529 / 1,309
卒業後
528 星暦555年 紫の月 10日 確認作業は重要です(7)
しおりを挟む
「東の大陸ってアファル王国にはないタイプの麻薬が一般的に出回っているんですねぇ。
知ってました?」
港町に居た麻薬販売に関係した人間を捕まえまくり、ついでにその後に街の外の畑整備を手伝って更に王都側の販売に関わる人間を捕まえるために警備兵と一緒に屋敷船で帰ってきた俺たちは、それぞれおまけ的な後始末に動くことになった。
シャルロは新しいタイプの麻薬に関して『ウォレン叔父さん』のところへ注意喚起を含めた情報共有。
アレクは商業ギルドへ。
なんといっても、新しいタイプなので『麻薬だとは知らなかった』と言い抜けられては困る。『麻薬である』と定めたパストン島の責任者(ジャレットね)の通達を渡して、軍でも麻薬として取り締まることになるのでどっかの商会が『うっかり』アファル王国の本土へ運び込まないようにくぎを刺しておくのだ。
通達を持っていってほしいとジャレットがアレクに頼んだ時に、ジャレットにそんな権限があるのかと俺は密かに驚いたのだが、新しい地域で育つ植物に関しては開発責任者が初期的危険物指定を出来るらしい。
勿論、後で専門家による検査を受けて正式指定されるのだが、こういった指定が覆されることはほぼないので初期的指定でも商業ギルドはちゃんと動くそうだ。
そして俺は裏の販売経路を潰しておくために盗賊《シーフ》ギルドへ。
別にここまで頑張らなくても良いかな~とも思わないでもなかったのだが、俺達のパストン島(厳密には『俺達の』じゃないけど気分的にはそんな感じなんだよね)経由で変な麻薬が蔓延したりしたら嫌だから、出来ることはしておこうということになったのだ。
「ほおう?
気候が違えば育つ麻薬もタイプが変わってくるだろうが・・・今まで香辛料の交易があってもこちらに流れて来なかったということはあまり効果が強くないか、湿気に弱いのか?」
長がグラスにワインを注ぎながら首をかすかに傾けた。
「まあ、アファル王国で使われる様なガチの麻薬もあるんでしょうが、あちらはもう少し効果が弱くて副作用もそれほど重くない葉を食べたり煙草のように吸ったりするのが人気らしくって。
雑草のように適当に撒いても育つみたいで地域によっては殆どワインと同じ感覚で流通しているので『麻薬』と認識しているかどうか、微妙なところらしいです。
とは言っても、こっそり隠れてパストン島の港町の外で栽培しようとしていたので、表立って栽培して流通できる物ではないようですけどね」
育てていた男たちから取り上げた麻薬の一部をサンプルとして長に差し出しながら答える。
「ふむ。
これか。
確かに中毒性は少ないが・・・気分が良くなって心配事を忘れさせてくれる『都合のいい薬』は結局のところは麻薬であることに変わりはない。
却って露骨に体がボロボロにならないから本人が『依存していない』と自分にも周りにも言い聞かせやすいから、一度嵌ったら抜け出しにくそうだな」
長は葉を小さくちぎって臭いをかぎ、舌の上に乗せて確認してから吐き出して言った。
おや。
これを知っているのか?
それこそ高級紅茶を運ぶ時に使う除湿魔道具でもなければ以前の南回りの航路ではアファル王国まで入ってこなかっただろうに。
まあ、どちらにせよ既に長がこれを知っていて『麻薬である』と認識しているんだったら話は簡単だ。
「どうやら新しい航路が出来たことで、高額な魔道具を使わなくてもアファル王国に売り込めると考える組織が幾つか出てきたようですね。
軍部にも情報共有するので、こちらで売っている奴がいたら潰しといたら感謝されるかも?」
別に俺が口をはさむ筋合いのことじゃあないんだけどね。
でも、王都での販路が潰されまくったらパストン島で育てたり、そこを経由してアファル王国に持ち込もうとする売人組織も減るだろう。
収拾がつかなくなったら蒼流か清早に『麻薬を載せてる船は全部王都の港の外で足止めして』と頼めば何とでもなるんだけどね。
だが、そこまで俺たちが関与しなくても問題にならないはず。
盗賊《シーフ》ギルドが麻薬の販売販路を見つけ次第潰しているのは、メンバーが麻薬に嵌った時の弊害が大きいからであって、『誰かからの依頼』や『王国の為』ではなく自己防衛の為だ。
だから新しい麻薬を販売しようとする組織が存在することを知らせておけば、それなりに目を光らせて要らないことをする奴らを自発的につぶす方向で動いてくれるはず。
これが下手に脅しとか依存させて言うことを聞かせるのに都合がいい薬だったりすると他の裏ギルドが販売側に協力しちゃって収拾がつかなくなることもあるが、今回のは大して即効的な依存性が無いからその心配もないだろう。
「分かった。
お前さんの大事なパストン島が麻薬紛争に巻き込まれないよう、こちらの販路は片っ端から潰していこう」
にやりと笑いながら長が答えた。
あらら。
なんで来たのかばれちゃってら。
「ところで。
実はちょっとした依頼がきているのだが。
小遣い稼ぎをしてはどうかね?」
長がワインを俺に注いで勧めながらにやりと笑った。
小遣いっていう年じゃないんだけどなぁ・・・。
------------------------------------------------------------------------------------
なんかあまり盛り上がらなかった・・・。
捻りが足りませんでしたね!
知ってました?」
港町に居た麻薬販売に関係した人間を捕まえまくり、ついでにその後に街の外の畑整備を手伝って更に王都側の販売に関わる人間を捕まえるために警備兵と一緒に屋敷船で帰ってきた俺たちは、それぞれおまけ的な後始末に動くことになった。
シャルロは新しいタイプの麻薬に関して『ウォレン叔父さん』のところへ注意喚起を含めた情報共有。
アレクは商業ギルドへ。
なんといっても、新しいタイプなので『麻薬だとは知らなかった』と言い抜けられては困る。『麻薬である』と定めたパストン島の責任者(ジャレットね)の通達を渡して、軍でも麻薬として取り締まることになるのでどっかの商会が『うっかり』アファル王国の本土へ運び込まないようにくぎを刺しておくのだ。
通達を持っていってほしいとジャレットがアレクに頼んだ時に、ジャレットにそんな権限があるのかと俺は密かに驚いたのだが、新しい地域で育つ植物に関しては開発責任者が初期的危険物指定を出来るらしい。
勿論、後で専門家による検査を受けて正式指定されるのだが、こういった指定が覆されることはほぼないので初期的指定でも商業ギルドはちゃんと動くそうだ。
そして俺は裏の販売経路を潰しておくために盗賊《シーフ》ギルドへ。
別にここまで頑張らなくても良いかな~とも思わないでもなかったのだが、俺達のパストン島(厳密には『俺達の』じゃないけど気分的にはそんな感じなんだよね)経由で変な麻薬が蔓延したりしたら嫌だから、出来ることはしておこうということになったのだ。
「ほおう?
気候が違えば育つ麻薬もタイプが変わってくるだろうが・・・今まで香辛料の交易があってもこちらに流れて来なかったということはあまり効果が強くないか、湿気に弱いのか?」
長がグラスにワインを注ぎながら首をかすかに傾けた。
「まあ、アファル王国で使われる様なガチの麻薬もあるんでしょうが、あちらはもう少し効果が弱くて副作用もそれほど重くない葉を食べたり煙草のように吸ったりするのが人気らしくって。
雑草のように適当に撒いても育つみたいで地域によっては殆どワインと同じ感覚で流通しているので『麻薬』と認識しているかどうか、微妙なところらしいです。
とは言っても、こっそり隠れてパストン島の港町の外で栽培しようとしていたので、表立って栽培して流通できる物ではないようですけどね」
育てていた男たちから取り上げた麻薬の一部をサンプルとして長に差し出しながら答える。
「ふむ。
これか。
確かに中毒性は少ないが・・・気分が良くなって心配事を忘れさせてくれる『都合のいい薬』は結局のところは麻薬であることに変わりはない。
却って露骨に体がボロボロにならないから本人が『依存していない』と自分にも周りにも言い聞かせやすいから、一度嵌ったら抜け出しにくそうだな」
長は葉を小さくちぎって臭いをかぎ、舌の上に乗せて確認してから吐き出して言った。
おや。
これを知っているのか?
それこそ高級紅茶を運ぶ時に使う除湿魔道具でもなければ以前の南回りの航路ではアファル王国まで入ってこなかっただろうに。
まあ、どちらにせよ既に長がこれを知っていて『麻薬である』と認識しているんだったら話は簡単だ。
「どうやら新しい航路が出来たことで、高額な魔道具を使わなくてもアファル王国に売り込めると考える組織が幾つか出てきたようですね。
軍部にも情報共有するので、こちらで売っている奴がいたら潰しといたら感謝されるかも?」
別に俺が口をはさむ筋合いのことじゃあないんだけどね。
でも、王都での販路が潰されまくったらパストン島で育てたり、そこを経由してアファル王国に持ち込もうとする売人組織も減るだろう。
収拾がつかなくなったら蒼流か清早に『麻薬を載せてる船は全部王都の港の外で足止めして』と頼めば何とでもなるんだけどね。
だが、そこまで俺たちが関与しなくても問題にならないはず。
盗賊《シーフ》ギルドが麻薬の販売販路を見つけ次第潰しているのは、メンバーが麻薬に嵌った時の弊害が大きいからであって、『誰かからの依頼』や『王国の為』ではなく自己防衛の為だ。
だから新しい麻薬を販売しようとする組織が存在することを知らせておけば、それなりに目を光らせて要らないことをする奴らを自発的につぶす方向で動いてくれるはず。
これが下手に脅しとか依存させて言うことを聞かせるのに都合がいい薬だったりすると他の裏ギルドが販売側に協力しちゃって収拾がつかなくなることもあるが、今回のは大して即効的な依存性が無いからその心配もないだろう。
「分かった。
お前さんの大事なパストン島が麻薬紛争に巻き込まれないよう、こちらの販路は片っ端から潰していこう」
にやりと笑いながら長が答えた。
あらら。
なんで来たのかばれちゃってら。
「ところで。
実はちょっとした依頼がきているのだが。
小遣い稼ぎをしてはどうかね?」
長がワインを俺に注いで勧めながらにやりと笑った。
小遣いっていう年じゃないんだけどなぁ・・・。
------------------------------------------------------------------------------------
なんかあまり盛り上がらなかった・・・。
捻りが足りませんでしたね!
1
あなたにおすすめの小説
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で
重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。
魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。
案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。
俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?
くまの香
ファンタジー
いつもの朝、だったはずが突然地球を襲う謎の現象。27歳引きニートと27歳サラリーマンが貰ったスキル。これ、チートじゃないよね?頑張りたくないニートとどうでもいいサラリーマンが流されながら生きていく話。現実って厳しいね。
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる