シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

162 星暦552年 翠の月 29日 楽しい手伝い

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「ちょっと、気分転換に遠出しない?」
シャルロが夕食の場で提案をしてきた。

空滑機グライダーを自分たち用、学院長用、レンタル用、運営役の魔術師用と5つほど作り、運営役の魔術師を選ぶ為に魔術院で何人かに話を聞いて回った後に面接を行い、契約書を交わし、レンタルのビジネスを始める場所選び・・・などなど、今月は目が回るほど忙しかった。

本当ならば、空滑機グライダーはお遊び用で今頃はシェフィート商会からまた何か委託開発をしている予定だったんだけどねぇ。

ちょっと変則的なビジネスだけど、何とかなりそうなので色々その為に時間を取られることになったのだ。
お陰で委託開発は後回し。

ま、今すぐ行わなければ困る!と言うような開発依頼は何も来ていないからいいんだけどさ。

やっとひと段落落ち着き、これからどうしようかと話していたらシャルロが提案をしてきた訳だ。

「遠出?俺はピクニックへどっか森へ行くとか言うのは遠慮させてもらうぜ。空滑機グライダーの滞空距離を調べるのを兼ねて出来るだけ遠くへ飛ぶ実験を行うと言うのならば付き合うのも吝かじゃあないが」

学院1年目の神殿への遠出の時に嬉々としていたシャルロの姿はいまだに良く覚えている。
あんなところに行くのは嫌だ!
気分転換どころかストレスを更にためるだけだ。
・・・まあ、清早かアスカがリフレッシュする為に森に行くことが必要と言うのなら付き合っても良いが。

「学院の時に紺の月の中休みの時に見つけた廃墟あったじゃない?あれの研究が去年の終わり本格的に始まっていたらしいんだけどさ、ちょっと何人かの人が里帰りしちゃっているから人手不足なんだって。
折角プロの人と遺跡研究が出来るから、お金はいらないって言っちゃったんだけど大丈夫だよね?」

・・・。

思わず、俺とアレクは突拍子もないことを言いだしたシャルロをじっと見つめてしまった。

「・・・廃墟?」

「あれを見つけた時に、考古学の研究の仕方を身につけてまた今度来ようって言っていたじゃない!」
疑わしげな俺の返事にシャルロが足を苛立たしげにふみならして答える。

ああ。
そう言えばそんなことをも言っていたよな。
確かにあの休みの後にそれなりに熱心に考古学の本を読んだのだが・・・しばらくしたら他のことに忙殺されてあの時の勉強は身にはつかなかったなぁ。

まあ、アイディアとしては悪くないが。

幸い、湯沸かし器(ティーバッグも!)がそこそこ良い感じに売れているので焦って次の開発の仕事を引き受けなくてもいいんだよね。
先月は楽しんではいたものの、かなりハードに働いた。
そんでもって今月はあまり楽しくないことの為にかけずり回っていた。

確かにここら辺で気分転換は必要かもしれない。

「まあ、悪くないアイディアだが・・・いいのか、ケレナ嬢と離れてしまって?」
アレクが尋ねた。

これがからかう感じにならないところがアレクの人徳だよなぁ。

「いいの、ケレナは丁度その時期おばあさまのところに遊びに行くって言っていたから」
あっさりシャルロが種を明かした。

だからあの遺跡に行こうなんて言い出したんだな!!
「いいのかい、俺たちもご一緒しちゃって?」

おっと。
つい、からかう口調になってしまった。
アレクよ、睨むな。これからは気をつけるからさ。

「うん?何で一緒じゃいけないの?
ケレナはあっちに行ったらおばあさまのところの鷹や幻獣と遊ぶのに忙しくってどうせあまり僕といる時間は無いんだよ。ただ、ケレナのことをおばあさまと話していた時にあの廃墟の研究をしている学者さん達が短期ヘルプを求めているって聞いただけだから」

そっか。
「ふうん、じゃあまあ、俺は賛成に一票」

「そうだな、良いかもしれない。ついでに、転移門を使わずに、直接空から行けるか試してみないか?
1日中飛んでいたらどのくらいの距離をカバーできるのか実証してみたい」
アレクも合意した。

ふむ。
転移門を使わずに行く、ね。
まあ、転移門からの移動にかなり時間がかかったことを考えると、転移門なしでの移動でも最終的には同じぐらいの時間で辿り着けるかな?
1日中空を飛べるのかの確認にもなるし。

楽しみだ。

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