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卒業後
659 星暦556年 青の月 21日 空滑機改(4)
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「何その恰好!!?」
太った中年男性の体形を真似て重しを挟んだ腹巻モドキを胴体や尻周り、太ももに巻き付け、更に細長い皮をマフラーの様に首周りに巻いて足元も見ずらいような肥満体形モドキになって実物大の座席部分の模型の中へのそのそと入ろうとするシャルロを見て、ケレナが爆笑した。
「シャルロの姪っ子や甥っ子を連れて空滑機《グライダー》に乗れるように改造している所なんだが、肥満体形の富裕層でも乗れる様な物にしようと思ってね。
どんな構造だったら入って座れるか試しているところなんだ」
アレクが笑いをこらえながら説明する。
最初は、座高が高い人間が座っても頭が天井にぶつからないだけの高さと椅子を4つ置くだけの幅が必要だと考え、座る際の角度を直角に近くするかそれとも後ろに寄りかかる形にして座高そのものを低くして縦に長くする代わりに高さを削るのとどちらが良いかなどを色々と研究をしたのだ。
で、ある程度角度をつけて後ろに寄りかかる椅子の方が楽だし、座高が低くなって高さを削ることで正面からの空気抵抗を減らせる・・・と結論したところでふと、シャルロが『これって太った人でも席に着けるのかな?』と疑問を口にしたことでこの実験をやることになったのだ。
最悪、椅子まで這って進んで貰えばどんな体形だろうと席に着ける筈なのだが、流石に富裕層の下手をしたら貴族の人間に幾ら移動用の機体の中とは言え『下に手をついて這え』とは言えない。
しかも考えてみたらデブな成金ジジイだったら四つん這いの体勢から椅子の上まで体を持ち上げられない可能性が高い。
椅子から立ち上がる時ですら執事や下男に手伝わせる奴もいたのだ。
事業を拡張させて成功への道を邁進している最中程度の中年だったら椅子から立ち上がれないなんてことは無かったが、成功してリタイヤしたジジイになると娼婦なんかを呼んでやることはやる元気はある癖に(薬の手伝いが必要なのは多かったが)、身動きは殆ど取れず・・・椅子どころかベッドから立ち上がる時ですら手伝いが必要とする無様なジジイもいた。
機体の中での移動の手伝いだって従者なり執事なりにやらせればいいが、椅子まで這って行く構造だったら手伝いすら出来ない。
まあ、考えてみたら貴族に四つん這いになれなんて要求できる訳が無かった。
という事で、辛うじて中腰に歩いて席につける程度に余分の高さを機体に持たせることにしたのだが・・・俺たちが中腰で歩いて席につけるからと言って、肥満体のジジイが同じことが出来るかは不明だ。
という事で、シャルロに肥満体形を真似させて、俺たちが手伝えばちゃんと席まで辿り着いて座り、立ち上がって出てこれるかを試すことにしたのだ。
ケレナは何故かそのことを聞きつけてひょっこりと現れたのだが・・・。
脂肪代わりの重しと、足元も見えない自分の体形にふらふらしているシャルロを見て爆笑してしまった。
折角俺とアレクが我慢していたのに。
あんまり笑うなら、肥満の女性客のモデルをやって貰うぞ?
パディン夫人に頼む予定だったのだが、夫婦そろって肥満体形になってみるのも良いだろう。
きっと絶対に太らないでおこうと思う動機づけになるだろうし・・・ケレナにとっては妊娠した時の苦労の一部を体験できるかも知れない。
あまり大変すぎて子供なんぞ要らんなんてことになったら困るが。
でも、女性って意外と一人産んでも懲りずに二人目三人目と子供を産むみたいだから、肥満体形の苦労位だったら大丈夫なのかな?
「ちょっと!
笑ってないで助けてよ!」
よろよろと壁に手をつきながら機体まで辿り着き、ちょっと体を後ろにそらして中に入ろうとしたシャルロが・・・尻もちをついた。
「幾ら座る時に後ろに寄りかかるからって、機内を移動する際に後ろに体を逸らしてバランスを取るのば難しいだろ。歩く時は前屈みになる方が無難だと思うぞ?」
肥満体のジジイが後ろに体を逸らして歩ける程背筋があるとは思えないし、下手に尻もちつかれたら、補助ありでも立ち上がれない可能性もある。
本当にデブな人間は成人男性2人分ぐらいの体重があるのだ。
それを天井が低くて椅子が邪魔する狭い機内の中で立ち上がらせるのなんて、従者にとってもとんでもない苦行になってしまう。
「なんかさぁ。
これ、無理じゃ無いか?
入り口で椅子に座らせて、中に椅子ごと押し込む形にした方が良くない?
そうしたら高さは普通の体形の人が中腰で動ける程度にギリギリに出来るだろ?
椅子にあの台車用魔具で使った反発型結界を付ければ、とんでもないデブでも短時間なら浮かして動かせるだろ」
慣れぬ重みに動くこともおぼつかないシャルロを助けて何とか席に着かせ、更に機体から出て来るのを手伝って汗だくになった俺は、やっと外に出てきて背筋を伸ばしながら提案した。
ちょっとこれは大変すぎる。
椅子を動かせる形にしたら椅子をどけて荷物を積んで飛ぶことだってできるし。
はっきり言って、年取った肥満男性の身体能力の無さと傲慢さに対応していたらきりがないぜ。
【後書き】
椅子の固定に関してはかなりの工夫が必要そうですけどね。
飛んでる最中に、方向転換でもして機体が斜めになった際に椅子が倒れたりしたら大変な事のなりそうw
太った中年男性の体形を真似て重しを挟んだ腹巻モドキを胴体や尻周り、太ももに巻き付け、更に細長い皮をマフラーの様に首周りに巻いて足元も見ずらいような肥満体形モドキになって実物大の座席部分の模型の中へのそのそと入ろうとするシャルロを見て、ケレナが爆笑した。
「シャルロの姪っ子や甥っ子を連れて空滑機《グライダー》に乗れるように改造している所なんだが、肥満体形の富裕層でも乗れる様な物にしようと思ってね。
どんな構造だったら入って座れるか試しているところなんだ」
アレクが笑いをこらえながら説明する。
最初は、座高が高い人間が座っても頭が天井にぶつからないだけの高さと椅子を4つ置くだけの幅が必要だと考え、座る際の角度を直角に近くするかそれとも後ろに寄りかかる形にして座高そのものを低くして縦に長くする代わりに高さを削るのとどちらが良いかなどを色々と研究をしたのだ。
で、ある程度角度をつけて後ろに寄りかかる椅子の方が楽だし、座高が低くなって高さを削ることで正面からの空気抵抗を減らせる・・・と結論したところでふと、シャルロが『これって太った人でも席に着けるのかな?』と疑問を口にしたことでこの実験をやることになったのだ。
最悪、椅子まで這って進んで貰えばどんな体形だろうと席に着ける筈なのだが、流石に富裕層の下手をしたら貴族の人間に幾ら移動用の機体の中とは言え『下に手をついて這え』とは言えない。
しかも考えてみたらデブな成金ジジイだったら四つん這いの体勢から椅子の上まで体を持ち上げられない可能性が高い。
椅子から立ち上がる時ですら執事や下男に手伝わせる奴もいたのだ。
事業を拡張させて成功への道を邁進している最中程度の中年だったら椅子から立ち上がれないなんてことは無かったが、成功してリタイヤしたジジイになると娼婦なんかを呼んでやることはやる元気はある癖に(薬の手伝いが必要なのは多かったが)、身動きは殆ど取れず・・・椅子どころかベッドから立ち上がる時ですら手伝いが必要とする無様なジジイもいた。
機体の中での移動の手伝いだって従者なり執事なりにやらせればいいが、椅子まで這って行く構造だったら手伝いすら出来ない。
まあ、考えてみたら貴族に四つん這いになれなんて要求できる訳が無かった。
という事で、辛うじて中腰に歩いて席につける程度に余分の高さを機体に持たせることにしたのだが・・・俺たちが中腰で歩いて席につけるからと言って、肥満体のジジイが同じことが出来るかは不明だ。
という事で、シャルロに肥満体形を真似させて、俺たちが手伝えばちゃんと席まで辿り着いて座り、立ち上がって出てこれるかを試すことにしたのだ。
ケレナは何故かそのことを聞きつけてひょっこりと現れたのだが・・・。
脂肪代わりの重しと、足元も見えない自分の体形にふらふらしているシャルロを見て爆笑してしまった。
折角俺とアレクが我慢していたのに。
あんまり笑うなら、肥満の女性客のモデルをやって貰うぞ?
パディン夫人に頼む予定だったのだが、夫婦そろって肥満体形になってみるのも良いだろう。
きっと絶対に太らないでおこうと思う動機づけになるだろうし・・・ケレナにとっては妊娠した時の苦労の一部を体験できるかも知れない。
あまり大変すぎて子供なんぞ要らんなんてことになったら困るが。
でも、女性って意外と一人産んでも懲りずに二人目三人目と子供を産むみたいだから、肥満体形の苦労位だったら大丈夫なのかな?
「ちょっと!
笑ってないで助けてよ!」
よろよろと壁に手をつきながら機体まで辿り着き、ちょっと体を後ろにそらして中に入ろうとしたシャルロが・・・尻もちをついた。
「幾ら座る時に後ろに寄りかかるからって、機内を移動する際に後ろに体を逸らしてバランスを取るのば難しいだろ。歩く時は前屈みになる方が無難だと思うぞ?」
肥満体のジジイが後ろに体を逸らして歩ける程背筋があるとは思えないし、下手に尻もちつかれたら、補助ありでも立ち上がれない可能性もある。
本当にデブな人間は成人男性2人分ぐらいの体重があるのだ。
それを天井が低くて椅子が邪魔する狭い機内の中で立ち上がらせるのなんて、従者にとってもとんでもない苦行になってしまう。
「なんかさぁ。
これ、無理じゃ無いか?
入り口で椅子に座らせて、中に椅子ごと押し込む形にした方が良くない?
そうしたら高さは普通の体形の人が中腰で動ける程度にギリギリに出来るだろ?
椅子にあの台車用魔具で使った反発型結界を付ければ、とんでもないデブでも短時間なら浮かして動かせるだろ」
慣れぬ重みに動くこともおぼつかないシャルロを助けて何とか席に着かせ、更に機体から出て来るのを手伝って汗だくになった俺は、やっと外に出てきて背筋を伸ばしながら提案した。
ちょっとこれは大変すぎる。
椅子を動かせる形にしたら椅子をどけて荷物を積んで飛ぶことだってできるし。
はっきり言って、年取った肥満男性の身体能力の無さと傲慢さに対応していたらきりがないぜ。
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椅子の固定に関してはかなりの工夫が必要そうですけどね。
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