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卒業後
1062 星暦558年 紫の月 23日 音にも色々あり(25)
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「まずは廊下側の扉を開けて、送風機を動かして窓を開けて試そう」
窓を開けて風が通る状況と言う設定のテストなのだが、庭側の窓だけを開けても大して風は通らない。
なので暑くて空気を通すために窓を開ける時は、いつも廊下の扉を開けることにしているのだ。
今日は風もあまりないので送風機も使う方がいいだろうが。
今後は冷風機があるから無理に窓を開けて風を通す必要はなくなるかも?でも、換気の為にも時折窓と扉を開けて空気を通す方が良いかな。
とは言え、風を通すと埃も部屋の中に入るのでちょっと微妙だが。
「取り敢えず、送風機無し、ありで弱風、強風とで試してみよう。
考えてみたら強風の時には窓を開けない気もするが」
アレクが黒板に条件を書き出していく。
食事処で強風の時に窓を開けたら折角の料理に埃が混じるかも知れないし、会議室だって書類が風に飛ばされて外に飛んで行ったりしたら悲惨だ。
そう考えると強風時に窓を開けるのは愚行だよなぁ。
とは言え、少しだけ窓を開けて涼もうとする可能性はあるから試してはみる方が良いだろうが。
実際の風と送風機とでは空気の動きがちょっと違うが、まあそこはしょうがない。
そこまで完璧な環境の再現は俺たちには無理だ。
「じゃあ、いくよ~!
まずは送風機なしね」
シャルロが声を掛け、盗聴防止用魔具を起動させたのが魔力の動きで視える。
今朝の新聞をシャルロが机の所で読み上げているのが微かに聞こえるが、何を言っているのかは全然分からない。
「うむ。
全然分からんな」
アレクが満足そうに言った。
「だな。
お、送風機を動かした」
魔力の流れで送風機のスイッチが入ったのが視える。
これって俺が中で当番の時は送風機を動かしたって知らせるために一度盗聴防止用魔具を切って言った方が良いかな?
集中していればシャルロやアレクでも魔力の動きで分かる筈ではあるが、雑談していたら気付かない可能性もある。
そんでもって、送風機を微風で動かしている分には聞こえてくる音にほぼ違いは無かった。
「風は盗聴防止用魔具に影響ないのか?
音って空気を伝わるから風によって空気が通常よりも動くと結界での反射効率も変わるかと思ったんだが」
「まあ、印象だからな。
微細な違いだったら我々には分からないんじゃないか?
それこそ音楽を鳴らしているのをキルスあたりに確認させたら極僅かな違いでも分かるのかも?」
アレクが肩を竦めながら言った。
「まあ、何を言っているのか分からなければ微細な違いなんぞどうでも良いから、気にしなくてもいいだろ。
お、強風にした。
・・・少し聞こえてくる音が大きくなったか?」
多少漏れ聞こえてくるシャルロの声が大きくなった気がする。
とは言え、はっきりとはなっていないので何を読み上げているかは相変わらず分からないが。
もっと集中したらどれかの単語を聞き取れるのだろうか?
こういう聞き分けが上手なのってどういう職業の人間なのだろうか?
まあ、ある意味ウォレン爺の方でも盗み聞きの専門家がそこら辺の確認作業はしているだろうから、あまり気にする必要は無いかな?
「・・・何を言っているかは分からないから、まあ良いだろう。
これだったら楽器の練習中でも多少の風を通す様に窓を開けるのも大丈夫そうだとキルスに言っておくか。
とは言え、がっつり涼しくなる程風を吹かせると洩れる音が大きくなるだろうが」
アレクが工房の方へ行き、外扉から入って行きながら言った。
「それなりなサイズの部屋とは言え、沢山の人間が集まって息をガンガン吹きまくったり腕を動かしたりしているんだから、ちょっとやそっとの風じゃあ涼しくならないだろ、あれ。
冷風機を使う方が現実的だから、そのうちパトロンに強請れば?と提案するのが一番現実的じゃないか?」
音楽家というのは役者と同じで一握りの成功者以外はピーピーだからなぁ。
冷風機なんて言う贅沢品扱いな魔具を入手するのは難しいだろう。
パトロンに買ってもらっても生活費の為に売り払りかねないのは遺跡発掘隊の学者バカたちと同じだ。
そんなことを考えつつ、3人とパディン夫人にも参加してもらって交代しながら新聞を読み上げたが、取り敢えずどんな状況でも読み上げている内容が分かることは無かった。
「じゃあ、次は冷風機ね~」
シャルロが言いながら窓を閉める。
今度は盗聴防止用魔具の範囲を狭めて工房内に残った状態で結界の外にいて、窓を閉めて使った冷風機がどの程度聞こえる音に影響を与えるかの確認だ。
「あら。
涼しいですね」
盗聴防止用魔具の結界を越えてこちらに届いてきた冷風にパディン夫人が驚いたような声をあげた。
あれ?
去年造った時に家の中で使用テストしなかったっけ?
「台所とか他の場所で暑くなったら使って良いから、暑くなったら言ってくれ。
工房に幾つか試作品が置いてある」
家のすべての部屋に設置できるだけの数はないので随時必要になった部屋で使う予定だが、ある意味台所で火を使うパディン夫人が一番必要だろう。
台所用はあそこに常時置いておく方がいいかも?
少なくとも、もう少しして暑くなってきたらそうした方が良いかも知れない。
まあ、オーブンの温度が下がるのは好ましくないって事で場合によっては使わないかもだが。
「冷風機の設置方向にもよるんだろうが、強風じゃない筈なのに送風機で強風にした時ぐらいに音が漏れている感じだな」
アレクが少し首を傾げながら言った。
確かに、漏れ出ている音が少し大きいかも?
何を言っているかは相変わらず分からないので問題は無いが。
でも、そうなると楽団の練習時に冷風機を使うのはちょっと問題ありなのかも知れないな。
なんだって普通の風よりも冷風機の方が音の漏れが大きくなるのか、不思議だ。
風の温度とかが影響するのかね?
まあ、どちらにせよ。
取り敢えず冷風機を使っても盗聴防止の機能は果たしているようだから、大丈夫そうだ。
明日にでも賄いを貰いながらゼナに報告しよう。
窓を開けて風が通る状況と言う設定のテストなのだが、庭側の窓だけを開けても大して風は通らない。
なので暑くて空気を通すために窓を開ける時は、いつも廊下の扉を開けることにしているのだ。
今日は風もあまりないので送風機も使う方がいいだろうが。
今後は冷風機があるから無理に窓を開けて風を通す必要はなくなるかも?でも、換気の為にも時折窓と扉を開けて空気を通す方が良いかな。
とは言え、風を通すと埃も部屋の中に入るのでちょっと微妙だが。
「取り敢えず、送風機無し、ありで弱風、強風とで試してみよう。
考えてみたら強風の時には窓を開けない気もするが」
アレクが黒板に条件を書き出していく。
食事処で強風の時に窓を開けたら折角の料理に埃が混じるかも知れないし、会議室だって書類が風に飛ばされて外に飛んで行ったりしたら悲惨だ。
そう考えると強風時に窓を開けるのは愚行だよなぁ。
とは言え、少しだけ窓を開けて涼もうとする可能性はあるから試してはみる方が良いだろうが。
実際の風と送風機とでは空気の動きがちょっと違うが、まあそこはしょうがない。
そこまで完璧な環境の再現は俺たちには無理だ。
「じゃあ、いくよ~!
まずは送風機なしね」
シャルロが声を掛け、盗聴防止用魔具を起動させたのが魔力の動きで視える。
今朝の新聞をシャルロが机の所で読み上げているのが微かに聞こえるが、何を言っているのかは全然分からない。
「うむ。
全然分からんな」
アレクが満足そうに言った。
「だな。
お、送風機を動かした」
魔力の流れで送風機のスイッチが入ったのが視える。
これって俺が中で当番の時は送風機を動かしたって知らせるために一度盗聴防止用魔具を切って言った方が良いかな?
集中していればシャルロやアレクでも魔力の動きで分かる筈ではあるが、雑談していたら気付かない可能性もある。
そんでもって、送風機を微風で動かしている分には聞こえてくる音にほぼ違いは無かった。
「風は盗聴防止用魔具に影響ないのか?
音って空気を伝わるから風によって空気が通常よりも動くと結界での反射効率も変わるかと思ったんだが」
「まあ、印象だからな。
微細な違いだったら我々には分からないんじゃないか?
それこそ音楽を鳴らしているのをキルスあたりに確認させたら極僅かな違いでも分かるのかも?」
アレクが肩を竦めながら言った。
「まあ、何を言っているのか分からなければ微細な違いなんぞどうでも良いから、気にしなくてもいいだろ。
お、強風にした。
・・・少し聞こえてくる音が大きくなったか?」
多少漏れ聞こえてくるシャルロの声が大きくなった気がする。
とは言え、はっきりとはなっていないので何を読み上げているかは相変わらず分からないが。
もっと集中したらどれかの単語を聞き取れるのだろうか?
こういう聞き分けが上手なのってどういう職業の人間なのだろうか?
まあ、ある意味ウォレン爺の方でも盗み聞きの専門家がそこら辺の確認作業はしているだろうから、あまり気にする必要は無いかな?
「・・・何を言っているかは分からないから、まあ良いだろう。
これだったら楽器の練習中でも多少の風を通す様に窓を開けるのも大丈夫そうだとキルスに言っておくか。
とは言え、がっつり涼しくなる程風を吹かせると洩れる音が大きくなるだろうが」
アレクが工房の方へ行き、外扉から入って行きながら言った。
「それなりなサイズの部屋とは言え、沢山の人間が集まって息をガンガン吹きまくったり腕を動かしたりしているんだから、ちょっとやそっとの風じゃあ涼しくならないだろ、あれ。
冷風機を使う方が現実的だから、そのうちパトロンに強請れば?と提案するのが一番現実的じゃないか?」
音楽家というのは役者と同じで一握りの成功者以外はピーピーだからなぁ。
冷風機なんて言う贅沢品扱いな魔具を入手するのは難しいだろう。
パトロンに買ってもらっても生活費の為に売り払りかねないのは遺跡発掘隊の学者バカたちと同じだ。
そんなことを考えつつ、3人とパディン夫人にも参加してもらって交代しながら新聞を読み上げたが、取り敢えずどんな状況でも読み上げている内容が分かることは無かった。
「じゃあ、次は冷風機ね~」
シャルロが言いながら窓を閉める。
今度は盗聴防止用魔具の範囲を狭めて工房内に残った状態で結界の外にいて、窓を閉めて使った冷風機がどの程度聞こえる音に影響を与えるかの確認だ。
「あら。
涼しいですね」
盗聴防止用魔具の結界を越えてこちらに届いてきた冷風にパディン夫人が驚いたような声をあげた。
あれ?
去年造った時に家の中で使用テストしなかったっけ?
「台所とか他の場所で暑くなったら使って良いから、暑くなったら言ってくれ。
工房に幾つか試作品が置いてある」
家のすべての部屋に設置できるだけの数はないので随時必要になった部屋で使う予定だが、ある意味台所で火を使うパディン夫人が一番必要だろう。
台所用はあそこに常時置いておく方がいいかも?
少なくとも、もう少しして暑くなってきたらそうした方が良いかも知れない。
まあ、オーブンの温度が下がるのは好ましくないって事で場合によっては使わないかもだが。
「冷風機の設置方向にもよるんだろうが、強風じゃない筈なのに送風機で強風にした時ぐらいに音が漏れている感じだな」
アレクが少し首を傾げながら言った。
確かに、漏れ出ている音が少し大きいかも?
何を言っているかは相変わらず分からないので問題は無いが。
でも、そうなると楽団の練習時に冷風機を使うのはちょっと問題ありなのかも知れないな。
なんだって普通の風よりも冷風機の方が音の漏れが大きくなるのか、不思議だ。
風の温度とかが影響するのかね?
まあ、どちらにせよ。
取り敢えず冷風機を使っても盗聴防止の機能は果たしているようだから、大丈夫そうだ。
明日にでも賄いを貰いながらゼナに報告しよう。
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