あまみつつき君

さんといち

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二章 天満月くんの秘密

7.トモダチ

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 天満月くん、ぽかーん。
 テーブル上の妖精たち、一斉に顔をおおう(元々お面で隠れてるのに)。

 言ってなかったけ? 
 あ、カミングアウトして入ったつもりだったけど、彼らには戸が開いたことが衝撃的すぎて忘れちゃったんだ。

「そういえばあんた、くだらないとは失礼だとか何だとか、言ってたな…」

 私が飛び込んできた時のこと、向こうも思い出したらしい。
 私もこのタイミングで話すつもりは全くなかったんだけど、身体が動いてしまったんだからもうどうにでもなれだ。

「『くだらない』を否定するなら…、顔目当てでも、罰ゲームでもないのか?」
「うん」
「…っ! ならどうして……」

 見上げる天満月くんの顔。
 困惑と、恥じらいが混ざっている。

 …意外だ。
 分身消されてあんなにイライラしてたのに……ちょっとかわいい人、なのかも。

「どうして告白したのか、は…、まあ、『好きだから』ではないんだけど」
「は?」
「でもどうしても試したかった。私は、天満月くんの表情が変わるところを見てみたくて…、一番びっくりさせられる方法が、告白だと思ったの。天満月くんが私を本気で好きなわけないし、すぐに冗談だよって言うつもりで」

 数秒後、天満月くんは長いまつ毛を伏せて横を向いた。
 私の目的は伝わったらしい。

「…中学三年間、誰にも解かれなかった分身なのに……たった一人の変な好奇心に、くずされるのか」

 横顔は、寂しそうな、悔しそうな。

 …中学からずっと、分身使ってたんだ。

 本体はずっと、隠れていたんだ。

 こんなに、表情豊かな人なのに。

 私はソファに近づいた。
 気配を感じた彼が顔を上げたタイミングで、

「初めまして、斎藤美紀菜です」
 あらたまって自己紹介をしてみた。

「一瞬来ただけじゃ覚えてないだろうけど、席は天満月くんの隣。よろしくね」
「……」

 間をおいて、彼はふいと顔を逸らす。
 …うーん、ガードが堅い。分身のかたきだもんなあ、私。

 しつこく近づくのは止めて、視線を別に動かした。
 するとこちらをじいっと見てる妖精たちと目が合う。

 きつねからすうさぎねこのお面をつけた四人。
 これで全員なのかな。
 天満月くん、かなり仲良さそうだったけれど、どうやったら妖精と友達になれるんだろう。

『…見エテルノ?』

 ふと、女の子っぽい声がした。猫の子だ。
 見た目もポニーテールに大きな青リボンで、かわいい感じ。

「みんなのこと? 見えてるよ。狐さん、烏さん、兎さん、猫さん」

 一人ずつ呼んでみたら、毎回ビクッと肩をはねさせられた。反応がおもしろい。

『ワ、ハッキリ見エテルンダ』

 ビックリダネ、と猫さんは隣に向かって言った。つまり、天満月くんに。

「マジか…」
 またこっちを見てくれたけれど、眉毛がハの字形。じ、じろじろ眺めまわされてるし…!

『キット、コノ子ニハ素質ガアル』
『我々モ見エルシ、光ノ術モ簡単ニハ効カナイ』
『告白ガナクテモ、イツカ秘密ハ暴カレタナ』

 他の三人まで続けて言う。ああ、天満月くんの眉間が大変なことに…。

 素質があるといっても、私には全く自覚がないんだけど…、霊感みたいなものなのかな。
 この部屋にたどり着けたのは、たまたまの偶然だ。

『見エルナラ、仲良クシヨウゼ』
「えっ」「はっ?」

 ぴょんと手をつかまれる感覚があって、見れば烏さんだった。
 落っこちないよう両手で器を作ってあげる。

『光、ソノマヌケづらハ何ダ』
「いやっ、まさか、仲間に入れるのか?」
『我々、見エテル人間トハ皆友達ニナル主義ゾ。ダカラ光トモ仲良クシテル』

 烏さんは私を見上げて胸をはる。
『美紀菜。我ラ榊原学園ヨリ遥カ昔カラ、コノ土地ニ居ル者』

 続いて、狐さんもぴょんと乗ってくる。
『役目ハアルガ、退屈ナ時モアル。ダカラ…』

 兎さん、猫さんが連続でぴょんぴょん。四人乗ると手の上はぎゅうぎゅうだ。
『友ニナッテクレルカ?』
『光抜キデモイイカラ』

 …私、にやにや気持ち悪い顔になってそう。
 こんなかわいいサイズの妖精さんの、こんなかわいいお願い、断れる人いるのかな?

 返事はもちろん……

「私も、みんなと友達になりたい」

 そう伝えた瞬間に、隠れてない四つの口元は三日月の形になった。
 ついぎゅっ、とだきしめたくなってしまう。

 けど、がまんして顔を上げた。
 ちょうどよく赤茶色の瞳と視線がぶつかる。

 そこでまた、にっこり笑顔をつくる。

「私は、と友達になりたいよ」

 と、もう一回言ってみた。
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