獣人騎士団長の愛は、重くて甘い

こむぎダック

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千年王国

夢の中?

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 side・レン


 赤ちゃんが欲しいの・・・ほしいの・・・ほしいの・・・ほしいの・・・。

 え?

 こだま?
 なんで?

「キ・・・キャーーーーッ!!」

 き・・・・聞かれた?
 みんなに聞かれちゃった?!

 嘘でしょ?!

 煩くて聞こえないかもって思ったから、頑張って声張ったのに。

 なんで急に静になるのよぉ~~~?!

 ヤダもう~!!

 赤ちゃんが出来るには、そういう事をしなくちゃいけなくて。
 赤ちゃんが欲しいって言うことは、そういう事をしようって事で。
 こんな大勢の前で、何言っちゃってんだ!ってことよね?

 恥ずっ!

 恥ずかしすぎて、恥ずか死ぬ!
 羞恥で死ねるってこういう事よ!!

「レン。レン落ち着け。大丈夫だから。一旦落ち着こうな? な?」

 全然大丈夫じゃない!

「アレク~~」

「すまん。俺が悪い。全部俺の所為だ」

 アレクさんが慰めてくれてるけど、無理!

 貴方がどんなに強くても、皆んなの記憶は消せないでしょ?

「そうです。全て閣下が悪い。レン様は何も悪くないのです」

 セルジュも聞いてた?

 どうしよう。
 頭に血が上りすぎて、クラクラしてきちゃった。

「閣下。こういう場合、速やかに宮へお帰りになるべきかと」

「あ? あぁ、そうだな。レン宮へ帰ろうな?」

「あ・・・うぅ」

 これは・・・?
 目の前が・・・・。

「レン様? 閣下! レン様のご様子が!」

「レン? おいレン! どうした?」

 羞恥で死ねる、とは思ったけど・・・。
 気絶の方が・・・かん・・・た・・・。


 ◇◇◇


 暗い・・・。
 何にも見えない。
 ここは・・・?

 ここは・・・嫌な所だ。
 嫌なものがいる所。

 ここに居ちゃいけない。 

 じっとしてても始まらない。
 きっとアレクさんが心配してる。
 早く戻らなきゃ。

 でも、どっちに行けばいい? 

 ・・・此処が何処だか分からないのに、どっちに行くも無いか。


 歩き始めてから、どの位経ったのかな。

 ずっと歩いてるような気もするし、全然時間がたっていない気もする。

 変な場所ね。

 真っ暗なのに自分の周りだけは、明かりも無いのにうっすら見える。

 一足ごとに、靴底で砕けるのは砂礫かな?

 そもそも、私はなんで此処に居るの?

 宮に帰る途中で、気絶しちゃった気がするんだけど。

 あ・・・恥ずかしい事思い出しちゃった。
 ううう・・・。
 嫌な事は一旦脇に置いといて。

 気絶したなら、此処は夢の中?

 ううん。夢とは違うわね。

 現実味のない場所なのに、靴に触れる感覚は妙にリアルな気がするし。

 それにさっきから聞こえてくるのは、人の話し声?

 大勢がブツブツ、ヒソヒソ話してるみたい。

 大きくはないけど、騒がしくて耳が痛い。

 この感じ、瘴気に似てる。

 皇宮の中に瘴気が湧いたら大問題だけど、これは瘴気ではないのよね。

 だって、ほら。

 浄化しても何にも起こらない。

 ほんと、変な場所。


 経験上こういう変な事が起きるときには、大抵アウラ様が関わってる。

 だとすれば、アウラ様は浄化もできないここで、私に何をさせたいのかしら?

 それとも何かを探せってことかな?

「お~い! 誰かいませんかぁ~?」

「アウラ様ぁ~?」

 ・・・応答なし。

 こんなんで、私にどうしろと?

「はぁ・・・」

 面倒くさい。とか言っちゃだめかしら?

「ママ~~ン?」

 おっ?
 あっちに光が!
 此処でもかっ! 

 呼び方がそんなに重要?

 まあ、いいや。

 光が射してるってことは、あそこに行けって事でしょ?

 へいへい、行きますよ。
 行けばいいんでしょ?

 ・・・って、あれは子供?

 体育座りで、膝に顔を埋めちゃってるから、よく見えないけど、泣いてるの? 

 あらあら、どうしましょう。


「僕どうしたの? お父さんとお母さんは?」

『・・・い』

「ん?」

『いないって言ったんだ。お父さんもお母さんもいない。番も見つからない。約束の人も来ない。ず~っと待ってるのに』

「誰かと、ここで会う約束をしたの?」

『違うっ!! 約束された人が僕に会いに来るはずなんだ!!』

「まあ!」

 すっぽかされちゃったのかしら?
 こんな場所で一人でいたら、悲しくもなるわね。

「じゃあ。お姉ちゃんと一緒に行く?」

『なんで? 僕はここに居なくちゃいけないんだよ』

「どうして?」

『ここで待ってるって決めたから』

 意地はっちゃって。
 可愛いわ。

「そう? でもこんな処で一人でいるのは良くないと思うの。だからお姉ちゃんと一緒に、その人を探しに行かない?」

『探しに行くの?』

 やっと顔を上げてくれた。

 ・・・って、この子・・・。

 藍色の髪。
 それにこの顔。

「カル?」

『ぼ・・・僕のこと知ってるの?』

「だって、その顔はカルでしょ?」

『・・・やっと会えた。あなたが僕の約束の人なんだね?』

「え? それってどういう?」

 あら? あらら?
 カルの体が、大きく・・・。

 うっそ。大人になった。

『・・・予言の人。エストで会おう。待っているよ』

「は? ちょっとカル?」

 なんで体が光ってるの?
 まぶしくて目を開けてられない。

 あ・・・世界が真っ白だ。


 ママン!
 私にどうしろって言うんですかぁ~~?!


 ◇◇◇


「閣下の所為ですよ」

「気絶なさってから、4日も眠ったままなんですよ」

「そうですよ! レン様は恥ずかしがりなのに、あんな事を言わされるなんて、気を失うのも当然です」

「レン様が大衆の面前で、あの様なことを言わねばならなかったのは、何故ですか?」

「そうですよ。最初の婚姻式の時は仕方がなかったとしても、戴冠式の時からもう1年近くですよ?」

「今まで、子作りの話しをされた事が無いのですか?」

「まさか、最近レン様の元気がなかったのは、その所為?」

「あり得ませんね。閣下は私たちの主を、蔑ろにする気ですか?」

 アレクさんがローガンさんとセルジュに、ガミガミと叱られてる?

 みんなの前で破廉恥なことを言ったのは私なのに、なんでアレクが叱られているのか、ちょっと理解できない。

 あ~~~。
 体が重い。
 指も動かない?
 なんで?

「ううう。すまん」

「そうですよ。全部閣下が悪いんです!」

「レン様は閣下に甘すぎます。前々から思っていたのですが、レン様は選ぶ側なのですから、もっとこう・・・強気に出ればいいのに」

「ローガン。お前の言う通りだが、もう少し言い方をだな」

「はい? 私はこれでも我慢もしておりますし、遠慮もしておりますが?」

「お前なぁ」

「う・・」

「レン? 目が覚めたのか?!」

「レン様? セルジュ、パフォス様をお呼びして」

「レン! レン! 大丈夫か?」

「閣下。大声を出さない。レン様を困らせないで下さい」

「しかしだな」

 私4日も寝てたの?
 そりゃ体も動かないはずだわ。
 アレクさんにも心配かけちゃったのね。

 ・・・それにしても。

 エストで待ってるって、カルに何かあったのかしら?

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