した時には驚いていたが、しっかりと約束してくれたから大丈夫だろう。
何故か雇用人探しに付き合ってくれたシャルロの妖精王も信頼できると言ってくれたし。
「勿論ですわ。
ところで、掃除は手配してあるとのことですが、いつごろ終わりますか?色々運び込みたいものがあるのですが」
「ああ、もう終わったから。水洗いだから後で時間がある時にワックスがけをしておいて。運び込みたいモノは台所に入れればいいの?家具を動かすついでに動かすよ」
俺の返事に微妙に『嘘つけ』という顔をしたが、流石にそれは口に出さずに頷き、『よろしくお願いします』とだけ言って夫人は上にあがって行った。
自分で確認しに行ってやんの。
ま、いいんだけどさ。
以前勤めていた貴族は魔術師の家系では無かったらしいから魔術師と暮らすのには慣れていないんだろうな。
「そんじゃ、運び込みますか」
「「ん」」
契約完了まで家の中に物を運び込めなかったので、朝一に敷地まで運びこませた(本当は敷地内に運び込むのも厳密にはいけないんだが)家具のところへ行き、浮遊をかけて動かす。
ついでに荷車に積んであった料理道具やら食材やら掃除道具も。
この家はそれなりに立派な台所があったので3人で相談した結果、料理も頼むことにしたのだが・・・料理人は一応パディン夫人が候補者を見つけてきて俺たちに試食させることになっている。
そろそろ腹が減ってきたんだが、その候補人はいつ来るんだ?
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