138 / 249
Wedding~消えた花嫁~
第27話
しおりを挟む
「さて、これからが大変ですよ、皆さん」
しっかりとエリスを抱き締めていたルイだったが、すっとエリスを離すと、突然ぱんっと手を叩いて部屋の中の人たちを見回すようにして話し始めた。
「まず、セバスチャンと私で、お待たせしている会場のお客様に説明をします。セバスチャンは城の人たちへの指示もよろしく。イーサンは騎士たちを集めて、警備と会場の設営のチェックを頼む。それから、アリスとジェイクはダニーの所へ行って、料理の状況の確認と、式が遅れることを伝えてくれ。あと、先程ダニーが手伝いが欲しいと言っていたから聞いてやってくれないか? 最後にキティとライアン。埃だらけじゃないか。君たちは今日の主役だって自覚はあるのかな? ちゃんと綺麗にしてもらうこと。キティは化粧もね」
ひとつひとつ、それぞれに指示を出していくルイ。
指示を出された人たちはなんとも言えない表情をしている。
「俺たちも何か手伝うことない?」
大変そうだと、優希がルイに向かって手を挙げた。
「いえ、優希くんと海斗くんはお客様ですから、ゲストルームでお待ちください。我々だけで大丈夫です」
「そう?」
にこりと笑って答えるルイに、優希はちょっと物足りなさそうな顔で首を傾げた。
「俺たちは手を出すなってことだ」
ぼそっと海斗が優希に耳打ちした。
「あ……」
なるほどと優希も納得したのだった。
「忙しそうなところ悪いんだが、私はいつ戻してもらえるのだろうか?」
じっと黙って聞いていたグスターヴァルが困ったような顔で発言した。
「あぁっ! そうでしたね。じゃあ、グスターヴァルも折角ですから式に列席ください」
思い出したようにルイはぱんと手を叩くと、にこりと笑ってグスターヴァルに答えた。
「なんだと?」
唖然とした顔でグスターヴァルはルイを見つめ返す。
「えっ? グスターヴァルも出席してくれるの? 嬉しいっ!」
両手を胸の前でぎゅっと握り締め、キティが目をキラキラと輝かせながらグスターヴァルをじっと見つめている。
キティはグスターヴァルが人の姿に変えられたことを知らないはずだが、なぜ驚いていないのだろうと優希は不思議そうに首を傾げる。
もしくは単に天然なのかもしれない。
「…………」
今日の主役に言われたらもう断ることはできないと、グスターヴァルは大きく溜め息を付いた。
「あぁそうそう、衣装が必要ですね。エリス、私の部屋にグスターヴァルを案内してくれるかい? それから……」
グスターヴァルの反応を全く気にしていない様子でルイが話を続ける。
エリスに案内を指示した後、何を考えているのかきょろきょろと周りを見回した。
「あぁっ! 君がいいね。えっと……」
じっと見つめた先にいたのは騎士のイアンであった。
結局あのまま会場には戻らず、ずっとこの部屋に滞在していたのだった。
「えっ? 俺ですか?」
ぎょっとしたように自分を指差しながらイアンがルイに問い返した。
「そう。グスターヴァルが着る衣装を見繕ってくれませんか?」
「ええっ!」
突然の指名に更に驚いた顔でイアンが声を上げた。なぜ自分が指名されたのか。
「君が適任だ。グスターヴァルは自分じゃ分からないだろうし、エリスは案内役までだし。優希くんと海斗くんはゲストだしね。ほら、君しかいないでしょう?」
再びにこりとルイが微笑む。
「わ、分かりました……」
あまり納得はできなかったが、王子に頼まれたことを断れるはずもなく、イアンは苦笑いしながら承諾したのだった。
やり取りを聞いていた優希は、なぜエリスは案内役までなんだろうと首を傾げる。
すると、再び横にいた海斗がこそっとその答えを話したのだった。
「エリスには選ばせたくないんだろ」
自分でもそうすると海斗は考えていた。実際その通りなのだろう。
「なるほど……」
うんうんと頷きながら優希も納得する。
「では皆さん、よろしくお願いしますね」
再び周りをぐるっと見回すと、ルイがにこりと笑う。
しかしその笑顔はまるで『早く行動しろ』と言っているようであった。
慌てたようにアリスとジェイクが部屋を出て行った。
イーサンも舌打ちをしながら面倒臭そうにその後に続く。
そしてルイとセバスチャンも顔を見合わせると会場へと向かった。
「じゃあ、グスターヴァルと……えっと……」
ルイの背中を見送っていたエリスはぱっと振り返ると、グスターヴァルとイアンに向かって話し掛ける。
しかし、イアンの名前を知らないことに気が付き止まってしまった。
「あっ、えっと、イアンです」
名前が分からないことを察したイアンが緊張しながら自己紹介をしたのだった。
「イアンね。じゃあ、ルイの部屋に案内するね。……あ、カイトとホワイトキャットはゲストルームの場所は分かる?」
じっとイアンの顔を見て名前を呼ぶと、グスターヴァルとイアンを交互に見ながらエリスが話す。
そして思い出したように優希と海斗を振り返ると、にこりと笑って問い掛けた。
なぜ自分のことを『ホワイトキャット』と呼ぶのだろうと優希は首を傾げる。
ルイもアリスもジェイクも名前を知っているのに誰も伝えなかったのだろうか。
しかし、まぁいいかと考え、「うん、大丈夫」と手を振って3人を見送った。
海斗も優希の隣で「あぁ」とだけ返事をしていた。
ふたりもゲストルームへと向かう為、部屋を出る。
「優希」
部屋を出てすぐ声を掛けると、海斗はすっと優希の手を握った。
「っ!」
どきっとしながら優希は海斗を見上げる。
しかし、優しく微笑んでいる海斗を怒る気になれず、真っ赤な顔のままそのまま前を向く。
ふたりが部屋を出たのと同時に、使用人たちが慌てて控室の中へと入っていった。
☆☆☆
「ルイの部屋までちょっと歩くよ。そんなに複雑じゃないから、道順覚えてね。俺も君たちを案内したら会場の準備の手伝いをしに行くから、帰りはふたりで戻ってね」
歩きながらエリスがそう説明した。
ルイからは特に指示はなかったが、エリスにも仕事があったのだ。
キティがいなくなったという話を聞いて慌てて花嫁の控室へ行ったものの、本来の仕事も忘れてはいなかった。
「あ、はい……ちゃんと記憶しておきます」
エリスの後ろをグスターヴァルと並んで歩きながら、イアンは相変わらず緊張した様子で答える。
イアンの方が年上ではあったが、エリスがルイの恋人なのは城の中では公然の事実であった。
そんなエリスが前に、そして初めて見た時からずっと気になっているグスターヴァルが隣にいるのだ。緊張するなという方が無理である。
「私も覚えておこう」
イアンの言葉に同意するように、グスターヴァルが前を見たままそう話した。
その言葉にイアンは思わずグスターヴァルを見上げながら頬を赤らめていたのだった。
しっかりとエリスを抱き締めていたルイだったが、すっとエリスを離すと、突然ぱんっと手を叩いて部屋の中の人たちを見回すようにして話し始めた。
「まず、セバスチャンと私で、お待たせしている会場のお客様に説明をします。セバスチャンは城の人たちへの指示もよろしく。イーサンは騎士たちを集めて、警備と会場の設営のチェックを頼む。それから、アリスとジェイクはダニーの所へ行って、料理の状況の確認と、式が遅れることを伝えてくれ。あと、先程ダニーが手伝いが欲しいと言っていたから聞いてやってくれないか? 最後にキティとライアン。埃だらけじゃないか。君たちは今日の主役だって自覚はあるのかな? ちゃんと綺麗にしてもらうこと。キティは化粧もね」
ひとつひとつ、それぞれに指示を出していくルイ。
指示を出された人たちはなんとも言えない表情をしている。
「俺たちも何か手伝うことない?」
大変そうだと、優希がルイに向かって手を挙げた。
「いえ、優希くんと海斗くんはお客様ですから、ゲストルームでお待ちください。我々だけで大丈夫です」
「そう?」
にこりと笑って答えるルイに、優希はちょっと物足りなさそうな顔で首を傾げた。
「俺たちは手を出すなってことだ」
ぼそっと海斗が優希に耳打ちした。
「あ……」
なるほどと優希も納得したのだった。
「忙しそうなところ悪いんだが、私はいつ戻してもらえるのだろうか?」
じっと黙って聞いていたグスターヴァルが困ったような顔で発言した。
「あぁっ! そうでしたね。じゃあ、グスターヴァルも折角ですから式に列席ください」
思い出したようにルイはぱんと手を叩くと、にこりと笑ってグスターヴァルに答えた。
「なんだと?」
唖然とした顔でグスターヴァルはルイを見つめ返す。
「えっ? グスターヴァルも出席してくれるの? 嬉しいっ!」
両手を胸の前でぎゅっと握り締め、キティが目をキラキラと輝かせながらグスターヴァルをじっと見つめている。
キティはグスターヴァルが人の姿に変えられたことを知らないはずだが、なぜ驚いていないのだろうと優希は不思議そうに首を傾げる。
もしくは単に天然なのかもしれない。
「…………」
今日の主役に言われたらもう断ることはできないと、グスターヴァルは大きく溜め息を付いた。
「あぁそうそう、衣装が必要ですね。エリス、私の部屋にグスターヴァルを案内してくれるかい? それから……」
グスターヴァルの反応を全く気にしていない様子でルイが話を続ける。
エリスに案内を指示した後、何を考えているのかきょろきょろと周りを見回した。
「あぁっ! 君がいいね。えっと……」
じっと見つめた先にいたのは騎士のイアンであった。
結局あのまま会場には戻らず、ずっとこの部屋に滞在していたのだった。
「えっ? 俺ですか?」
ぎょっとしたように自分を指差しながらイアンがルイに問い返した。
「そう。グスターヴァルが着る衣装を見繕ってくれませんか?」
「ええっ!」
突然の指名に更に驚いた顔でイアンが声を上げた。なぜ自分が指名されたのか。
「君が適任だ。グスターヴァルは自分じゃ分からないだろうし、エリスは案内役までだし。優希くんと海斗くんはゲストだしね。ほら、君しかいないでしょう?」
再びにこりとルイが微笑む。
「わ、分かりました……」
あまり納得はできなかったが、王子に頼まれたことを断れるはずもなく、イアンは苦笑いしながら承諾したのだった。
やり取りを聞いていた優希は、なぜエリスは案内役までなんだろうと首を傾げる。
すると、再び横にいた海斗がこそっとその答えを話したのだった。
「エリスには選ばせたくないんだろ」
自分でもそうすると海斗は考えていた。実際その通りなのだろう。
「なるほど……」
うんうんと頷きながら優希も納得する。
「では皆さん、よろしくお願いしますね」
再び周りをぐるっと見回すと、ルイがにこりと笑う。
しかしその笑顔はまるで『早く行動しろ』と言っているようであった。
慌てたようにアリスとジェイクが部屋を出て行った。
イーサンも舌打ちをしながら面倒臭そうにその後に続く。
そしてルイとセバスチャンも顔を見合わせると会場へと向かった。
「じゃあ、グスターヴァルと……えっと……」
ルイの背中を見送っていたエリスはぱっと振り返ると、グスターヴァルとイアンに向かって話し掛ける。
しかし、イアンの名前を知らないことに気が付き止まってしまった。
「あっ、えっと、イアンです」
名前が分からないことを察したイアンが緊張しながら自己紹介をしたのだった。
「イアンね。じゃあ、ルイの部屋に案内するね。……あ、カイトとホワイトキャットはゲストルームの場所は分かる?」
じっとイアンの顔を見て名前を呼ぶと、グスターヴァルとイアンを交互に見ながらエリスが話す。
そして思い出したように優希と海斗を振り返ると、にこりと笑って問い掛けた。
なぜ自分のことを『ホワイトキャット』と呼ぶのだろうと優希は首を傾げる。
ルイもアリスもジェイクも名前を知っているのに誰も伝えなかったのだろうか。
しかし、まぁいいかと考え、「うん、大丈夫」と手を振って3人を見送った。
海斗も優希の隣で「あぁ」とだけ返事をしていた。
ふたりもゲストルームへと向かう為、部屋を出る。
「優希」
部屋を出てすぐ声を掛けると、海斗はすっと優希の手を握った。
「っ!」
どきっとしながら優希は海斗を見上げる。
しかし、優しく微笑んでいる海斗を怒る気になれず、真っ赤な顔のままそのまま前を向く。
ふたりが部屋を出たのと同時に、使用人たちが慌てて控室の中へと入っていった。
☆☆☆
「ルイの部屋までちょっと歩くよ。そんなに複雑じゃないから、道順覚えてね。俺も君たちを案内したら会場の準備の手伝いをしに行くから、帰りはふたりで戻ってね」
歩きながらエリスがそう説明した。
ルイからは特に指示はなかったが、エリスにも仕事があったのだ。
キティがいなくなったという話を聞いて慌てて花嫁の控室へ行ったものの、本来の仕事も忘れてはいなかった。
「あ、はい……ちゃんと記憶しておきます」
エリスの後ろをグスターヴァルと並んで歩きながら、イアンは相変わらず緊張した様子で答える。
イアンの方が年上ではあったが、エリスがルイの恋人なのは城の中では公然の事実であった。
そんなエリスが前に、そして初めて見た時からずっと気になっているグスターヴァルが隣にいるのだ。緊張するなという方が無理である。
「私も覚えておこう」
イアンの言葉に同意するように、グスターヴァルが前を見たままそう話した。
その言葉にイアンは思わずグスターヴァルを見上げながら頬を赤らめていたのだった。
9
あなたにおすすめの小説
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
ふたなり治験棟 企画12月31公開
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる