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卒業後
549 星暦555年 紺の月 23日 総動員(6)
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「アンディ。
かなり探知網が切れまくっているんだが、それでも俺が魔石を落としていく方が良いのか?
どうも風精霊が邪魔だと探知網を切ったみたいで、下手したら位置を特定する為に追跡用の魔石を探すよりも全部確認して逐次直していく方が早いと思うぞ」
通信機でアンディに声をかけた。
「はぁ?
風精霊が切った???
・・・ちなみにどのくらい切れているんだ?」
空滑機《グライダー》を停止させて、心眼《サイト》で近くの範囲を視て回った。
「大雑把な感じで言って、西の一番通りから南西の10番通りの間で・・・5か所切れているな。
場所によっては起点か終点の杭が引き抜かれているかもしれない」
大体2つに1つの接続点が分断されている上に、どうも接続がきっちりしすぎたところは起点なり終点になっていた杭その物がなぎ倒されてそこの結界が完全に抜けているようだ。
なんか、今日1日の王都在住の魔術師の作業が半分ぐらい無に帰している感じだ。
作業した一員として、思わず泣けてくるぞ、これ。
「・・・ちょっと待ってくれ。
そんな規模での問題が起きたことなんて今までなかったぞ??!!」
アンディの悲鳴のような声に、茫然とした様子が目に浮かぶ。
「今回はちょっと風精霊が結界が邪魔だって薙ぎ払ったっぽいんだよ。
風精霊の加護持ちを見つけて、詳しく確認したほうが良いんじゃないか?
一応、これ以上は結界を壊さないでくれと清早の友達の風精霊に頼んでおいたので修理しても多分無駄にはならないとは思うが」
そう言えば、結界は壊れないものの下手をすると夏の王都で風が吹かなくなるかもしれないということも伝えておいた方が良いだろうなぁ。
「・・・魔術院まで戻ってきてくれ。
魔術院の上空からでも、大体どのくらい切れているかは見えるよな?
王都の地図をもってくるから、そこに大体の切断個所を見せてくれ。
それを見てからどう対応するのか一番効率的か、考えよう」
アンディの返事が流れてきた。
「了解~。
ちなみに、待っている間に過去にこの魔道具を使った際の王都の気候に何か変化があったか、資料を確認しておいたらどうだ?
今まではどうも結界を薙ぎ払う代わりに単純に王都を避けていたらしいんだが、それだと風が吹かなかったと思うんだよな」
本当に風が吹かないとなったら王都の住民が茹で上がっちまうだろう。
風精霊が居なくても風って吹くのか??
◆◆◆◆
>>>サイド アンディ・チョンビ
ウィルとの通信が終わってから、傍に控えていた去年魔術学院を卒業したばかりの若いのに声をかけた。
「前回や前々回の王太子の結婚式や即位式で探知網を張った際の王都の気候に関する記録が無いか、探して来てくれ。
魔術院の覚書が総務課にあるはずだ」
「了解です」
ウィルとの通信を聞いていた若いのはすぐに総務課へ小走りで向かった。
あとは・・・風精霊の加護持ちか。
風の加護持ちは大抵交易船団に雇われて船を動かすのを手伝っていることが多い。だから魔術院で働く魔術師の中には確かいないはずだ。
だが、考えてみたら軍にはいると聞いた気がする。
まずは軍部の方に確認してみるか。
今回の輸送に関してやり取りをした大佐の通信機の連絡情報を探し出し、通信機を起動する。
「グラディウム大佐。
今日はお疲れさまでした。
後は確認作業だけだと思っていたのですが・・・どうも風精霊が探知網が気に入らないのか、設置した探知網を壊しているという情報が入ったのですが、確か軍に風精霊の加護持ちが居ましたよね?
ちょっと情報を確認したいので、その方に魔術院まで来ていただいて確認作業にご協力いただくことは可能ですか?」
「はぁぁ?
風精霊が探知網を壊した???」
あっけにとられた声が通信機から聞こえてくる。
驚くよなぁ。
加護持ちに協力することはあれど、基本的に精霊というのは人間に対して不干渉だ。
態々こちらが設置した結界や魔道具を精霊に壊されるなんて話は聞いたことがない。
「私も詳しいことはまだ分からないのですが、どうも設置した探知網がズタズタだと確認作業に向かった人間に言われまして。
風精霊が関与しているとの話を聞いたので、ちょっと確認したいのです」
予定としては今晩中に探知網の接続不備を直して明日にシャルロの蒼流に王都を水洗いしてもらう予定だったのだが・・・。
取り敢えず、何が起きているのかを確認しないことには話にならない。
そうだ、設置予定図の地図をつなげてウィルが帰ってきたら大雑把にどこら辺が切れているのかを示して貰ってどうやって修繕するのが最適か、考えないと。
「分かりました、パラティーダ少佐を見つけてそちらに向かいます。
どのくらい時間がかかるかは不明ですが、魔術院でいいのですね?」
グラディウム大佐の返事が返ってきた。
「お願いします。
受付で魔術院内にいる私を呼び出してください」
そうだ。
先に何か軽く食べておこう。
この調子じゃあ夜通しがっつり働くことになりそうだから、しっかりエネルギー補給をしておかないと・・・。
あ、パズール師が帰らないように足止めしておかないと!
夜遅くなるにしても、単純な修理の手配だけで今晩は終わって、明日はウィルと一緒に魔術院の予算で美味しい昼食を楽しめるはずだったのに・・・。
何が起きた??
------------------------------------------------------------
パズール師=総務課担当の長老。
かなり探知網が切れまくっているんだが、それでも俺が魔石を落としていく方が良いのか?
どうも風精霊が邪魔だと探知網を切ったみたいで、下手したら位置を特定する為に追跡用の魔石を探すよりも全部確認して逐次直していく方が早いと思うぞ」
通信機でアンディに声をかけた。
「はぁ?
風精霊が切った???
・・・ちなみにどのくらい切れているんだ?」
空滑機《グライダー》を停止させて、心眼《サイト》で近くの範囲を視て回った。
「大雑把な感じで言って、西の一番通りから南西の10番通りの間で・・・5か所切れているな。
場所によっては起点か終点の杭が引き抜かれているかもしれない」
大体2つに1つの接続点が分断されている上に、どうも接続がきっちりしすぎたところは起点なり終点になっていた杭その物がなぎ倒されてそこの結界が完全に抜けているようだ。
なんか、今日1日の王都在住の魔術師の作業が半分ぐらい無に帰している感じだ。
作業した一員として、思わず泣けてくるぞ、これ。
「・・・ちょっと待ってくれ。
そんな規模での問題が起きたことなんて今までなかったぞ??!!」
アンディの悲鳴のような声に、茫然とした様子が目に浮かぶ。
「今回はちょっと風精霊が結界が邪魔だって薙ぎ払ったっぽいんだよ。
風精霊の加護持ちを見つけて、詳しく確認したほうが良いんじゃないか?
一応、これ以上は結界を壊さないでくれと清早の友達の風精霊に頼んでおいたので修理しても多分無駄にはならないとは思うが」
そう言えば、結界は壊れないものの下手をすると夏の王都で風が吹かなくなるかもしれないということも伝えておいた方が良いだろうなぁ。
「・・・魔術院まで戻ってきてくれ。
魔術院の上空からでも、大体どのくらい切れているかは見えるよな?
王都の地図をもってくるから、そこに大体の切断個所を見せてくれ。
それを見てからどう対応するのか一番効率的か、考えよう」
アンディの返事が流れてきた。
「了解~。
ちなみに、待っている間に過去にこの魔道具を使った際の王都の気候に何か変化があったか、資料を確認しておいたらどうだ?
今まではどうも結界を薙ぎ払う代わりに単純に王都を避けていたらしいんだが、それだと風が吹かなかったと思うんだよな」
本当に風が吹かないとなったら王都の住民が茹で上がっちまうだろう。
風精霊が居なくても風って吹くのか??
◆◆◆◆
>>>サイド アンディ・チョンビ
ウィルとの通信が終わってから、傍に控えていた去年魔術学院を卒業したばかりの若いのに声をかけた。
「前回や前々回の王太子の結婚式や即位式で探知網を張った際の王都の気候に関する記録が無いか、探して来てくれ。
魔術院の覚書が総務課にあるはずだ」
「了解です」
ウィルとの通信を聞いていた若いのはすぐに総務課へ小走りで向かった。
あとは・・・風精霊の加護持ちか。
風の加護持ちは大抵交易船団に雇われて船を動かすのを手伝っていることが多い。だから魔術院で働く魔術師の中には確かいないはずだ。
だが、考えてみたら軍にはいると聞いた気がする。
まずは軍部の方に確認してみるか。
今回の輸送に関してやり取りをした大佐の通信機の連絡情報を探し出し、通信機を起動する。
「グラディウム大佐。
今日はお疲れさまでした。
後は確認作業だけだと思っていたのですが・・・どうも風精霊が探知網が気に入らないのか、設置した探知網を壊しているという情報が入ったのですが、確か軍に風精霊の加護持ちが居ましたよね?
ちょっと情報を確認したいので、その方に魔術院まで来ていただいて確認作業にご協力いただくことは可能ですか?」
「はぁぁ?
風精霊が探知網を壊した???」
あっけにとられた声が通信機から聞こえてくる。
驚くよなぁ。
加護持ちに協力することはあれど、基本的に精霊というのは人間に対して不干渉だ。
態々こちらが設置した結界や魔道具を精霊に壊されるなんて話は聞いたことがない。
「私も詳しいことはまだ分からないのですが、どうも設置した探知網がズタズタだと確認作業に向かった人間に言われまして。
風精霊が関与しているとの話を聞いたので、ちょっと確認したいのです」
予定としては今晩中に探知網の接続不備を直して明日にシャルロの蒼流に王都を水洗いしてもらう予定だったのだが・・・。
取り敢えず、何が起きているのかを確認しないことには話にならない。
そうだ、設置予定図の地図をつなげてウィルが帰ってきたら大雑把にどこら辺が切れているのかを示して貰ってどうやって修繕するのが最適か、考えないと。
「分かりました、パラティーダ少佐を見つけてそちらに向かいます。
どのくらい時間がかかるかは不明ですが、魔術院でいいのですね?」
グラディウム大佐の返事が返ってきた。
「お願いします。
受付で魔術院内にいる私を呼び出してください」
そうだ。
先に何か軽く食べておこう。
この調子じゃあ夜通しがっつり働くことになりそうだから、しっかりエネルギー補給をしておかないと・・・。
あ、パズール師が帰らないように足止めしておかないと!
夜遅くなるにしても、単純な修理の手配だけで今晩は終わって、明日はウィルと一緒に魔術院の予算で美味しい昼食を楽しめるはずだったのに・・・。
何が起きた??
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パズール師=総務課担当の長老。
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