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卒業後
1095 星暦558年 紺の月 19日 裏社会からの依頼(18)
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馬鹿が安易に妖怪爺の暗殺に手を出そうとしてくれたお蔭で、暗殺《アサッシン》ギルドからの依頼は想定以上に早く、そして徹底して騎士団が捜査してくれることになった。
既に昨日の時点で依頼はほぼ終わり、盗賊《シーフ》ギルドの長も俺の役割は十分果たせたと言ってくれた。
もしかしたら十分な証拠が見つからなくて当局側では証拠不十分と言うことで未起訴で解放されるかもと思っていたペディアグナ子爵も、愛人の見事な記録のお蔭で無事他の二人と同じ末路を辿る事になりそうらしい。
ちなみに、ゲッカ曰くあの愛人を情報部の方で雇おうという話もあったらしいが、そちらは本人に断られたそうだ。
やっと生臭い破落戸紛いな領主兼パトロンと縁が切れるのに、そう言うのにハニトラを仕掛けるような感じで情報収集をやることを求められるような情報部に入るのなんて絶対に嫌だとはっきり言われたと笑っていた。
なので朝食後のお茶をノンビリ飲みながらふと思い立ったことを提案しようかとアレクに尋ねた。
「なあ、俺たちの事業って書類仕事は増えているのか?」
「そう言えば、僕たちの事業って始めてからもう6年も経ってるんだよね~。収入は増えて来たし僕がここから出ただけで、ずっと同じ人員で同じような感じにやって来たけど・・・もしかしてアレクの負担が増えたりしてる?」
シャルロがクッキーを手に取ろうとしていた動きを止めて、首を傾げながら付け足した。
そうなんだよなぁ。
俺やシャルロのやることは大して変わっていない。
まあ、シャルロは結婚したから私生活はちょっと忙しく・・・というかやるべきことが増えたかも知れないが。
俺もシェイラに逢いに行くことが増えたからちょっと私生活は忙しくなったかも?と言えなくもないが、仕事に費やす時間はほぼ変わっていない。
が、収入はこの6年間で確実に増えている。
となると、それに伴う書類仕事も増えているのではないか?
そして書類が増えているのに俺たちの負担が増加していないとしたら・・・とばっちりを食っているのはアレクと言うことになる。
「まあ、多少は増えてはいるが・・・過去の開発品からの特許収入は極端には書類が増える訳ではないから、常にきちんと書類を適時作成して整理しておけばそれ程負担にはならないぞ?」
アレクが肩を竦めながら言った。
あ~。
アレクだからねぇ。
ある意味、これが以前借金漬けになっていたイリスターナやタニーシャみたいにいい加減にやっていたら今頃泥沼だったんだろうなぁ。
それはさておき。
「ちょっとここ数日やっていた頼まれごとで知り合った女性が、すんげえ情報を整理するのが上手いっぽいんだよね。
やっていたことは領主に手籠めされて愛人にされた後、そいつの悪事の自慢話を毎日の日記として記録に取っていただけなんだけど、それでその領主の逮捕と起訴にかなり貢献したらしいんだ。
本人はもう愛人業は止めるつもりだって言っているし、その腕前が気に入った情報部の人間からの勧誘も断ったみたいんだけど、そう言うタイプって秘書みたいな仕事に向いてそうじゃないか?」
ある意味、アレクとの相性も良いかも?と思わんでもないが、流石に幾ら本人に選択肢が無かったとはいえ破落戸貴族の愛人をしていた田舎娘をシェフィート商会の息子とそう言う意味で紹介するのは無理があるだろう。
それよりも、アレクの書類作業負担を減らせるなら一人ぐらい人を雇っても良いかも?と思ったのだ。
「ふうん?
だが、日記をつけるのと事業の秘書や事務職員の仕事とは大分と違うぞ?」
アレクはちょっと興味を引かれた様だったが、微妙に拒否っぽい答えを返してきた。
問題外と断らなかったということは、やっぱそれなりに負担は増えていると感じているのかな?
「なんかさぁ、その貴族から贈られた宝石とか装飾品は直ぐに売り払って安い偽物と取り換え、渡された金も全部銀行に預けて月締めで必要最低限な生活費をきっちり払って残りは投資してって感じで色々と凄いきっちりした感じだったんだ」
シェイラ程投資の才能がある訳じゃあないが、それなりに現実路線で金をきっちり管理している感じ?
それでも無駄に贅沢な宝石とかをパトロンから強請った訳ではないようなので、強欲って程ではないみたいだから悪くないんじゃないかね?
秘書とか事務職員ってどこで雇うのか知らんけど、下手に商業ギルドとかに紹介を頼むよりは紐が付いていなくて安心そうだし。
「へぇぇ、愛人ってそう言うことするんだ?」
シャルロが興味深げに聞いてきた。
「いや、普通はしないから。
だからお金にきちっとしたタイプは珍しいな~と思って、もしも俺たちの事業に関係する書類作業が増えているんだったら雇っても良いかも?と思ってね」
アレクが根を上げて俺たちに手伝えと言われた時になって探しても、直ぐにいい人材が見つかるとは限らない。
だったら有望そうな人間を見つけた時点で確保しておくのも手だろう。
「ふむ。
愛人をやっていた人物がここに定期的に出入りすることをシェイラが嫌がらないなら、面談した後に暫く試用期間を置いて様子を見てみても良いかも知れないな」
クッキーを手に取りながらアレクが言った。
おっと。
シェイラに相談した方が良いのか。
明日にでも聞いておこう。
既に昨日の時点で依頼はほぼ終わり、盗賊《シーフ》ギルドの長も俺の役割は十分果たせたと言ってくれた。
もしかしたら十分な証拠が見つからなくて当局側では証拠不十分と言うことで未起訴で解放されるかもと思っていたペディアグナ子爵も、愛人の見事な記録のお蔭で無事他の二人と同じ末路を辿る事になりそうらしい。
ちなみに、ゲッカ曰くあの愛人を情報部の方で雇おうという話もあったらしいが、そちらは本人に断られたそうだ。
やっと生臭い破落戸紛いな領主兼パトロンと縁が切れるのに、そう言うのにハニトラを仕掛けるような感じで情報収集をやることを求められるような情報部に入るのなんて絶対に嫌だとはっきり言われたと笑っていた。
なので朝食後のお茶をノンビリ飲みながらふと思い立ったことを提案しようかとアレクに尋ねた。
「なあ、俺たちの事業って書類仕事は増えているのか?」
「そう言えば、僕たちの事業って始めてからもう6年も経ってるんだよね~。収入は増えて来たし僕がここから出ただけで、ずっと同じ人員で同じような感じにやって来たけど・・・もしかしてアレクの負担が増えたりしてる?」
シャルロがクッキーを手に取ろうとしていた動きを止めて、首を傾げながら付け足した。
そうなんだよなぁ。
俺やシャルロのやることは大して変わっていない。
まあ、シャルロは結婚したから私生活はちょっと忙しく・・・というかやるべきことが増えたかも知れないが。
俺もシェイラに逢いに行くことが増えたからちょっと私生活は忙しくなったかも?と言えなくもないが、仕事に費やす時間はほぼ変わっていない。
が、収入はこの6年間で確実に増えている。
となると、それに伴う書類仕事も増えているのではないか?
そして書類が増えているのに俺たちの負担が増加していないとしたら・・・とばっちりを食っているのはアレクと言うことになる。
「まあ、多少は増えてはいるが・・・過去の開発品からの特許収入は極端には書類が増える訳ではないから、常にきちんと書類を適時作成して整理しておけばそれ程負担にはならないぞ?」
アレクが肩を竦めながら言った。
あ~。
アレクだからねぇ。
ある意味、これが以前借金漬けになっていたイリスターナやタニーシャみたいにいい加減にやっていたら今頃泥沼だったんだろうなぁ。
それはさておき。
「ちょっとここ数日やっていた頼まれごとで知り合った女性が、すんげえ情報を整理するのが上手いっぽいんだよね。
やっていたことは領主に手籠めされて愛人にされた後、そいつの悪事の自慢話を毎日の日記として記録に取っていただけなんだけど、それでその領主の逮捕と起訴にかなり貢献したらしいんだ。
本人はもう愛人業は止めるつもりだって言っているし、その腕前が気に入った情報部の人間からの勧誘も断ったみたいんだけど、そう言うタイプって秘書みたいな仕事に向いてそうじゃないか?」
ある意味、アレクとの相性も良いかも?と思わんでもないが、流石に幾ら本人に選択肢が無かったとはいえ破落戸貴族の愛人をしていた田舎娘をシェフィート商会の息子とそう言う意味で紹介するのは無理があるだろう。
それよりも、アレクの書類作業負担を減らせるなら一人ぐらい人を雇っても良いかも?と思ったのだ。
「ふうん?
だが、日記をつけるのと事業の秘書や事務職員の仕事とは大分と違うぞ?」
アレクはちょっと興味を引かれた様だったが、微妙に拒否っぽい答えを返してきた。
問題外と断らなかったということは、やっぱそれなりに負担は増えていると感じているのかな?
「なんかさぁ、その貴族から贈られた宝石とか装飾品は直ぐに売り払って安い偽物と取り換え、渡された金も全部銀行に預けて月締めで必要最低限な生活費をきっちり払って残りは投資してって感じで色々と凄いきっちりした感じだったんだ」
シェイラ程投資の才能がある訳じゃあないが、それなりに現実路線で金をきっちり管理している感じ?
それでも無駄に贅沢な宝石とかをパトロンから強請った訳ではないようなので、強欲って程ではないみたいだから悪くないんじゃないかね?
秘書とか事務職員ってどこで雇うのか知らんけど、下手に商業ギルドとかに紹介を頼むよりは紐が付いていなくて安心そうだし。
「へぇぇ、愛人ってそう言うことするんだ?」
シャルロが興味深げに聞いてきた。
「いや、普通はしないから。
だからお金にきちっとしたタイプは珍しいな~と思って、もしも俺たちの事業に関係する書類作業が増えているんだったら雇っても良いかも?と思ってね」
アレクが根を上げて俺たちに手伝えと言われた時になって探しても、直ぐにいい人材が見つかるとは限らない。
だったら有望そうな人間を見つけた時点で確保しておくのも手だろう。
「ふむ。
愛人をやっていた人物がここに定期的に出入りすることをシェイラが嫌がらないなら、面談した後に暫く試用期間を置いて様子を見てみても良いかも知れないな」
クッキーを手に取りながらアレクが言った。
おっと。
シェイラに相談した方が良いのか。
明日にでも聞いておこう。
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