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第一話『解決後の推理』参
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家の外では、空を再び厚い雲が覆い、雪が降り出していた。
伸一郎が再び温かいコーヒーを出してくれるのを待ってから絢辻は話し始めた。
「秀明さんは正明さんを地下室に呼び出した。そして、これは警察の捜査でも判ってますが、暖炉の中にうっすら文字が書いてあったので、謎解きの要領でそう仕向けた。正明さんが煙突を覗きこみ、ヒントを探している間に凶器を煙突から落として殺害した。そして火を放ち燃やした。これが事件の全貌です」
絢辻が言い終わると、伸一郎が口を挟んだ。
「そうですね。ですが、それは警察の捜査でも分かってます。肝心な密室はどうなんです?」
「ここで先ほどの祐奈さんの話です。入り口のドアの立て付けが悪くて、鍵をかけないと冷えると」
そこで私は気が付いた。
「あ!もしかして正明さんが自分で鍵を閉めたのか!」
「そう。地下室に呼び出された時点では正明さんは謎解きゲームのことを知らなかったんでしょう。あまりの寒さに自ら部屋の掛け金をかけた。その後、ゲームの存在に気付き、それを進めるうちにまんまと罠にはまって殺されたというわけです。密室を作ったのは被害者の正明さん。つまりこの密室は偶然生まれてしまったものだったんです」
あの日、地下室に呼び出された正明は寒さから自ら掛け金を下ろしドアに鍵をかけた。その後、殺害されたのだ。
なるほど。これならば筋も通っているし、密室の謎も解ける。
絢辻の顔は先ほどのように自信に満ちた顔をしていた。
「さすが探偵さんですね」
唯一の謎が解けてホッとしたのだろう。伸一郎は嬉しそうな顔をして玄関まで見送りに来てくれた。
「いえ、警察が捜査段階で密室のあらゆる可能性を潰しておいてくれたので。それに祐奈さんとお話できたことが決定打になりました。私は運が良かったんですよ」
靴を履き終え、立ち上がった絢辻は振り返って言った。
「いや、さすがです。あの人の言う通りだった」
そう言うと伸一郎は口元に笑みを浮かべた。
「あの人とは?櫛木探偵事務所を紹介してくださったお知り合いの方ですか?」
「えぇ。そうだ、伝言を預かってます。これはほんの小手調べだ。いずれ、また…だそうです」
伸一郎の言葉を黙って聞いていた絢辻はやがて誰が見ても分かるくらいの作り笑いを浮かべて答えた。
「報酬は契約の通り一週間以内に振り込みでお願いします。では、私からもあの人に伝言を一つ。櫛木探偵事務所をこれからもどうぞご贔屓に」
そう言って頭を下げると、絢辻は赤城家を後にした。
私も伸一郎に頭を下げ、絢辻の後を追いかけた。
赤城家を出ると一面雪景色だったが、降る雪はやんでいた。これなら帰れそうだ。
私と絢辻は車に乗り込んだ。すぐにエンジンをかけ、暖房をつける。車内が温まるまで少し待つ。
その間に絢辻は事務所に連絡をしていた。そういえば彼女の職場にはまだ一度も行ったことがない。今度参考のために取材させてはもらえないだろうか。そんなことを考えている間に彼女の電話が終わった。
「はぁ、やっと終わったぁ。所長は人遣いが荒いね」
そう言うと絢辻は笑った。
「伸一郎さんが言ってたあの人って一体何者なんだろうな」
「今のところは全く手がかりなしだよ」
そう言うと絢辻はやれやれと首を軽く左右に振った。
「ま、いいじゃないか。謎は解けたんだし」
そう言いながら私はアクセルを踏んだ。白い景色の中を赤い車が走り出す。
「あんなのは謎じゃないよ。警察の捜査と現場の状況を考えたら答えは一つしかない。こんなのは推理じゃないよ」
そう言う絢辻は口元に笑みを浮かべていた。その顔に私は少し恐怖を覚えた。
絢辻の目はいつになく鋭かった。
「そういえばまだ昼食べてなかったな」
時計に目をやると時刻は十三時をまわっていた。
「確かに何も食べてなかったね」
「仕方ない。帰りにどっか寄ってやる」
「奢りだ!やった!」
絢辻はさっきの笑みとは違い、純粋な笑顔を浮かべる。
「割り勘だろ」
「あはは、嫌だ!」
車内に絢辻の無邪気な笑い声が響いた。
伸一郎が再び温かいコーヒーを出してくれるのを待ってから絢辻は話し始めた。
「秀明さんは正明さんを地下室に呼び出した。そして、これは警察の捜査でも判ってますが、暖炉の中にうっすら文字が書いてあったので、謎解きの要領でそう仕向けた。正明さんが煙突を覗きこみ、ヒントを探している間に凶器を煙突から落として殺害した。そして火を放ち燃やした。これが事件の全貌です」
絢辻が言い終わると、伸一郎が口を挟んだ。
「そうですね。ですが、それは警察の捜査でも分かってます。肝心な密室はどうなんです?」
「ここで先ほどの祐奈さんの話です。入り口のドアの立て付けが悪くて、鍵をかけないと冷えると」
そこで私は気が付いた。
「あ!もしかして正明さんが自分で鍵を閉めたのか!」
「そう。地下室に呼び出された時点では正明さんは謎解きゲームのことを知らなかったんでしょう。あまりの寒さに自ら部屋の掛け金をかけた。その後、ゲームの存在に気付き、それを進めるうちにまんまと罠にはまって殺されたというわけです。密室を作ったのは被害者の正明さん。つまりこの密室は偶然生まれてしまったものだったんです」
あの日、地下室に呼び出された正明は寒さから自ら掛け金を下ろしドアに鍵をかけた。その後、殺害されたのだ。
なるほど。これならば筋も通っているし、密室の謎も解ける。
絢辻の顔は先ほどのように自信に満ちた顔をしていた。
「さすが探偵さんですね」
唯一の謎が解けてホッとしたのだろう。伸一郎は嬉しそうな顔をして玄関まで見送りに来てくれた。
「いえ、警察が捜査段階で密室のあらゆる可能性を潰しておいてくれたので。それに祐奈さんとお話できたことが決定打になりました。私は運が良かったんですよ」
靴を履き終え、立ち上がった絢辻は振り返って言った。
「いや、さすがです。あの人の言う通りだった」
そう言うと伸一郎は口元に笑みを浮かべた。
「あの人とは?櫛木探偵事務所を紹介してくださったお知り合いの方ですか?」
「えぇ。そうだ、伝言を預かってます。これはほんの小手調べだ。いずれ、また…だそうです」
伸一郎の言葉を黙って聞いていた絢辻はやがて誰が見ても分かるくらいの作り笑いを浮かべて答えた。
「報酬は契約の通り一週間以内に振り込みでお願いします。では、私からもあの人に伝言を一つ。櫛木探偵事務所をこれからもどうぞご贔屓に」
そう言って頭を下げると、絢辻は赤城家を後にした。
私も伸一郎に頭を下げ、絢辻の後を追いかけた。
赤城家を出ると一面雪景色だったが、降る雪はやんでいた。これなら帰れそうだ。
私と絢辻は車に乗り込んだ。すぐにエンジンをかけ、暖房をつける。車内が温まるまで少し待つ。
その間に絢辻は事務所に連絡をしていた。そういえば彼女の職場にはまだ一度も行ったことがない。今度参考のために取材させてはもらえないだろうか。そんなことを考えている間に彼女の電話が終わった。
「はぁ、やっと終わったぁ。所長は人遣いが荒いね」
そう言うと絢辻は笑った。
「伸一郎さんが言ってたあの人って一体何者なんだろうな」
「今のところは全く手がかりなしだよ」
そう言うと絢辻はやれやれと首を軽く左右に振った。
「ま、いいじゃないか。謎は解けたんだし」
そう言いながら私はアクセルを踏んだ。白い景色の中を赤い車が走り出す。
「あんなのは謎じゃないよ。警察の捜査と現場の状況を考えたら答えは一つしかない。こんなのは推理じゃないよ」
そう言う絢辻は口元に笑みを浮かべていた。その顔に私は少し恐怖を覚えた。
絢辻の目はいつになく鋭かった。
「そういえばまだ昼食べてなかったな」
時計に目をやると時刻は十三時をまわっていた。
「確かに何も食べてなかったね」
「仕方ない。帰りにどっか寄ってやる」
「奢りだ!やった!」
絢辻はさっきの笑みとは違い、純粋な笑顔を浮かべる。
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