シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

512 星暦555年 藤の月 29日 俺はオマケです。(11)

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「ここでの作業ももう終わりなのね~」
収納庫と思われる小部屋に残っていた物に俺が固定化の術を掛け、シェイラが分類して記録していた作業を終えて、中央の部屋に出てきたシェイラが伸びをしながら感慨深げに周りを見回した。

最初の休息日にこの宿場を発見して以来、俺は毎日ここで様々な物に固定化の術を掛けたり、隠し金庫や地下の食料庫などを探すのを手伝ったりとほぼずっとここで作業していた。シェイラは溜まりに溜まった書類や帳簿の処理に追われ、15日程度は朝からずっとメインの遺跡にある事務所として使っている一角でゼルガと働いていた。
お陰で毎晩何が発見されたのか問い詰められて大変だった・・・。

何としてもここを離れる前にこの宿場の発掘作業に関わりたかったのか、ちょっと鬼気迫った感じでゼルガを追い立てて色々教えたり処理をしたりしたシェイラの努力が実り、やっと3日ほど前から午前だけあちらでゼルガの相談にのって一部処理を手伝い、午後はこちらで働けるようになったシェイラだが・・・残念ながら、もう今日で『お手伝い』は終わりだ。
まあ、明日の休息日も王都に帰る直前まではここで作業するつもりだろうけど。

「また適当に休みを取ってここの手伝いに来るか?
シェイラが何か言っていた予算申請の書類を提出する時期に正式にシェイラに来てくれってハラファに依頼させるのもアリだと思うし」
今回の宿場の発掘作業は中々面白かったから、また来るのも悪くない。

歴史学会にシェイラの移動費用を払わせられないのだったら、俺が転移門を起動させてもいいし。

「そうねぇ。
まあ、ハラファとアルマがもの凄く熱心に取り組んでいるから秋までにはこの宿場の発掘作業の大部分は終わってしまいそうだけど」
シェイラが首を小さく傾げながら答えた。

まあなぁ。
『宿場だったんだから客室を一つ借りれば良い』と開き直って、先日まで白骨死体が横たわっていた客室に泊まり込んで作業を続けていたハラファとアルマの様子を鑑みるに、確かにその可能性は高いかも。

流石に寝具は寝袋を持ってきていたが、よくぞまあ伝染病で死んだ白骨死体が安置してあった部屋に寝る気になるよなぁ・・・。

「掘らなくて良い上にウィルが固定化の術もガンガン掛けてあげたから、作業が凄く効率よかったってハラファも言っていたわよ」
とシェイラが付け加えた。

「今回は片付けた後の遺跡ではなく、実質伝染病が発症するまでは普通に開業していた場所をそのまま封鎖した感じだったから、本当に昔の人の生活が目に浮かぶ感じで、面白かったな。
次に来る時にまた何か他にも固定化の術が掛っている場所が周辺地域に無いか探してみても良いな~って俺が言ってるってハラファに漏らしておいたら、俺というオマケ目当てにシェイラの手伝いを要請するんじゃ無いか?」
自分の能力では無く、オマケを目当てに手伝いに呼ばれるのはちょっと業腹かも知れないが・・・シェイラはそこら辺の割り切りと利用が上手だからな。
提案しても怒らないだろう。

案の定、シェイラがにやりと笑った。
「良い考えね、それ。
だけど、本来ならば歴史学会がお金を払って依頼すべき作業なのに、無料でウィルをこき使っちゃって良いの?」

「『オマケ』としてちょっと興味本位な手伝いをするのもたまになら楽しいから構わないさ。
ちょっと休暇に山や海に行って景色を楽しむっていうのは俺達にはあまり向かないし、かといって王都でシェイラが買い物するのに付き合うのも何日もやったら疲れるし。
ボランティアを兼ねた発掘の手伝いで楽しんで、ついでにシェイラのキャリアにオマケの経験を足しておくのも悪くないだろ?」
はっきり言って、誰かの買い物に付き合うのは苦痛だ。
シェイラは一般的な女性よりは買い物に夢中にはならないが、それなりに拘りがある上にしっかり比較してから買うタイプだから、街中を歩き回って商品を確認する羽目になるんだよね・・・。
買い物って女性の体力を無限に回復させる代わりに、男性の体力を吸い取って枯渇させる効果がある気がする。
以前それを家で言ったらアレクに爆笑され、シャルロに頷かれた。
どちらも『気のせいじゃない?』とは言わなかったから、あいつらも同じような感想を抱いているんだと思う。

取り敢えず、田舎に行って自然を楽しむというのは俺の趣味じゃあないし、そうなるとイマイチ二人で楽しめる活動っていうのがない。
そう考えると、シェイラも俺もそれなりに楽しめる発掘のお手伝いボランティアというのも悪くない。

まあ、今回ほど珍しい発掘現場が見つかる可能性は低いんだろうけど。
・・・もしかして、俺ってそれなりに運が良いのかな?
それともシェイラが運が良いのか・・・。


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何かイマイチ盛り上がりに欠けた話になりましたが、これで一連のお手伝いの話は終わりです。
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