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卒業後
208 星歴553年 赤の月5日 疑問(8)
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>>>サイド インクーザ
「インクーザ!警備兵小隊を率いて西区の方へ向かえ!
西区の警備兵控え所で魔術院の人間が待っていて案内してくれるそうだ」
突然の呼び出しで言いつけられた命令にインクーザは目を丸くした。
「はぁ?
審議官に突然出動しろってまず何が事件なのか、誰を逮捕するのか教えて下さいよ。
第一、書類はどこですか。警備兵がちょっと質問に呼び出すならまだしも、審議官が関わるとなったらちゃんと書類がないと不味いでしょうに」
街中でのちょっとした犯罪や争いの場合は警備兵が当事者を捕まえ、場合に寄っては数日留置所に入れた後に行政官が取り調べの結果や当事者の話を聞いて簡易判決を下す。
死傷事件や貴族(もしくはそれなりの地位の者に苦情を言えるだけの財力をもった人間)が関わる場合は審議官が警備兵を使って容疑者を取り調べ・逮捕を行い、審議判決を言い渡す。
更に大きな話になると審議官が取り調べを行って必要な情報と書類を提出し、裁判が開かれ国王に任命された裁判官が判決を下す。
審議官の権限はそれなりに大きいため、悪用されないように定められた手続きに従っていないことが判明した場合は審議官の方が罰せられる可能性もある。
インクーザは審議官だ。
取り調べや逮捕をするにもそれなりに根拠がなければ勝手に動き出すのは不味い。
上司が一瞬動きを止めた。
「あ。
そうだったな。
いや、書類は揃っているんだ。ただ、急ぎの案件なのにお前が中々昼食から帰ってこないから焦っていたんだよ」
おっと。
偶々友人が王都に来ていて、丁度仕事もなかったことだしちょっとノンビリ昼食を取っていたのがばれてしまったようだ。
まあ、この上司も案件がなければちょくちょくノンビリ昼食を取っているからあまり煩いことは言わないが。
ばさっと数枚の書類を渡された。
「スラフォード伯爵領の代官がどうも横領をしていたようでね。
あそこは冬が厳しいから毎年領主一家が冬は王都に来ているのを良いことに、色々やってもいなかった保守料とかを懐に入れていたのがばれたらしい。
詳しく話を聞こうとしたら逃げたようだが、偶然伯爵の甥の友人の魔術師が王都で代官を見かけたらしくってね。
何やら怪しい格好をしていたから思わず注目していたら家に入っていったのを目撃したと連絡してきたとのことで、取り押さえて取り調べを行うよう依頼が出た」
??
何で親戚の友人の魔術師が田舎町の代官を見ただけで分かるんだ?
何やら怪しいが、まあ取り調べをきっちりとこちらが責任を持って行えばいいだけの話だ。
書類にさっと目を通して正式に承認印が押されているのを確認して、警備兵の詰め所へ向かった。
◆◆◆
警備兵を連れて西区の警備兵控え所へ向かったところ、魔術師のローブを着た青年が待っていた。
「おや、君か。スラフォード伯爵に裏帳簿探しでも頼まれたのかい?」
警備兵の一人が青年を見かけて声を掛けた。
「いや、新製品のテストを兼ねて友人とコバムアポスへ行ったら、そこの代官に脅迫まがいな無茶ぶり依頼を受けてね。
ちょっと行動と街にあった魔術の痕跡と伯爵の認識に齟齬があるようだったから、伯爵の親戚でもある友人がその点を伯爵に指摘したら代官が逃げたらしいんだよ。
自分は偶々用事があったから王都に来ていたら、その代官が全然似合わない怪しげなカツラを被って歩いているのを見かけたのでコバムアポスにまだ居る友人に伝えたんだ。そうしたら彼が伯爵に代官の居場所を教えて今回の逮捕劇に繋がったみたいだね」
肩をすくめながら魔術師が答える。
そんな彼とまだ話をしたげだったが、横で二人を見ているインクーザに気付いたのか警備兵が振り返って魔術師を紹介した。
「インクーザ殿、魔術学院のウィル・ダントール君です。何でも透視の術が使えるとかで、一昨年のダンガン家の三男が関与していた人身売買の事件でもの凄く助けになってくれたんですよ。
・・・というか、一昨年と言うことはもう卒業して一人前の魔術師か。ダントール君なんて呼べないね。
ダントール殿、こちらは審議官のインクーザ殿だ」
青年が簡易式会釈をインクーザにした。
「こんにちは、審議官殿。魔術師のウィル・ダントールです。今回も裏帳簿なり隠し財産なりがある可能性が高いでしょうから、隠し金庫探しには協力しますよ」
「インクーザ!警備兵小隊を率いて西区の方へ向かえ!
西区の警備兵控え所で魔術院の人間が待っていて案内してくれるそうだ」
突然の呼び出しで言いつけられた命令にインクーザは目を丸くした。
「はぁ?
審議官に突然出動しろってまず何が事件なのか、誰を逮捕するのか教えて下さいよ。
第一、書類はどこですか。警備兵がちょっと質問に呼び出すならまだしも、審議官が関わるとなったらちゃんと書類がないと不味いでしょうに」
街中でのちょっとした犯罪や争いの場合は警備兵が当事者を捕まえ、場合に寄っては数日留置所に入れた後に行政官が取り調べの結果や当事者の話を聞いて簡易判決を下す。
死傷事件や貴族(もしくはそれなりの地位の者に苦情を言えるだけの財力をもった人間)が関わる場合は審議官が警備兵を使って容疑者を取り調べ・逮捕を行い、審議判決を言い渡す。
更に大きな話になると審議官が取り調べを行って必要な情報と書類を提出し、裁判が開かれ国王に任命された裁判官が判決を下す。
審議官の権限はそれなりに大きいため、悪用されないように定められた手続きに従っていないことが判明した場合は審議官の方が罰せられる可能性もある。
インクーザは審議官だ。
取り調べや逮捕をするにもそれなりに根拠がなければ勝手に動き出すのは不味い。
上司が一瞬動きを止めた。
「あ。
そうだったな。
いや、書類は揃っているんだ。ただ、急ぎの案件なのにお前が中々昼食から帰ってこないから焦っていたんだよ」
おっと。
偶々友人が王都に来ていて、丁度仕事もなかったことだしちょっとノンビリ昼食を取っていたのがばれてしまったようだ。
まあ、この上司も案件がなければちょくちょくノンビリ昼食を取っているからあまり煩いことは言わないが。
ばさっと数枚の書類を渡された。
「スラフォード伯爵領の代官がどうも横領をしていたようでね。
あそこは冬が厳しいから毎年領主一家が冬は王都に来ているのを良いことに、色々やってもいなかった保守料とかを懐に入れていたのがばれたらしい。
詳しく話を聞こうとしたら逃げたようだが、偶然伯爵の甥の友人の魔術師が王都で代官を見かけたらしくってね。
何やら怪しい格好をしていたから思わず注目していたら家に入っていったのを目撃したと連絡してきたとのことで、取り押さえて取り調べを行うよう依頼が出た」
??
何で親戚の友人の魔術師が田舎町の代官を見ただけで分かるんだ?
何やら怪しいが、まあ取り調べをきっちりとこちらが責任を持って行えばいいだけの話だ。
書類にさっと目を通して正式に承認印が押されているのを確認して、警備兵の詰め所へ向かった。
◆◆◆
警備兵を連れて西区の警備兵控え所へ向かったところ、魔術師のローブを着た青年が待っていた。
「おや、君か。スラフォード伯爵に裏帳簿探しでも頼まれたのかい?」
警備兵の一人が青年を見かけて声を掛けた。
「いや、新製品のテストを兼ねて友人とコバムアポスへ行ったら、そこの代官に脅迫まがいな無茶ぶり依頼を受けてね。
ちょっと行動と街にあった魔術の痕跡と伯爵の認識に齟齬があるようだったから、伯爵の親戚でもある友人がその点を伯爵に指摘したら代官が逃げたらしいんだよ。
自分は偶々用事があったから王都に来ていたら、その代官が全然似合わない怪しげなカツラを被って歩いているのを見かけたのでコバムアポスにまだ居る友人に伝えたんだ。そうしたら彼が伯爵に代官の居場所を教えて今回の逮捕劇に繋がったみたいだね」
肩をすくめながら魔術師が答える。
そんな彼とまだ話をしたげだったが、横で二人を見ているインクーザに気付いたのか警備兵が振り返って魔術師を紹介した。
「インクーザ殿、魔術学院のウィル・ダントール君です。何でも透視の術が使えるとかで、一昨年のダンガン家の三男が関与していた人身売買の事件でもの凄く助けになってくれたんですよ。
・・・というか、一昨年と言うことはもう卒業して一人前の魔術師か。ダントール君なんて呼べないね。
ダントール殿、こちらは審議官のインクーザ殿だ」
青年が簡易式会釈をインクーザにした。
「こんにちは、審議官殿。魔術師のウィル・ダントールです。今回も裏帳簿なり隠し財産なりがある可能性が高いでしょうから、隠し金庫探しには協力しますよ」
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