9 / 19
二章 天満月くんの秘密
8.〈本気〉の告白
しおりを挟む
「………え」
天満月くんは、私が何を言いたいのか理解してくれたと思う。
だけど返事はすぐにもらえなくて、硬い表情になってしまっていた。
ここは押していかないと…!
「教室に来てよ。分身じゃなくて、本物の天満月くんが」
「やだ」
うっ、即拒否…。
「友達になって」ってお願いを断られたも同然だけど…、落ち込むのはまだ早い(と言い聞かせる)。
「中学から分身に任せてサボってたんでしょ? 久しぶりなら楽しく思えるかもしれないよ。登校してるってことは、本当は」
「家の人にうるさく言われないよう来てるだけだ」
「……」
本当は教室に行きたいんじゃ、と言いたかったのに封じられた。これは想像以上に頑固かも…。
私を無視するように、天満月くんはお菓子に手をつけ始める。それ、私が食べるはずだったチョコクラだけど!
「引きこもってお菓子食べて、楽しそうだね」
「残念だったな、あんたは分身作る力がなくて」
「皮肉で言ったの」
「何回説得されようが、俺はここから出るつもりはない。できることならとっくに放り出したのに…」
ぶつぶつ言いながら、天満月くんはお菓子を持っていない左手を握ったり広げたりしている。
広げる度に、金色の炎みたいなのがぽっと出てはすぐ弱まって消えた。
「…まさかとは思うけど、さっきから私を術で追い出せないかこっそり試してた…?」
「………」
あっ、黙った。絶対そうだ。
『性格悪イ』
『顔ダケ男』
妖精からひそひそ言われても、天満月くんは知らん顔。
『気ニスルナ美紀菜。君ニハ全ク効カナインダカラ』
でも狐がこう言った時、片方の眉毛がぴんとつり上がる。
…そうだ、私は彼にとって想定外の存在なんだ。
そこを利用すれば……。
「ふーん、天満月くんは分身生活続けるつもりなんだ」
「……だったら何」
「いいのかなー? 私、明日——……」
「……?」
天満月くんは細い眉毛同士を近づけた。私が急に黙ったから、不思議そうに。
明日、天満月くんの秘密を学校中にばらしちゃうよ——そう言おうと思った。
でも途中で気づいてしまった、それは無意味だ。
私や清華ちゃんが七不思議を疑ったみたいに、信じない人はたぶんたくさんいる。
鈴ちゃんみたいにすぐ受け入れてくれそうな子でも、天満月くんの術で信じないように変えることができるかもしれない。
とすると言いふらしたら終わるのは私の学校生活だ……どうしよう。
天満月くんだけに影響がある、都合のいい方法なんてのは………
あ!
あるじゃん。パッと思いつくくらい、簡単な作戦。
仕切り直して、もう一度目を合わせる。
…やっぱり、ちょっとは緊張するね。
「明日——も、天満月くんに告白するっ」
「なっ…!」
ぽろっ、と天満月くんの手からチョコレートが落ちた。
床にぶつかって欠けて、コロコロとテーブルの下へ。
それを拾う様子はなくて、彼は瞳をゆらゆらさせながら私を凝視している。
ほんのり顔が赤いのが…、私にもうつってしまいそう…。
『キャー、大胆』
『ドキドキ』
妖精たちはみんなテーブルに下ろした。…余計に身体が熱くなりそうだったので。
「わ、わかってると思うけど、分身に告白するの。そうすれば消えちゃうから、天満月くんはどうしても教室に来なきゃいけない。分身作るのに回数制限がなくても、何度だって言うよ。明後日も、明々後日も」
そう宣言したら、しばらくしてから重いため息を吐かれた。
呆れたようにも、自分を落ち着かせるようにも見えた。
「…あんた、面倒見のいい人だな」
「そのほめ言葉は初めて」
「皮肉で言ったんだよ」
天満月くんは上半身を屈めて、テーブルの下に手を伸ばす。落ちたチョコレートを拾うらしい。
「言いかえる、迷惑なおせっかいだ」
「…っ」
「俺が学校に来なくたって、あんたには関係な」
「関係ある!」
天満月くんは、私が何を言いたいのか理解してくれたと思う。
だけど返事はすぐにもらえなくて、硬い表情になってしまっていた。
ここは押していかないと…!
「教室に来てよ。分身じゃなくて、本物の天満月くんが」
「やだ」
うっ、即拒否…。
「友達になって」ってお願いを断られたも同然だけど…、落ち込むのはまだ早い(と言い聞かせる)。
「中学から分身に任せてサボってたんでしょ? 久しぶりなら楽しく思えるかもしれないよ。登校してるってことは、本当は」
「家の人にうるさく言われないよう来てるだけだ」
「……」
本当は教室に行きたいんじゃ、と言いたかったのに封じられた。これは想像以上に頑固かも…。
私を無視するように、天満月くんはお菓子に手をつけ始める。それ、私が食べるはずだったチョコクラだけど!
「引きこもってお菓子食べて、楽しそうだね」
「残念だったな、あんたは分身作る力がなくて」
「皮肉で言ったの」
「何回説得されようが、俺はここから出るつもりはない。できることならとっくに放り出したのに…」
ぶつぶつ言いながら、天満月くんはお菓子を持っていない左手を握ったり広げたりしている。
広げる度に、金色の炎みたいなのがぽっと出てはすぐ弱まって消えた。
「…まさかとは思うけど、さっきから私を術で追い出せないかこっそり試してた…?」
「………」
あっ、黙った。絶対そうだ。
『性格悪イ』
『顔ダケ男』
妖精からひそひそ言われても、天満月くんは知らん顔。
『気ニスルナ美紀菜。君ニハ全ク効カナインダカラ』
でも狐がこう言った時、片方の眉毛がぴんとつり上がる。
…そうだ、私は彼にとって想定外の存在なんだ。
そこを利用すれば……。
「ふーん、天満月くんは分身生活続けるつもりなんだ」
「……だったら何」
「いいのかなー? 私、明日——……」
「……?」
天満月くんは細い眉毛同士を近づけた。私が急に黙ったから、不思議そうに。
明日、天満月くんの秘密を学校中にばらしちゃうよ——そう言おうと思った。
でも途中で気づいてしまった、それは無意味だ。
私や清華ちゃんが七不思議を疑ったみたいに、信じない人はたぶんたくさんいる。
鈴ちゃんみたいにすぐ受け入れてくれそうな子でも、天満月くんの術で信じないように変えることができるかもしれない。
とすると言いふらしたら終わるのは私の学校生活だ……どうしよう。
天満月くんだけに影響がある、都合のいい方法なんてのは………
あ!
あるじゃん。パッと思いつくくらい、簡単な作戦。
仕切り直して、もう一度目を合わせる。
…やっぱり、ちょっとは緊張するね。
「明日——も、天満月くんに告白するっ」
「なっ…!」
ぽろっ、と天満月くんの手からチョコレートが落ちた。
床にぶつかって欠けて、コロコロとテーブルの下へ。
それを拾う様子はなくて、彼は瞳をゆらゆらさせながら私を凝視している。
ほんのり顔が赤いのが…、私にもうつってしまいそう…。
『キャー、大胆』
『ドキドキ』
妖精たちはみんなテーブルに下ろした。…余計に身体が熱くなりそうだったので。
「わ、わかってると思うけど、分身に告白するの。そうすれば消えちゃうから、天満月くんはどうしても教室に来なきゃいけない。分身作るのに回数制限がなくても、何度だって言うよ。明後日も、明々後日も」
そう宣言したら、しばらくしてから重いため息を吐かれた。
呆れたようにも、自分を落ち着かせるようにも見えた。
「…あんた、面倒見のいい人だな」
「そのほめ言葉は初めて」
「皮肉で言ったんだよ」
天満月くんは上半身を屈めて、テーブルの下に手を伸ばす。落ちたチョコレートを拾うらしい。
「言いかえる、迷惑なおせっかいだ」
「…っ」
「俺が学校に来なくたって、あんたには関係な」
「関係ある!」
0
あなたにおすすめの小説
【3章】GREATEST BOONS ~幼なじみのほのぼのバディがクリエイトスキルで異世界に偉大なる恩恵をもたらします!~
丹斗大巴
児童書・童話
幼なじみの2人がグレイテストブーンズ(偉大なる恩恵)を生み出しつつ、異世界の7つの秘密を解き明かしながらほのぼの旅をする物語。
異世界に飛ばされて、小学生の年齢まで退行してしまった幼なじみの銀河と美怜。とつじょ不思議な力に目覚め、Greatest Boons(グレイテストブーンズ:偉大なる恩恵)をもたらす新しい生き物たちBoons(ブーンズ)とアイテムを生みだした! 彼らのおかげでサバイバルもトラブルもなんのその! クリエイト系の2人が旅するほのぼの異世界珍道中。
便利な「しおり」機能を使って読み進めることをお勧めします。さらに「お気に入り登録」して頂くと、最新更新のお知らせが届いて便利です! レーティング指定の描写はありませんが、万が一気になる方は、目次※マークをさけてご覧ください。
おっとりドンの童歌
花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。
意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。
「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。
なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。
「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。
その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。
道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。
その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。
みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。
ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。
ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミがヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。
ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?
左左左右右左左 ~いらないモノ、売ります~
菱沼あゆ
児童書・童話
菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。
『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。
旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』
大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる