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第30話
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30話
仁の運動音痴を修正すべく悪戦苦闘していると、暑い夏はあっという間に終わり過ごしやすい秋がやってくる。それはつまり入試も目前に迫っていると言うことだ。
「右!左!ほらほら脇が甘いから隙ができてるよ」
「クソ、このサディストめ!」
仁が悪態を吐きながら必死に防ぐ。せっかく人が優しくどこから攻撃するかまで教えてやってるというのになんたる言い草だろう。
この二ヶ月ほどで戦闘の基礎は叩き込まれた仁だが、当然一年以上修行していた僕とは大きな力の差がある。
「風よ!」
僕の一撃を防いでよろめきながら距離を取った仁が、現状唯一攻撃にしようできる風魔法を展開する。
他にも水魔法や回復魔法なんかも使える仁だが、一番の得意分野は風魔法らしい。特に今展開してる原理がよく分からない風魔法は、当たるとカッターで斬られたような痛さと切り傷ができるので痛い。残りの水魔法は相手を水浸しにする程度だし、回復魔法は癒しちゃうので風魔法以外脅威はない。
二ヶ月前より集弾率が上がり避けにくくはなった仁の風魔法だが、集弾しているので今度は真っ直ぐ突っ込まなければ避けられる様になった。
今回も仁の周りを円を描くように走り仁の魔法を回避する。仁も負けじと先回りして射ってくるが、急いで射った分今度は集弾率が下がりばらけてしまっている。
「もらった!」
今度はその隙を突いて風の刃を避けながら距離を詰める。
「ええい、こうなりゃ!」
仁がヤケクソで撃ってきた追加の風魔法を最後は無理やり突っ切って仁の杖を弾き飛ばす。
「クッソ、また負けちまったか」
「まったく、負けるなら負けるで潔く負けてよ。二、三箇所切り傷できたよ」
最後のヤケクソ魔法は直撃とまではいかなかったが、いくつか掠って切り傷ができている。
「治してやるからいちいち文句つけるな」
そう言って仁が回復魔法で傷を治してくれるが、その際一緒に傷ついた服は元には戻らない。
「もー仁のせいでまた服をダメにしたのかってメイドさん達に怒られるじゃん」
仁の修行をする様になってからは服がよくボロボロになり、おかげでメイド達からお転婆だの蓮っ葉だの色々言われる機会が増えた。
「怒られたくないなら最後無理やり突っ込んで来るんじゃねえよ」
仁が甘えた事を言っているが、勝負の場で服を気にして突っ込んでこない奴はいないだろう。
「お疲れさん二人とも、今日の訓練は午前中だけにしておこうか」
傍で見ていたカインが決着がついたのを見てこちらへと歩いてくる。
「珍しいですね、何かあったんですか?」
「何かあったってお前ら明日には王都に向けて出発しないといけないし、準備をする時間が必要だろう?」
「試験って四日後だろ、明日出発するのか?」
「流石に前日入りって訳にはいかないだろ、試験会場も見ておきたいだろうし。それに今回は俺とミルドラじゃ送れないからな」
緊急時でもないのに王都にミルドラで乗り付けたら流石にドヤされちまうとカインが肩を竦める。
「じゃあ僕たち鉄路で行くことになるんですか?」
「ああ、そうなるな。心配するな切符と宿は用意してある」
とりあえず飯に行こうぜと歩き始めるカインの背中を追う。カインは何も考えて無いのだろうが、歩幅が違いすぎるので追いつくにも早歩きだ。
食堂に着いていつも通り食事を済ませ準備の為に部屋に戻ると、丁度シアンが旅行用のトランクケースを持ってきてくれたところだった。
「も~またそんなにお洋服ボロボロにされて~、いけませんよ~せっかく頂いたお下がりなのに~」
「ごめんごめん、仁の往生際が悪くてさ」
「魔法に突っ込んできておいて人のせいにするなよ」
その後、ごよ~い手伝いましょうか~といつもの調子で聞いてくるシアンに断りを入れて準備を始める。
「でも断ったはいいけどこのトランクケースに着替え入り切るかな?」
「さぁな、ちゃんと畳めば入るんじゃね」
修学旅行の時とかも行きは入っていたはずの服が、帰りは入り切らなかったりした身からするとちゃんと入れられるか不安が過ぎる。ああいう時母親の凄さが分かる気がする。
だが、行きも詰められなければ帰りに詰められるはずもない。二人して悪戦苦闘しながら着替えを積み込み、結局二人してトランクケースに無理やり押し込む形で準備を終わらせる。
「な、なんとか入ったな」
「そうだね、これを帰りも入れないといけないんだけど」
しかも持ってみるとこの体だから仕方ないとは言えかなり重いし、いっそ追加でリュックサックでも借りて行った方がいいのかもしれない。
結局メイドに聞いて用意してくれたショルダーバッグとリュックサックをそれぞれ追加し、その後はいつも通り夜の日課を終わらせ翌日。カインと朝のバンクシアの市街を歩くと意外とすぐに駅に着いた。
煉瓦造りの大きなかまぼこ型の駅舎には多くのお店も併設していて、まるで某有名魔法映画に出てきた駅のようだ。
「思ってたより近いんですね」
「非常時は城から軍隊を運ばないといけないからな。必然的に城の近くになるさ」
「それよりなんで機関車が白い煙を吹いてるんだ?」
「魔導列車は中の魔導石を動力にしていてな、そのまま利用してるとどんどん高熱になっていくから水をかけて冷やす必要がある。白い煙は水をかけて冷やした結果出る水蒸気だ」
カインが歩きながら説明してくれる。どうやら見た目は黒くてゴツゴツしてて機関車に似ているが原理は異なるらしい。
改札の列に並ぶと暇になったので周囲を見渡してみると、やはり列車に乗る人は成人男性が多いようで女性客や子供は少ない。そのまま見渡し柱に掛けてあるダイヤ表に目を向けると、到着時間と発射時間が分けて書いてある上に1時間程度停車時間がある。
「なんであんなに停車時間が長いんだろう?」
「ダイヤが乱れない様にしたり、タンクに給水する時間があるんじゃないか」
仁が考察を教えてくれる。なるほどね、確かに電車と違ってそう言う時間も必要になるのか。
その後改札を通り、ホームに出ると乗り込む列車は既に停車していた。
「これが客車ですか…?」
そこに停まっていたのはトロッコ列車から屋根も外した様な吹き曝しの車両だった。文字通り走る箱だ、事故があったら外に投げ出されてしまうだろう。
「そこは三等客車だな、俺たちは乗るのは一等客車だ。もっと奥に行くぞ」
言われてカインの後を着いていくと、今度は屋根だけ付けたそのままトロッコのような車両の横を通り、最後に馬車の様な見た目の客車が見えてくる。
「一等客車に乗れるって実はカインって結構お金持ち?」
「これでも一応騎士爵持ちだからな」
「ともかく三等客車に乗らなくて済んでよかったぜ」
ホームと車両との間に結構高い段差があるが、乗り込むように小さい梯子の様なものが付いている。流石にトランクケースを持ったままでは上がれなさそうなのでカインに預けて梯子を登る。
客車の中の作りも馬車の様な対面式の座席の真ん中にテーブルがある形になっており、前後の客車とは行き来できないようだ。
「次の停車駅までしばらくかかるし飲み物でも買ってきとくか」
そう言うとカインがホームにいる売り子から瓶のフルーツジュースを買って渡してくる。
「王都までどれくらいかかるんですか?」
「大体半日くらいだな、昼過ぎには着くだろう」
そんなことを話しながらしばらくすると、大きなベルの音とつんざくような汽笛がなり、大きな揺れとともに列車が動き出す。王都までの長い鉄道旅の始まりだ。
仁の運動音痴を修正すべく悪戦苦闘していると、暑い夏はあっという間に終わり過ごしやすい秋がやってくる。それはつまり入試も目前に迫っていると言うことだ。
「右!左!ほらほら脇が甘いから隙ができてるよ」
「クソ、このサディストめ!」
仁が悪態を吐きながら必死に防ぐ。せっかく人が優しくどこから攻撃するかまで教えてやってるというのになんたる言い草だろう。
この二ヶ月ほどで戦闘の基礎は叩き込まれた仁だが、当然一年以上修行していた僕とは大きな力の差がある。
「風よ!」
僕の一撃を防いでよろめきながら距離を取った仁が、現状唯一攻撃にしようできる風魔法を展開する。
他にも水魔法や回復魔法なんかも使える仁だが、一番の得意分野は風魔法らしい。特に今展開してる原理がよく分からない風魔法は、当たるとカッターで斬られたような痛さと切り傷ができるので痛い。残りの水魔法は相手を水浸しにする程度だし、回復魔法は癒しちゃうので風魔法以外脅威はない。
二ヶ月前より集弾率が上がり避けにくくはなった仁の風魔法だが、集弾しているので今度は真っ直ぐ突っ込まなければ避けられる様になった。
今回も仁の周りを円を描くように走り仁の魔法を回避する。仁も負けじと先回りして射ってくるが、急いで射った分今度は集弾率が下がりばらけてしまっている。
「もらった!」
今度はその隙を突いて風の刃を避けながら距離を詰める。
「ええい、こうなりゃ!」
仁がヤケクソで撃ってきた追加の風魔法を最後は無理やり突っ切って仁の杖を弾き飛ばす。
「クッソ、また負けちまったか」
「まったく、負けるなら負けるで潔く負けてよ。二、三箇所切り傷できたよ」
最後のヤケクソ魔法は直撃とまではいかなかったが、いくつか掠って切り傷ができている。
「治してやるからいちいち文句つけるな」
そう言って仁が回復魔法で傷を治してくれるが、その際一緒に傷ついた服は元には戻らない。
「もー仁のせいでまた服をダメにしたのかってメイドさん達に怒られるじゃん」
仁の修行をする様になってからは服がよくボロボロになり、おかげでメイド達からお転婆だの蓮っ葉だの色々言われる機会が増えた。
「怒られたくないなら最後無理やり突っ込んで来るんじゃねえよ」
仁が甘えた事を言っているが、勝負の場で服を気にして突っ込んでこない奴はいないだろう。
「お疲れさん二人とも、今日の訓練は午前中だけにしておこうか」
傍で見ていたカインが決着がついたのを見てこちらへと歩いてくる。
「珍しいですね、何かあったんですか?」
「何かあったってお前ら明日には王都に向けて出発しないといけないし、準備をする時間が必要だろう?」
「試験って四日後だろ、明日出発するのか?」
「流石に前日入りって訳にはいかないだろ、試験会場も見ておきたいだろうし。それに今回は俺とミルドラじゃ送れないからな」
緊急時でもないのに王都にミルドラで乗り付けたら流石にドヤされちまうとカインが肩を竦める。
「じゃあ僕たち鉄路で行くことになるんですか?」
「ああ、そうなるな。心配するな切符と宿は用意してある」
とりあえず飯に行こうぜと歩き始めるカインの背中を追う。カインは何も考えて無いのだろうが、歩幅が違いすぎるので追いつくにも早歩きだ。
食堂に着いていつも通り食事を済ませ準備の為に部屋に戻ると、丁度シアンが旅行用のトランクケースを持ってきてくれたところだった。
「も~またそんなにお洋服ボロボロにされて~、いけませんよ~せっかく頂いたお下がりなのに~」
「ごめんごめん、仁の往生際が悪くてさ」
「魔法に突っ込んできておいて人のせいにするなよ」
その後、ごよ~い手伝いましょうか~といつもの調子で聞いてくるシアンに断りを入れて準備を始める。
「でも断ったはいいけどこのトランクケースに着替え入り切るかな?」
「さぁな、ちゃんと畳めば入るんじゃね」
修学旅行の時とかも行きは入っていたはずの服が、帰りは入り切らなかったりした身からするとちゃんと入れられるか不安が過ぎる。ああいう時母親の凄さが分かる気がする。
だが、行きも詰められなければ帰りに詰められるはずもない。二人して悪戦苦闘しながら着替えを積み込み、結局二人してトランクケースに無理やり押し込む形で準備を終わらせる。
「な、なんとか入ったな」
「そうだね、これを帰りも入れないといけないんだけど」
しかも持ってみるとこの体だから仕方ないとは言えかなり重いし、いっそ追加でリュックサックでも借りて行った方がいいのかもしれない。
結局メイドに聞いて用意してくれたショルダーバッグとリュックサックをそれぞれ追加し、その後はいつも通り夜の日課を終わらせ翌日。カインと朝のバンクシアの市街を歩くと意外とすぐに駅に着いた。
煉瓦造りの大きなかまぼこ型の駅舎には多くのお店も併設していて、まるで某有名魔法映画に出てきた駅のようだ。
「思ってたより近いんですね」
「非常時は城から軍隊を運ばないといけないからな。必然的に城の近くになるさ」
「それよりなんで機関車が白い煙を吹いてるんだ?」
「魔導列車は中の魔導石を動力にしていてな、そのまま利用してるとどんどん高熱になっていくから水をかけて冷やす必要がある。白い煙は水をかけて冷やした結果出る水蒸気だ」
カインが歩きながら説明してくれる。どうやら見た目は黒くてゴツゴツしてて機関車に似ているが原理は異なるらしい。
改札の列に並ぶと暇になったので周囲を見渡してみると、やはり列車に乗る人は成人男性が多いようで女性客や子供は少ない。そのまま見渡し柱に掛けてあるダイヤ表に目を向けると、到着時間と発射時間が分けて書いてある上に1時間程度停車時間がある。
「なんであんなに停車時間が長いんだろう?」
「ダイヤが乱れない様にしたり、タンクに給水する時間があるんじゃないか」
仁が考察を教えてくれる。なるほどね、確かに電車と違ってそう言う時間も必要になるのか。
その後改札を通り、ホームに出ると乗り込む列車は既に停車していた。
「これが客車ですか…?」
そこに停まっていたのはトロッコ列車から屋根も外した様な吹き曝しの車両だった。文字通り走る箱だ、事故があったら外に投げ出されてしまうだろう。
「そこは三等客車だな、俺たちは乗るのは一等客車だ。もっと奥に行くぞ」
言われてカインの後を着いていくと、今度は屋根だけ付けたそのままトロッコのような車両の横を通り、最後に馬車の様な見た目の客車が見えてくる。
「一等客車に乗れるって実はカインって結構お金持ち?」
「これでも一応騎士爵持ちだからな」
「ともかく三等客車に乗らなくて済んでよかったぜ」
ホームと車両との間に結構高い段差があるが、乗り込むように小さい梯子の様なものが付いている。流石にトランクケースを持ったままでは上がれなさそうなのでカインに預けて梯子を登る。
客車の中の作りも馬車の様な対面式の座席の真ん中にテーブルがある形になっており、前後の客車とは行き来できないようだ。
「次の停車駅までしばらくかかるし飲み物でも買ってきとくか」
そう言うとカインがホームにいる売り子から瓶のフルーツジュースを買って渡してくる。
「王都までどれくらいかかるんですか?」
「大体半日くらいだな、昼過ぎには着くだろう」
そんなことを話しながらしばらくすると、大きなベルの音とつんざくような汽笛がなり、大きな揺れとともに列車が動き出す。王都までの長い鉄道旅の始まりだ。
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