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卒業後
1085 星暦558年 紺の月 16日 裏社会からの依頼(8)
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ゼルパッグ伯爵と家令のやり取りを聞いていると、はっきり言って『伯爵』と言うのは伯爵家の長男に生まれればどんな馬鹿でもなれる職業のように思えてきた。
いや。
長期的にはそれじゃあ駄目だから、金がなくなってヤバい副業に手を出す羽目になったのか。
とは言え、そこそこの年数はそれなりに贅沢な暮らしをやって来れたみたいだから、国がちゃんと違法行為を取り締まらなければ馬鹿でも法を無視する蛮勇があれば貴族として贅沢な暮らしを出来るってことなようだ。
そう考えると、国がちゃんと機能するって言うのは重要と言えば重要なのか。
国なんぞあっても無くてもあまり変わりはないと思っていたが、確かに東大陸のように浮浪児を道端から攫ってヤバい毒や呪具の実験体に使う様な社会は弱者にとって危険すぎる。
そこまで露骨でなくても、危険な暗殺に使えるような薬や人身売買に手を出すような貴族をちゃんと取り締まってくれるなら国と王族の存在意義もあるってもんなんだな。
王太子しか見ていないが、この国の王族って能天気なアホなんじゃないかと思っていたが、少なくとも違法行為を取り締まるよう部下に求めているだけ、マシな方なんだろう。
今は既に無いガルカ王国は国王が自分の都合が悪い人間を暗殺するような国だったと聞いたし、ザルガ共和国は金で委員会の票を買えば殆どの無理が通ってしまうらしいし。
東大陸は都市国家ってことで『国王』って名称じゃないがトップが居て統治している筈なのにあの様子だから、人間が集まって社会を構成するとお山の大将が絶対に出て来るが、そのトップがまともな人間であるか否かはその地域の人間にとっては運次第って感じなんだな。
まあ、折角真面な国に生まれたのだ。
それを乱すような奴にはさっさと退場して貰おう。
退屈しながら理不尽なゼルパッグ伯爵の命令を片耳で聞いていたら、太陽がそれなりに傾いてきた頃になってやっと話が違法な副業の方に辿り着いた。
なんか伯爵は馬鹿なのか、以前から話し合っているであろう内容でも毎回説明される必要があるっぽくてこちらには話が分かりやすいが時間がやたらと掛かるんだよなぁ。
仕え甲斐のない上司で、家令も可哀想に。
それはさておき。
違法行為に関して指示しているのを記録しておく為、魔具を起動させる。
「年明けに潰されたルートの代わりに、ダッチャス経由での密輸が確立できそうということです。
ただ、王都まで持ち込むのが危険なのであちらで買い取って欲しいと船長が言っているとの事です」
家令が何やら書類(手紙?)を見ながらゼルパッグ伯爵に報告する。
「ふん!
まあ、最近は王都に入る際の貨物の確認も煩くなったからな。
抜き打ち検査に引っ掛かっても面倒だから、ダッチャスで購入して直接地方都市に売りつけよう」
ゼルパッグ伯爵が鼻を鳴らしながら応じる。
「どちらの都市に売りますか?」
家令が尋ねている。
「ファルータの領都で良いだろう。
最近は新公爵が色々と私財を使って領民の為の政策を行わせているとかで、景気がいいと聞く」
不機嫌そうにゼルパッグ伯爵が命じる。
私財を領民の為に使うという行為が気に入らないのかね?
それともそんなことをする私財がある公爵家の豊かさが妬ましいのか。
「承知しました、伝えておきます。
次に、ケルパッサからの職人が入国しました。
契約履行が決まっている案件はありますか?」
家令がおずおずと尋ねる。
『職人』、ねぇ。
暗殺者ってことなんだろうな、ケルパッサからなら。
これって態と暗殺に取り掛からせて死ぬ前に止めることで現行犯で捕まえられるのかね?
それとも複合毒って一度でも毒を食らったらもう助からないタイプなのだろうか。
流石に証拠をつかむためにのんびりしている間に誰かが死んだら後味が悪いから、急いだほうが良いかも知れない。
「ウォレン・ガズラートが死ねば良いのにという話が何人からか来ている。
丁度いいからそれらを契約して履行することにしよう。
あの物怪ジジイを殺せば我々に名と信用度も一気に広がる」
楽し気にくつくつと笑いながらゼルパッグ伯爵が言った。
ええ???
ガズラートってウォレン爺の姓だよな??
あの爺さん、やっぱり色々と裏で情報機関を操ってるのがバレてんじゃん。
しかも物怪ジジイって・・・。
「複数の依頼人ということは、成功してから費用の請求をするのでしょうか?」
家令がちょっと首を傾げながら尋ねる。
「まさか!
先に金を受け取っておかねば、そいつの依頼でやったという証拠にならないだろう。
今晩クラブで話を纏めて来るから、あの老人の行動範囲を調べさせておけ」
ゼルパッグ伯爵が家令に命じた。
・・・考えてみたら、そう言う情報ってどこから入手するんだろ?
盗賊《シーフ》ギルドから情報を買えるとも思わないが。
貴族には貴族の伝手って言うのがあるのかな?
取り敢えず。
ウォレン爺がどう対処するのか興味があるところだが・・・流石に死んだら困るから、さっさと話しを持って行くか。
いや。
長期的にはそれじゃあ駄目だから、金がなくなってヤバい副業に手を出す羽目になったのか。
とは言え、そこそこの年数はそれなりに贅沢な暮らしをやって来れたみたいだから、国がちゃんと違法行為を取り締まらなければ馬鹿でも法を無視する蛮勇があれば貴族として贅沢な暮らしを出来るってことなようだ。
そう考えると、国がちゃんと機能するって言うのは重要と言えば重要なのか。
国なんぞあっても無くてもあまり変わりはないと思っていたが、確かに東大陸のように浮浪児を道端から攫ってヤバい毒や呪具の実験体に使う様な社会は弱者にとって危険すぎる。
そこまで露骨でなくても、危険な暗殺に使えるような薬や人身売買に手を出すような貴族をちゃんと取り締まってくれるなら国と王族の存在意義もあるってもんなんだな。
王太子しか見ていないが、この国の王族って能天気なアホなんじゃないかと思っていたが、少なくとも違法行為を取り締まるよう部下に求めているだけ、マシな方なんだろう。
今は既に無いガルカ王国は国王が自分の都合が悪い人間を暗殺するような国だったと聞いたし、ザルガ共和国は金で委員会の票を買えば殆どの無理が通ってしまうらしいし。
東大陸は都市国家ってことで『国王』って名称じゃないがトップが居て統治している筈なのにあの様子だから、人間が集まって社会を構成するとお山の大将が絶対に出て来るが、そのトップがまともな人間であるか否かはその地域の人間にとっては運次第って感じなんだな。
まあ、折角真面な国に生まれたのだ。
それを乱すような奴にはさっさと退場して貰おう。
退屈しながら理不尽なゼルパッグ伯爵の命令を片耳で聞いていたら、太陽がそれなりに傾いてきた頃になってやっと話が違法な副業の方に辿り着いた。
なんか伯爵は馬鹿なのか、以前から話し合っているであろう内容でも毎回説明される必要があるっぽくてこちらには話が分かりやすいが時間がやたらと掛かるんだよなぁ。
仕え甲斐のない上司で、家令も可哀想に。
それはさておき。
違法行為に関して指示しているのを記録しておく為、魔具を起動させる。
「年明けに潰されたルートの代わりに、ダッチャス経由での密輸が確立できそうということです。
ただ、王都まで持ち込むのが危険なのであちらで買い取って欲しいと船長が言っているとの事です」
家令が何やら書類(手紙?)を見ながらゼルパッグ伯爵に報告する。
「ふん!
まあ、最近は王都に入る際の貨物の確認も煩くなったからな。
抜き打ち検査に引っ掛かっても面倒だから、ダッチャスで購入して直接地方都市に売りつけよう」
ゼルパッグ伯爵が鼻を鳴らしながら応じる。
「どちらの都市に売りますか?」
家令が尋ねている。
「ファルータの領都で良いだろう。
最近は新公爵が色々と私財を使って領民の為の政策を行わせているとかで、景気がいいと聞く」
不機嫌そうにゼルパッグ伯爵が命じる。
私財を領民の為に使うという行為が気に入らないのかね?
それともそんなことをする私財がある公爵家の豊かさが妬ましいのか。
「承知しました、伝えておきます。
次に、ケルパッサからの職人が入国しました。
契約履行が決まっている案件はありますか?」
家令がおずおずと尋ねる。
『職人』、ねぇ。
暗殺者ってことなんだろうな、ケルパッサからなら。
これって態と暗殺に取り掛からせて死ぬ前に止めることで現行犯で捕まえられるのかね?
それとも複合毒って一度でも毒を食らったらもう助からないタイプなのだろうか。
流石に証拠をつかむためにのんびりしている間に誰かが死んだら後味が悪いから、急いだほうが良いかも知れない。
「ウォレン・ガズラートが死ねば良いのにという話が何人からか来ている。
丁度いいからそれらを契約して履行することにしよう。
あの物怪ジジイを殺せば我々に名と信用度も一気に広がる」
楽し気にくつくつと笑いながらゼルパッグ伯爵が言った。
ええ???
ガズラートってウォレン爺の姓だよな??
あの爺さん、やっぱり色々と裏で情報機関を操ってるのがバレてんじゃん。
しかも物怪ジジイって・・・。
「複数の依頼人ということは、成功してから費用の請求をするのでしょうか?」
家令がちょっと首を傾げながら尋ねる。
「まさか!
先に金を受け取っておかねば、そいつの依頼でやったという証拠にならないだろう。
今晩クラブで話を纏めて来るから、あの老人の行動範囲を調べさせておけ」
ゼルパッグ伯爵が家令に命じた。
・・・考えてみたら、そう言う情報ってどこから入手するんだろ?
盗賊《シーフ》ギルドから情報を買えるとも思わないが。
貴族には貴族の伝手って言うのがあるのかな?
取り敢えず。
ウォレン爺がどう対処するのか興味があるところだが・・・流石に死んだら困るから、さっさと話しを持って行くか。
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