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卒業後
892 星暦557年 萌葱の月 15日 久しぶりに遠出(13)
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「結局、あの天井裏の空間はなんだったんだろうね?」
わうわう騒いでいるハラファをアルマに引き渡し、空滑機《グライダー》改に乗ってレディ・トレンティスの屋敷へ帰路につきながらシャルロが呟いた。
「微妙に不明だなぁ。
換気関連のをついでに洗濯物干し場か子供の遊び場か隠れ場として使っていたんじゃないのか?」
ハラファ達の発掘現場の方の天井裏空間も上の地上部に繋がる構造があったし。
やはり古すぎて埋まってはいたものの確実にあの丘の上まで続いていたようなので、換気か逃げ口かだと思う。
「あんな天井で、しかも縄梯子で登らなきゃいけないなんて構造だったら秘密の避難口としては向かないだろうから、換気関連の何かが主たる用途だったんじゃないかと思うな」
アレクが言った。
まあなぁ。
秘密の避難路だったらどっか適当に横か下へ掘って外へ出る経路を準備しておく方が良いだろう。
あんな縄梯子が必要だったら、うっかり最後の人間が急いでいて回収し損ねたりしたら一発でどこから出て行ったのか分かる。
「なんかああいうのが見つかると、遺跡の日常生活とかちょっとした歴史を書いた日記とか教科書とかガイドブックとかが転がってたら良いのに~って思う!
分からないのって本当にモヤモヤする~~~!!」
シャルロが体を伸ばしながら叫んだ。
「確かに。
まあそれでもあそこは色々と文書の残骸があるから、俺たちが死ぬ前ぐらいには分からなかった部分の謎も大分と解明できているんじゃないか?」
シェイラのフォレスタ文明みたいにほぼ全く文字ベースの資料がない遺跡よりはずっと状況解明の希望を持てるだろう。
勿論、色々解明できるだけの予算がもてばだけど。
「そう言えば、水除け結界の防風機能を果樹園で使う件に関してはどんな結果が出たんだ?」
アレクが遺跡の話を打ち切ってシャルロに尋ねる。
「あ~あれねぇ・・・。
果物の半分ぐらいが落ちちゃうぐらいのちょっとキツい強風程度だったら十分使う価値があるんだけど、全滅しちゃうような暴風だったらどの程度の間風が吹くかにもよるけど、めっちゃ魔石を消費しまくるから貴族直営の果樹園でも魔石の備蓄が尽きると思う」
シャルロがため息を吐きながら言った。
「う~ん・・・。
だがそんだけ暴風が吹き荒れるような嵐の場合、樹も折れたりしないか?
果樹園その物を守ると考えたら大量に魔石を使うことになっても黒字になりそうな気がするが」
嵐の後って木の枝がボキボキ折れているのを見かける。
果樹って意外と枝が細いから、中心部分の幹はまだしも実際に果物が成る枝が全部嵐で折れたりしたらかなり果樹園の経営にとっては問題そうな気がするが。
「黒字になろうが、魔石が無ければ使えないでしょ?
有事がいつになるのか分からないのにそれだけ大量の魔石を備蓄しておくだけの資金力があるのなんて、それこそ貴族でもおばあ様クラスの人になるからねぇ。
まあ、おばあ様ならお気に入りの葡萄を守るために魔具と魔石を確保するぐらいはするだろうけど、一般的には無理じゃないかなぁ?」
シャルロが答えた。
なるほど。
後払い出来るような話じゃないからな。
嵐が過ぎ去ってから、『魔石を確保しておいて結界で果樹園を保護した方が果樹園の再整備代より安かった』って分かっても、折れた枝も落ちた果物も戻らない。
「ちなみにどの程度の魔石を使うんだ?」
アレクが尋ねる。
「枝が折れちゃうぐらいの暴風雨だったら20ミル結界を展開するだけで大型魔石一つかな。
嵐って時折風が弱まるとしても半日から丸1日ぐらい暴風が吹き荒れることがあるからねぇ。
そう考えると必要な魔石量ってそれこそどこかの大きな防衛拠点の防御結界用の魔石消費量並みになるかも」
シャルロが答える。
ひえ~。
こないだパストン島で雷撃タイプの結界で襲撃者を撃退しようと話した時に、魔石の消費量とかどの程度だったら防衛拠点に備蓄できるかって話はしたけど・・・それを超えそうだな。
「嵐って凄いんだな・・・」
思わずと言った感じでアレクが呟く。
「そこまで行かない程度の強風でも熟れてきた果物だったら木から落ちちゃうらしいんで、時期によっては結界で保護する価値はあるんだけど、そこまで熟れてきたらちょっと味は落ちるけど早い目に収穫しちゃって倉庫で熟れさせるのも可能だからねぇ。
そう考えるとあまり果樹園用に水除け結界の防風機能を売り込むのは無理かも」
シャルロがため息を吐きながら言った。
「まあ、味が落ちるんだったらレディ・トレンティスがガーデンパーティ用の魔具を自分の果樹園に風が強くなりそうな時に使うってことで良いんじゃないか?
商業用に売り出すのは諦めよう」
美味しい果物を俺たちの魔具のお蔭で保護出来たら、ちょっとした贈り物みたいな感じで送ってくれるかもしれないし。
ちょくちょく果物の季節に魔具の整備の為にこっちに遊びに来ても良いかもな~。
【後書き】
台風クラスの嵐が年に一度ぐらい直撃する事もあるという感じの想定です。
海に浮かべるタイプの風力発電の記事を先日見ましたが、台風直撃の威力ってどのくらいなんでしょうね?
わうわう騒いでいるハラファをアルマに引き渡し、空滑機《グライダー》改に乗ってレディ・トレンティスの屋敷へ帰路につきながらシャルロが呟いた。
「微妙に不明だなぁ。
換気関連のをついでに洗濯物干し場か子供の遊び場か隠れ場として使っていたんじゃないのか?」
ハラファ達の発掘現場の方の天井裏空間も上の地上部に繋がる構造があったし。
やはり古すぎて埋まってはいたものの確実にあの丘の上まで続いていたようなので、換気か逃げ口かだと思う。
「あんな天井で、しかも縄梯子で登らなきゃいけないなんて構造だったら秘密の避難口としては向かないだろうから、換気関連の何かが主たる用途だったんじゃないかと思うな」
アレクが言った。
まあなぁ。
秘密の避難路だったらどっか適当に横か下へ掘って外へ出る経路を準備しておく方が良いだろう。
あんな縄梯子が必要だったら、うっかり最後の人間が急いでいて回収し損ねたりしたら一発でどこから出て行ったのか分かる。
「なんかああいうのが見つかると、遺跡の日常生活とかちょっとした歴史を書いた日記とか教科書とかガイドブックとかが転がってたら良いのに~って思う!
分からないのって本当にモヤモヤする~~~!!」
シャルロが体を伸ばしながら叫んだ。
「確かに。
まあそれでもあそこは色々と文書の残骸があるから、俺たちが死ぬ前ぐらいには分からなかった部分の謎も大分と解明できているんじゃないか?」
シェイラのフォレスタ文明みたいにほぼ全く文字ベースの資料がない遺跡よりはずっと状況解明の希望を持てるだろう。
勿論、色々解明できるだけの予算がもてばだけど。
「そう言えば、水除け結界の防風機能を果樹園で使う件に関してはどんな結果が出たんだ?」
アレクが遺跡の話を打ち切ってシャルロに尋ねる。
「あ~あれねぇ・・・。
果物の半分ぐらいが落ちちゃうぐらいのちょっとキツい強風程度だったら十分使う価値があるんだけど、全滅しちゃうような暴風だったらどの程度の間風が吹くかにもよるけど、めっちゃ魔石を消費しまくるから貴族直営の果樹園でも魔石の備蓄が尽きると思う」
シャルロがため息を吐きながら言った。
「う~ん・・・。
だがそんだけ暴風が吹き荒れるような嵐の場合、樹も折れたりしないか?
果樹園その物を守ると考えたら大量に魔石を使うことになっても黒字になりそうな気がするが」
嵐の後って木の枝がボキボキ折れているのを見かける。
果樹って意外と枝が細いから、中心部分の幹はまだしも実際に果物が成る枝が全部嵐で折れたりしたらかなり果樹園の経営にとっては問題そうな気がするが。
「黒字になろうが、魔石が無ければ使えないでしょ?
有事がいつになるのか分からないのにそれだけ大量の魔石を備蓄しておくだけの資金力があるのなんて、それこそ貴族でもおばあ様クラスの人になるからねぇ。
まあ、おばあ様ならお気に入りの葡萄を守るために魔具と魔石を確保するぐらいはするだろうけど、一般的には無理じゃないかなぁ?」
シャルロが答えた。
なるほど。
後払い出来るような話じゃないからな。
嵐が過ぎ去ってから、『魔石を確保しておいて結界で果樹園を保護した方が果樹園の再整備代より安かった』って分かっても、折れた枝も落ちた果物も戻らない。
「ちなみにどの程度の魔石を使うんだ?」
アレクが尋ねる。
「枝が折れちゃうぐらいの暴風雨だったら20ミル結界を展開するだけで大型魔石一つかな。
嵐って時折風が弱まるとしても半日から丸1日ぐらい暴風が吹き荒れることがあるからねぇ。
そう考えると必要な魔石量ってそれこそどこかの大きな防衛拠点の防御結界用の魔石消費量並みになるかも」
シャルロが答える。
ひえ~。
こないだパストン島で雷撃タイプの結界で襲撃者を撃退しようと話した時に、魔石の消費量とかどの程度だったら防衛拠点に備蓄できるかって話はしたけど・・・それを超えそうだな。
「嵐って凄いんだな・・・」
思わずと言った感じでアレクが呟く。
「そこまで行かない程度の強風でも熟れてきた果物だったら木から落ちちゃうらしいんで、時期によっては結界で保護する価値はあるんだけど、そこまで熟れてきたらちょっと味は落ちるけど早い目に収穫しちゃって倉庫で熟れさせるのも可能だからねぇ。
そう考えるとあまり果樹園用に水除け結界の防風機能を売り込むのは無理かも」
シャルロがため息を吐きながら言った。
「まあ、味が落ちるんだったらレディ・トレンティスがガーデンパーティ用の魔具を自分の果樹園に風が強くなりそうな時に使うってことで良いんじゃないか?
商業用に売り出すのは諦めよう」
美味しい果物を俺たちの魔具のお蔭で保護出来たら、ちょっとした贈り物みたいな感じで送ってくれるかもしれないし。
ちょくちょく果物の季節に魔具の整備の為にこっちに遊びに来ても良いかもな~。
【後書き】
台風クラスの嵐が年に一度ぐらい直撃する事もあるという感じの想定です。
海に浮かべるタイプの風力発電の記事を先日見ましたが、台風直撃の威力ってどのくらいなんでしょうね?
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