1,098 / 1,309
卒業後
1097 星暦558年 紺の月 21日 創水の魔術回路
しおりを挟む
「シェイラはキーナの事、何か言ってた~?」
シャルロが朝のお茶を淹れながら悪戯っぽく聞いてきた。
「俺たちの事業の事務作業を任せる女性がアレクと付き合うようになるなら、今まで以上にシャルロと俺たちが頑張って書類作業の確認をしろってさ」
ちょっとシャルロが『期待外れだ~』という顔をしたが、俺とシェイラに色っぽい男と女の争いごととかを求めること自体が間違っていると思うぞ?
「確かにそうだな。
我々が雇っている人間と私が付き合う事なんかはまずないが。
もしも付き合いたいと思うような人柄でどうしてもと思いが募ったら、工房の事務職員として別の人を代わりに雇ってから私とは直接関係ない所に仕事を変えて貰ってから付き合うよ。
そうじゃないと下手をしたらウィルが言っていたクソッタレ領主と同じようなことを意図せずに強要する羽目になりかねないだろう」
アレクが眉を顰めながら口を挟んだ。
・・・そっか。
職場の上司って考えてみたら関係を強要されたら断りにくいよな。
もっと大きな職場だったら他の職員の伝手でこっそり別の仕事を見つけることも可能かも知れないが、愛人業の後に俺たちしかいない工房の事務職じゃあ外への伝手も大して増えないだろうから、美味い事やって国税局や商業ギルドとかで顔を繋いで信頼を培って転職先を紹介して貰えない限り、アレクに食事やそれ以上に誘われた時にも断りにくいと感じる可能性は十分にある。
アレクは仕事を盾に関係を強要するような人間じゃあないし、俺たちだってそれを見過ごすようなクソッタレじゃあないつもりだが、仲間同士の贔屓って時々想定外な結果が出る時はあるからなぁ。
「じゃあ、アレクが気に入るかもな人員だったらシェフィート商会かもっと更に縁が遠そうな工房か商会にでも紹介する方が良いか?」
元々アレクの付き合う相手候補という意図は無かったんだが、シャルロがキーナとアレクがお似合いだと思うんだったら、最初から障害になるような雇用関係は結ばない方が良いかも?
「まあ、私は誰かと付き合いたいという願望は特に今のところないんだが・・・どちらにせよ、書類作業に関して色々と一通り仕込むためにシェフィート商会で暫く働くのはどうかな?
誓約魔術で情報秘匿を契約して、キーナだけでなく何人かの事務職の人間を数か月単位で交代でこちらに派遣して貰う契約をしても良いし。
まあ、シェフィート商会ではなく、商業ギルドか魔術ギルドからそう言う人員派遣の契約をするのも可能だが」
アレクが提案した。
「数か月ごとに人が変わるのって非効率的な気もするけど・・・まあ、いつ誰が結婚したり妊娠したりして暫く休むってことになっても困らないし、アレクが誰かを気に入った時に大事にならずに直接的な契約を無しに出来るし、それが良いかもね。
でも、商業ギルドも魔術ギルドもちょっと不安かな。
どっちも開発のアイディアをそれとなく相談とか雑談みたいな感じで知り合いに漏らしそう」
シャルロが応じる。
確かにな。
誓約魔術で意図的に情報を漏らせなくても、相談とか雑談でうっかりアイディアを別の誰かに与えたら、それこそ転移箱のようにあっという間に他の奴らに新製品を開発されちまう可能性は十分ある。
その点、シェフィート商会の人間だったら新しい魔具の開発はやっていないから閃きの横取りは心配する必要が余りないだろう。
多分。
俺たち以外の誰かが工房に入ることで多少は情報が漏れる危険性は増えるけど、まあそこら辺はアレクへの事務作業の負担の軽減と天秤に掛けて、適切な安全対策をとるしかないよな。
「じゃあまあキーナに関しては先にシェフィート商会の事務関係の人にちょっと仕込んでもらって有望そうか確認ってところかな?
そしてこちらに事務職員を派遣する契約や仕事範囲に関しては近いうちに相談と言うことで。
ちなみに、新しい魔具に関しては何か思いついた?」
シャルロがパンっと手を叩いて話をまとめた。
「俺としてはちらっとアレクに言ったんだが、ポットとか水筒に魔力を通したり魔石で起動したら水を溜められる魔具を造れたら便利かも?と思ったんだがどうだろう?」
書類とかをぱぱっとその場で写せる魔具もあったら便利だろうけど・・・そう言うのは情報を盗むのにがっつり使われそうだし世に出さない方が無難だろうな。
「それ良いね!!
遠乗りに行った時とかピクニックに行った時に水をさっと出せると助かる人って多いと思う!」
シャルロが嬉しそうに合意した。
まあ、此奴の場合(というか魔術師なら誰でも)は自力で水を出せるけど、他の人間が自力で好きな時に水を出せるって重要だよな。
「確かに需要は幾らでもあると両親や兄も言っていたが・・・考えてみたら、水を創り出す魔術回路というのは多分無いんじゃないか?
そう言う魔具は確実に出回っていないそうだ。
あるんだったら行商人はともかく船では絶対に使っているだろうし、海水から真水を抽出する魔具もあそこまで喜ばれないだろう」
アレクが指摘した。
・・・確かに?
シャルロが朝のお茶を淹れながら悪戯っぽく聞いてきた。
「俺たちの事業の事務作業を任せる女性がアレクと付き合うようになるなら、今まで以上にシャルロと俺たちが頑張って書類作業の確認をしろってさ」
ちょっとシャルロが『期待外れだ~』という顔をしたが、俺とシェイラに色っぽい男と女の争いごととかを求めること自体が間違っていると思うぞ?
「確かにそうだな。
我々が雇っている人間と私が付き合う事なんかはまずないが。
もしも付き合いたいと思うような人柄でどうしてもと思いが募ったら、工房の事務職員として別の人を代わりに雇ってから私とは直接関係ない所に仕事を変えて貰ってから付き合うよ。
そうじゃないと下手をしたらウィルが言っていたクソッタレ領主と同じようなことを意図せずに強要する羽目になりかねないだろう」
アレクが眉を顰めながら口を挟んだ。
・・・そっか。
職場の上司って考えてみたら関係を強要されたら断りにくいよな。
もっと大きな職場だったら他の職員の伝手でこっそり別の仕事を見つけることも可能かも知れないが、愛人業の後に俺たちしかいない工房の事務職じゃあ外への伝手も大して増えないだろうから、美味い事やって国税局や商業ギルドとかで顔を繋いで信頼を培って転職先を紹介して貰えない限り、アレクに食事やそれ以上に誘われた時にも断りにくいと感じる可能性は十分にある。
アレクは仕事を盾に関係を強要するような人間じゃあないし、俺たちだってそれを見過ごすようなクソッタレじゃあないつもりだが、仲間同士の贔屓って時々想定外な結果が出る時はあるからなぁ。
「じゃあ、アレクが気に入るかもな人員だったらシェフィート商会かもっと更に縁が遠そうな工房か商会にでも紹介する方が良いか?」
元々アレクの付き合う相手候補という意図は無かったんだが、シャルロがキーナとアレクがお似合いだと思うんだったら、最初から障害になるような雇用関係は結ばない方が良いかも?
「まあ、私は誰かと付き合いたいという願望は特に今のところないんだが・・・どちらにせよ、書類作業に関して色々と一通り仕込むためにシェフィート商会で暫く働くのはどうかな?
誓約魔術で情報秘匿を契約して、キーナだけでなく何人かの事務職の人間を数か月単位で交代でこちらに派遣して貰う契約をしても良いし。
まあ、シェフィート商会ではなく、商業ギルドか魔術ギルドからそう言う人員派遣の契約をするのも可能だが」
アレクが提案した。
「数か月ごとに人が変わるのって非効率的な気もするけど・・・まあ、いつ誰が結婚したり妊娠したりして暫く休むってことになっても困らないし、アレクが誰かを気に入った時に大事にならずに直接的な契約を無しに出来るし、それが良いかもね。
でも、商業ギルドも魔術ギルドもちょっと不安かな。
どっちも開発のアイディアをそれとなく相談とか雑談みたいな感じで知り合いに漏らしそう」
シャルロが応じる。
確かにな。
誓約魔術で意図的に情報を漏らせなくても、相談とか雑談でうっかりアイディアを別の誰かに与えたら、それこそ転移箱のようにあっという間に他の奴らに新製品を開発されちまう可能性は十分ある。
その点、シェフィート商会の人間だったら新しい魔具の開発はやっていないから閃きの横取りは心配する必要が余りないだろう。
多分。
俺たち以外の誰かが工房に入ることで多少は情報が漏れる危険性は増えるけど、まあそこら辺はアレクへの事務作業の負担の軽減と天秤に掛けて、適切な安全対策をとるしかないよな。
「じゃあまあキーナに関しては先にシェフィート商会の事務関係の人にちょっと仕込んでもらって有望そうか確認ってところかな?
そしてこちらに事務職員を派遣する契約や仕事範囲に関しては近いうちに相談と言うことで。
ちなみに、新しい魔具に関しては何か思いついた?」
シャルロがパンっと手を叩いて話をまとめた。
「俺としてはちらっとアレクに言ったんだが、ポットとか水筒に魔力を通したり魔石で起動したら水を溜められる魔具を造れたら便利かも?と思ったんだがどうだろう?」
書類とかをぱぱっとその場で写せる魔具もあったら便利だろうけど・・・そう言うのは情報を盗むのにがっつり使われそうだし世に出さない方が無難だろうな。
「それ良いね!!
遠乗りに行った時とかピクニックに行った時に水をさっと出せると助かる人って多いと思う!」
シャルロが嬉しそうに合意した。
まあ、此奴の場合(というか魔術師なら誰でも)は自力で水を出せるけど、他の人間が自力で好きな時に水を出せるって重要だよな。
「確かに需要は幾らでもあると両親や兄も言っていたが・・・考えてみたら、水を創り出す魔術回路というのは多分無いんじゃないか?
そう言う魔具は確実に出回っていないそうだ。
あるんだったら行商人はともかく船では絶対に使っているだろうし、海水から真水を抽出する魔具もあそこまで喜ばれないだろう」
アレクが指摘した。
・・・確かに?
11
あなたにおすすめの小説
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で
重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。
魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。
案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。
俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?
くまの香
ファンタジー
いつもの朝、だったはずが突然地球を襲う謎の現象。27歳引きニートと27歳サラリーマンが貰ったスキル。これ、チートじゃないよね?頑張りたくないニートとどうでもいいサラリーマンが流されながら生きていく話。現実って厳しいね。
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる