異世界での新たな神器は鉛筆のようです

日向悠介

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「お前その魔道具はなんなんだ!」

「へ?」

 突然の事に次の言葉を紡げない少年。それに対して背後から現れた男は、

「へ、じゃねえ。教えろってんだ、そんな強力な魔道具何処で手に入れたんだよ」

「へぇ言葉は通じるんだー」

「あァ、当たり前だろっ。同じ国にいるんだから言語は通じたって何ら不思議じゃねえだろうよ。って話そらすんじゃねえ、あの魔道具は何なんだって聞いてんだよ」

 いくら聞いても見当違いの答えが返ってくる事に男は叱咤する。
 怒られてようやく気がついたのか、少年は聞かれている内容に気がつく。

「あ、あぁ、これは魔道具なんて物じゃなくて唯の鉛筆だよ」

「そ、そうか、そうだよな、唯の鉛筆。ってんな訳あるかァ、まず鉛筆って何だよ、あんな強力な魔法を魔法陣なしでぶっ放しといて魔道具じゃないなんて、そんなのありえる筈がねえだろ。そんなチートみたいな物は聖剣やら聖鎧やらの神器レベル以外考えらんねぇ、それ何処で見つけた?」

「へ? 何処でって、ポケットから出てきただけだよ」

 男はその答えに唖然とする。見え見えの嘘を吐くくらいなら、もう少しマシな言い訳はなかったのかと言うかのように、目を瞬かせ、

「そんな訳あるかッ! 何処で掠め取って来たんだ、正直に答えろっ、アァ。俺はな嘘ついているかは見りゃ分かるんだ」

「なんなんですか、急に要件を聞いてきたと思ったら俺を嘘つき呼ばわりですか。嘘ついてるか分かるならさっき嘘ついてない事くらい分かるじゃないですか。本当にポケットから出てきたんですって」

 男は自身の持つスキル『鑑定眼』を使って嘘をついていないか、見極めようとしたのだが、先程と同じ嘘をついた少年には嘘という反応が出なかった。男はそれに疑念を持つほかない。
 これ程までに強力な魔道具がポケットから出てきた、そんな事があるのかと男は頭を抱える。

「どうやって白をきっているか知らんが、もういい。お前を殺してでもその鉛筆という魔道具を奪い取ってやる!」

 もう本末転倒だった。魔道具について聞くはずが、何も詳しく語らない少年に怒り心頭を発し、奪い取ってやろうという感情が男の裏腹に蠢いた。

 男は剣を振り上げて、少年に斬りかかった。

「えっ、うわぁァッ!」

 少年は慌てて、横によけたつもりだが、避けたらなかったのか剣先が頬を掠める。
 少年の頬が赤く滲んだ。

「ちっ、いちいち避けんじゃねえよ」

「避けなきゃ死ぬだろッ」

 狡猾な笑みを浮かべる男が、獲物を仕留め損なった事に腹を立て額に青筋を立てる。
 少年はそんな威圧に圧され、膝頭が笑っていた。

 男が剣を長い舌でぺろりと舐め、目を細める。いかにも闘い慣れなていない初心者をどのように料理しようか考えながら。

 少年には鉛筆の力を借りる事しか手段が残されていない。鉛筆が今一番頼りになるというのは初めての感情だ。

「次はしっかり殺られろよ。しぶとく生き残るのは一瞬で楽になるよりも数倍は辛いぞ。さっさと楽になりな」

 男が早く殺られてくれと渇望するように叫び散らす。

「俺はまだ死なない。死にたくない。だから、何処までもしぶとく行き続けてやるっ!」

 少年は鉛筆をガシッと掴み取り、胸元近くに構える。
 ここは鉛筆投げで勝てる相手ではない、ならばあの空書きの能力を使うしかないと思考を張り巡らせて、少年は空中に文字を書き始めた。

「あんたみたいなクソ野郎にはこれをプレゼントしてやる」

 少年が空中に描いた文字は『岩』。
 すると文字から普遍的な岩が現れる。
 男は岩が邪魔となり攻撃に赴くのに、勢いが落ちた。

 少年は狙い通りに事が進み本心から笑みが溢れた。

「こんなものフェイクにすらならねえぞ、このど素人がッ」

「それはどうかな?」

────ガコンッッ!!

 突如として岩が砕け散り、男の目の前には先程まで数メートル先にいた少年がいた。
 砕けた場所から少年の拳が男の腹に吸い込まれるようにして近づく。

「なっ!? ば…かな──」

 男は勢いこそ弱まったもののそれを止めることまでは不可能。されるがままにして拳が叩き込まれた。

 初撃ではいかにもど素人に見えた少年。だが今目の前にいるのは急変してありえない程の力を手にした少年だった。
 まさかこれも鉛筆という魔道具の能力なのか、男は少年の方を見ると一瞬だがはっきりと何かの文字が浮かび上がっているのが見えた。

 少年が描いた文字は自分の身体能力から思考能力まで全てを底上げする『強化』の二文字。
 その二文字だけで見事に形成が逆転した。

 男は吹き飛ばされた勢いで節々を痛める。歯ぎしりをしながらなんとか立ち上がるも、苦痛顔を歪め前屈みになってやっとの状態だった。
 そこへ身体能力が一気に底上げされた少年が後ろへ回り込み、鉛筆の先を男の首元に近づける。男は身動きを取ることも許されない。

「それ以上は何もするな!」

 突然、透き通った声が辺りに響いた。

 またしても違う人物が、魔道具の能力を見て、狙いに来たのか姿を表す。

「私は国家衛兵隊長のセリアスだ。お前たちには少し、懐疑をかけさせてもらうぞ」

 白髪を靡かせた衛兵が力強く声を張り上げると、二人の手を掴み取り、

「へ、動かない」

「当たり前だろ。あんな強さを誇っている者に抵抗されたらこちらも骨が持たない。だから拘束くらいはかける。嫌疑が晴れ次第その拘束は解いてやろう、それまでは大人しくしているんだな」

 そういって高々と笑った。そして隊長は拘束される少年の前にしゃがみ込むと、鉛筆を広い上げ、

「それからこれは預からせて貰うぞ。一応調べさせて貰うからな」

 そう宣言するなり、少年と男の手をまたしても掴み取り、

「テレポート」

 隊長が呟くと瞬く間に景色が移り変わり、目の前には拷問器具が兼ね揃えてある。

「ひええええええ」
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