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Wedding~消えた花嫁~
第16話
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妖精たちとの『かくれんぼ』をする為、優希と海斗以外の7人もそれぞれ隠れる場所を探していた。
城のことは優希たちよりも知っているとはいえ、かくれんぼの鬼は妖精たちである。
隠れる場所を探すのに苦労するのは変わりなかった。
優希とアリスが海斗とジェイクの背中に乗ったように、エリスも狼になったルイの背中に乗って移動していた。
「ねぇ、ルイ。どこに行くの?」
ぎゅっと背中にしがみついたエリスがルイに話し掛ける。
「そうだな……。もしかしたら彼らには知られているかもしれないが、あそこに行こうと思っている」
走りながらルイはエリスに答える。
普段は王族とは思えないような丁寧な言葉遣いをしているルイなのだが、身内やエリスに対しては口調が違っていた。いや、これが本来のルイの話し方なのだろう。
他の人が聞いたら随分と印象が変わるかもしれない。
「あそこ? もしかして秘密の部屋?」
顔をルイの耳の近くに寄せながらエリスが小さな声で問い掛ける。
「あぁ、そうだ。……俺は今、狼の姿になっているし、他の場所へ行って城の人たちを混乱させたくないからな」
「そっか……うん、そうだね」
ぎゅっと首元にしがみつきながら少しだけ涙ぐむ。エリスはルイの言葉が嬉しかった。ルイにとっては当たり前の答えなのだろうが、皆のことを大切に思っているのが伝わったからだ。
「……エリス?」
走りながらルイは背中に乗るエリスに問い掛ける。
「何?」
なぜ呼ばれたのか分からず、エリスはきょとんとして首を傾げる。
「いや……泣いているような気がしたから」
「泣いてないよっ」
「そうか」
鼻をすするような音が聞こえ、ルイはエリスを心配していたのだが、エリスは顔を赤くしながらすぐに反論した。
確かに聞こえた気がしたルイは背中の上のエリスを気にしながらも、今は隠れることを優先しなければならない為、先を急いだ。
自分の部屋の前でルイはぴたりと止まる。
「エリス、開けてくれるか?」
「うん」
ゆっくりとルイの背中から下りると、エリスはぎゅっとルイの部屋の扉の取っ手を握り締める。
金色の豪華な取っ手。
ふとエリスは部屋の扉を見上げた。
豪華で美しい扉。王太子の部屋に相応しい。
そう、ルイは王家の長男である。本来であればルイが王位を継ぐはずだったのだ。
王と王妃が黒の魔女によって殺され、王家はルイとキティだけが残された。
黒の魔女を倒したことにより王位を奪還し、王太子であるルイがワンダーランドの王となるはずだった。
しかし、ルイは継承権を辞退し、今日の結婚式後にキティが王位を継承することとなっている。
(もしかして……俺のせい?)
取っ手をぎゅっと握り締めたまま、エリスはそんなことを思っていた。
ルイが王位を継がないのは、自分が男のせいなのでは――と。
「エリス? どうかしたのか?」
「あっ、ごめん。すぐ開けるね」
不思議そうに首を傾げるルイを振り返ると、エリスは慌てたように部屋の扉を開ける。
音をさせることなくゆっくりと扉が開いた。
城が元に戻ってこの扉も修繕されたのか、美しさも建付けの悪さも直っていた。
「入ろう」
するりとルイがエリスの横を通って部屋の中に入った。
すぐにエリスも後に続く。部屋に入るとそっと音を立てないように扉を閉める。
そのまま部屋の明かりを点ける為にスイッチを探した。
「エリス、点けなくていい。場所は分かるからこのまま行こう。電気が点いていると、ここにいると言っているようなものだからな」
そう言ってルイはあの秘密の部屋の入り口に向かって歩き出した。
エリスもこくりと頷くと、ルイの後に続いた。
しかし暗闇の中、何かに足の先をぶつけてしまった。
「痛っ!」
「エリスっ」
声を上げたエリスに、慌てたようにルイが振り返る。
「すまない……エリスはよく見えないのだな。俺の背中に乗るんだ」
そう言ってルイはエリスの横に立ち、じっとエリスを見上げた。
「ごめん」
「謝らなくていい。気が付かなかった俺のせいだ」
「ありがと、ルイ」
ゆっくりと確認するようにルイに触れると、エリスは恐る恐るルイの背中に乗った。まだ目が慣れておらず、ルイの背中の位置がよく分かっていなかったからだ。
「大丈夫か?」
「よっ……と。うん、大丈夫」
しっかりと背中に乗ったことを確認してルイに返事をする。
「よし、では移動するぞ」
再び部屋の端へと移動する。以前とは違い、あの『秘密の部屋』の壁の前には大きな本棚が置かれている。
誰にも気づかれないようにする為と、もう二度と入らないようにする為だ。
「まさか、また入ることになるとはな」
本棚の前で立ち止まると、ルイはじっと本棚を見上げる。
「これ、どうするの?」
ルイの背中に乗ったまま、エリスはことんと首を傾げる。
中に入れないようにする為に本棚を置いてあるのだ。どうするというのか。
「方法はある。もう二度と入るつもりはなかったんだが……。エリス、本棚の右端に石を嵌め込んである。それを見つけてくれ。エリスの身長に合わせてあるからすぐに分かるはずだ」
大きく溜め息を付くと、ルイが説明を始めた。そしてじっとエリスを見つめる。
「え?……あ、うん。分かった」
首を傾げながらも、ゆっくりとルイの背中から下りると、エリスは本棚の右端へと移動する。
本棚の側面をそっと触る。すると、触ってすぐに何か硬い物があることに気が付いた。
先程ルイが『エリスの身長に合わせた』と言っていたのはこういうことなのだろう。
「ルイ、あったよ」
手を動かさないようにしてエリスが振り返った。
「その石には魔法がかけてある。石に触れながら扉を開くように念じてごらん」
「うん」
言われた通りにエリスは石に触れたまま、『開いて』と念じたのだった。
すると突然、押してもいないのにすっと本棚ごと後ろの壁が動き出した。
「あっ!」
思わず声を上げてしまい、エリスは慌てて両手で口を塞いだ。
「上出来だよ、エリス。……その石はね、エリスにしか反応しないように作ってあるんだ」
いつの間にかエリスのすぐ後ろに立っていたルイがじっと見上げていた。
「え?」
「入ろう」
驚いた顔で振り返ったエリスに答えることなく、ルイは先に『秘密の部屋』へと入って行った。
「ルイっ」
慌てたようにエリスも中へと入る。その瞬間、壁がゆっくりと閉じられていった。
城のことは優希たちよりも知っているとはいえ、かくれんぼの鬼は妖精たちである。
隠れる場所を探すのに苦労するのは変わりなかった。
優希とアリスが海斗とジェイクの背中に乗ったように、エリスも狼になったルイの背中に乗って移動していた。
「ねぇ、ルイ。どこに行くの?」
ぎゅっと背中にしがみついたエリスがルイに話し掛ける。
「そうだな……。もしかしたら彼らには知られているかもしれないが、あそこに行こうと思っている」
走りながらルイはエリスに答える。
普段は王族とは思えないような丁寧な言葉遣いをしているルイなのだが、身内やエリスに対しては口調が違っていた。いや、これが本来のルイの話し方なのだろう。
他の人が聞いたら随分と印象が変わるかもしれない。
「あそこ? もしかして秘密の部屋?」
顔をルイの耳の近くに寄せながらエリスが小さな声で問い掛ける。
「あぁ、そうだ。……俺は今、狼の姿になっているし、他の場所へ行って城の人たちを混乱させたくないからな」
「そっか……うん、そうだね」
ぎゅっと首元にしがみつきながら少しだけ涙ぐむ。エリスはルイの言葉が嬉しかった。ルイにとっては当たり前の答えなのだろうが、皆のことを大切に思っているのが伝わったからだ。
「……エリス?」
走りながらルイは背中に乗るエリスに問い掛ける。
「何?」
なぜ呼ばれたのか分からず、エリスはきょとんとして首を傾げる。
「いや……泣いているような気がしたから」
「泣いてないよっ」
「そうか」
鼻をすするような音が聞こえ、ルイはエリスを心配していたのだが、エリスは顔を赤くしながらすぐに反論した。
確かに聞こえた気がしたルイは背中の上のエリスを気にしながらも、今は隠れることを優先しなければならない為、先を急いだ。
自分の部屋の前でルイはぴたりと止まる。
「エリス、開けてくれるか?」
「うん」
ゆっくりとルイの背中から下りると、エリスはぎゅっとルイの部屋の扉の取っ手を握り締める。
金色の豪華な取っ手。
ふとエリスは部屋の扉を見上げた。
豪華で美しい扉。王太子の部屋に相応しい。
そう、ルイは王家の長男である。本来であればルイが王位を継ぐはずだったのだ。
王と王妃が黒の魔女によって殺され、王家はルイとキティだけが残された。
黒の魔女を倒したことにより王位を奪還し、王太子であるルイがワンダーランドの王となるはずだった。
しかし、ルイは継承権を辞退し、今日の結婚式後にキティが王位を継承することとなっている。
(もしかして……俺のせい?)
取っ手をぎゅっと握り締めたまま、エリスはそんなことを思っていた。
ルイが王位を継がないのは、自分が男のせいなのでは――と。
「エリス? どうかしたのか?」
「あっ、ごめん。すぐ開けるね」
不思議そうに首を傾げるルイを振り返ると、エリスは慌てたように部屋の扉を開ける。
音をさせることなくゆっくりと扉が開いた。
城が元に戻ってこの扉も修繕されたのか、美しさも建付けの悪さも直っていた。
「入ろう」
するりとルイがエリスの横を通って部屋の中に入った。
すぐにエリスも後に続く。部屋に入るとそっと音を立てないように扉を閉める。
そのまま部屋の明かりを点ける為にスイッチを探した。
「エリス、点けなくていい。場所は分かるからこのまま行こう。電気が点いていると、ここにいると言っているようなものだからな」
そう言ってルイはあの秘密の部屋の入り口に向かって歩き出した。
エリスもこくりと頷くと、ルイの後に続いた。
しかし暗闇の中、何かに足の先をぶつけてしまった。
「痛っ!」
「エリスっ」
声を上げたエリスに、慌てたようにルイが振り返る。
「すまない……エリスはよく見えないのだな。俺の背中に乗るんだ」
そう言ってルイはエリスの横に立ち、じっとエリスを見上げた。
「ごめん」
「謝らなくていい。気が付かなかった俺のせいだ」
「ありがと、ルイ」
ゆっくりと確認するようにルイに触れると、エリスは恐る恐るルイの背中に乗った。まだ目が慣れておらず、ルイの背中の位置がよく分かっていなかったからだ。
「大丈夫か?」
「よっ……と。うん、大丈夫」
しっかりと背中に乗ったことを確認してルイに返事をする。
「よし、では移動するぞ」
再び部屋の端へと移動する。以前とは違い、あの『秘密の部屋』の壁の前には大きな本棚が置かれている。
誰にも気づかれないようにする為と、もう二度と入らないようにする為だ。
「まさか、また入ることになるとはな」
本棚の前で立ち止まると、ルイはじっと本棚を見上げる。
「これ、どうするの?」
ルイの背中に乗ったまま、エリスはことんと首を傾げる。
中に入れないようにする為に本棚を置いてあるのだ。どうするというのか。
「方法はある。もう二度と入るつもりはなかったんだが……。エリス、本棚の右端に石を嵌め込んである。それを見つけてくれ。エリスの身長に合わせてあるからすぐに分かるはずだ」
大きく溜め息を付くと、ルイが説明を始めた。そしてじっとエリスを見つめる。
「え?……あ、うん。分かった」
首を傾げながらも、ゆっくりとルイの背中から下りると、エリスは本棚の右端へと移動する。
本棚の側面をそっと触る。すると、触ってすぐに何か硬い物があることに気が付いた。
先程ルイが『エリスの身長に合わせた』と言っていたのはこういうことなのだろう。
「ルイ、あったよ」
手を動かさないようにしてエリスが振り返った。
「その石には魔法がかけてある。石に触れながら扉を開くように念じてごらん」
「うん」
言われた通りにエリスは石に触れたまま、『開いて』と念じたのだった。
すると突然、押してもいないのにすっと本棚ごと後ろの壁が動き出した。
「あっ!」
思わず声を上げてしまい、エリスは慌てて両手で口を塞いだ。
「上出来だよ、エリス。……その石はね、エリスにしか反応しないように作ってあるんだ」
いつの間にかエリスのすぐ後ろに立っていたルイがじっと見上げていた。
「え?」
「入ろう」
驚いた顔で振り返ったエリスに答えることなく、ルイは先に『秘密の部屋』へと入って行った。
「ルイっ」
慌てたようにエリスも中へと入る。その瞬間、壁がゆっくりと閉じられていった。
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