129 / 182
第12章『誘う森』
9話
しおりを挟む
「ねぇタクヤ。あの光とタクヤが持ってるペンダントってなんか関係あるの?」
怒らせたばかりだというのに、リョウはタクヤの横に並ぶと無邪気な笑顔で問い掛ける。
「関係あるかは分かんないけど、ペンダントが何かに反応してるのは確かだと思う。……あとは、それが嫌なものじゃなければいいんだけどな」
やはりタクヤはリョウには甘いようだ。気にする様子もなく平然とした顔で答える。
しかしふと、頭に浮かんだものに再びぶるっと身震いしていた。
「嫌なもの?」
きょとんとした顔でリョウは小首を傾げる。
「……魔物の方がマシだな」
溜め息を付くと、タクヤは苦笑いしながらぼそりと呟いた。
「お化け?」
じっとタクヤを覗き込むようにしてリョウが問い掛ける。
「べ、別にっ、怖いとかじゃないからなっ!」
「ふぅん?」
真っ赤な顔で反論するタクヤをにやにやとしながらリョウがじっと見つめる。
「何か分かったのか?」
突然後ろから声がして、ふたりはハッとして振り返るとその場に立ち止まった。
そこには爽やかに笑うカイがいた。
ふたりの所まで歩いて来ると、にこりと笑ってふたりを見つめる。
「何かって?」
面白くなさそうに口を尖らせ、タクヤは睨み付けるようにカイに問い返す。
カイに対する態度も相変わらずである。
「いや、アレかな? とか、もしかしたらアレかも、とかね」
「アレってなんだよっ!」
「もちろん、アレはアレだよ」
真っ赤な顔で怒鳴り付けるタクヤに、カイは楽しそうに満面の笑みで答える。
「だからなんなんだよっ!」
怒鳴りながらも悔しくなり、タクヤは涙目になりながらカイを睨み付けた。
「何してんだよ」
今度はイズミの声が聞こえ、タクヤはちらりと振り返る。
「何が?」
「何がって、お前がだよ」
涙目のまま、むすっと口を尖らせるタクヤを、イズミは呆れた顔で答える。
「別にっ、どうもしないよっ」
そう言ってタクヤは再び歩き出してしまった。
イズミにも馬鹿にされると思ったのだ。
「何を拗ねてんだ……まったく。別に苦手な物のひとつやふたつ、気にすることないだろ。いちいち反応するからあいつらが面白がるんだ」
大股で歩くタクヤに追いつくと、イズミは溜め息交じりにタクヤに言い聞かせる。
「しょうがないじゃんっ、俺はこういう性格なのっ!」
睨み付けるようにイズミを見ると、タクヤは更に歩みを速める。
「おいっ。……お前だって、いつも俺の気持ちなんてっ……」
追い掛けるように自分も速く歩き出したイズミだったが、ハッとして口を押えるとその場で立ち止まってしまった。
「えっ?」
声を荒げたイズミに驚き、タクヤは振り返って立ち止まる。
「聞き返すな……なんでもない」
じっと自分を見つめるタクヤからイズミはぱっと目を逸らした。
「……ねぇ、イズミ。もしかして、俺のこと心配してくれてんの?」
先程聞こえた言葉が気になり、タクヤはイズミの所まで引き返すと覗き込むようにして問い掛ける。
「うるせぇ黙れっ。知るかっ」
いつものように答えることなくイズミはぷいっと横を向いてしまう。
しかし、その横顔が真っ赤になっていることに気が付き、タクヤは顔を綻ばせながら「ありがと」とぼそりと呟いた。
☆☆☆
少しずつ近付いているはずなのだが、全くといっていいほど距離が縮まっていないように思える。
先程から少しだけ嫌な予感がする。
しかし、それを認めたくないのも事実だ。
「なぁ~んかさ。無意味な感じ?」
ぼそりと呟いてみる。
「何がだ?」
少し冷たさを含む返事が返ってきた。
「なんも」
軽く舌打ちをして、タクヤは少し早足に歩いてイズミから離れる。
「…………」
子供だな、と思いながら前を歩くタクヤを見つめ、追い掛けることはせずイズミはただ深く溜め息を付いた。
少し後ろから付いてきている気配を感じながら、タクヤは先頭を大股に歩いていた。
自分たち以外に気配を感じない。
あの光は一体なんなのか。
ひとりで歩いているうちに、段々と不安に襲われていくのを感じた。
ふと立ち止まって後ろを振り返り、自分の不安を取り除こう――、そう考えた時であった。
突然自分たちの右側から物凄い轟音がした。
地響きにも似たその音は、こちらへ近付いてきているようにも思える。
――ヤバイ。
誰もがそう思った。
どちらへ行けばいいのか分からないが一斉に走り出していた。
何かが近付いてきている。
魔物? 人? それとも別の何か?
何がなんだか分からないといった目まぐるしさの中で、頭をフル回転させる。
「もうっ! なんにも襲ってこないって言ったの誰だよっ!」
思わず叫んでいた。
皆がどこへ向かったのかは分からないが、誰かが自分と同じ方向に走ってきているのは分かった。
誰の気配かなんて感じている余裕もない。
このまま走り続けているのも混乱でおかしくなりそうだった為、声に出してみただけであった。
しかし――。
「はぁ? 知らねぇよっ」
返ってきた返事は面倒臭そうに答えただけであったが、その声に思わず走りながら振り返る。
「えっ!?」
「んなこたぁ、どうでもいいんだよっ! さっさと逃げねぇとヤバイんだよっ!」
必死に走るその姿は、タクヤが思う3人の誰でもなかった。
「へ?」
一言しか出てこない。
全く何がなんだか分からない。
「……アンタ、誰?」
走りながら自分の右側を走る男に尋ねる。
「そんなこと答えてる場合かっ!」
周りが暗く、走りながらちらっと見ただけの為はっきりとは分からないが、声質からしてもタクヤと同じくらいの年齢に感じた。
短めの髪と、一瞬だけ見えた少しきつめの瞳。身長はタクヤと同じくらいだろうか。
身なりからはその人物が勇者なのかどうかも分からない。
ただ、腰の辺りを見ると剣を所有していることが確認できた為、きっと勇者であろう。
しかし、いつから居たのか。
そばに居たならなぜ気が付かなかったのか。
何かが押し迫っているにも関わらず、タクヤは男のことを必死で考えていた。
すると、すぐ右側から更に大きな音がし、近くの木がなぎ倒されたのが見えた。
ふたりは反射的にその場に立ち止まり、剣を構えた。
怒らせたばかりだというのに、リョウはタクヤの横に並ぶと無邪気な笑顔で問い掛ける。
「関係あるかは分かんないけど、ペンダントが何かに反応してるのは確かだと思う。……あとは、それが嫌なものじゃなければいいんだけどな」
やはりタクヤはリョウには甘いようだ。気にする様子もなく平然とした顔で答える。
しかしふと、頭に浮かんだものに再びぶるっと身震いしていた。
「嫌なもの?」
きょとんとした顔でリョウは小首を傾げる。
「……魔物の方がマシだな」
溜め息を付くと、タクヤは苦笑いしながらぼそりと呟いた。
「お化け?」
じっとタクヤを覗き込むようにしてリョウが問い掛ける。
「べ、別にっ、怖いとかじゃないからなっ!」
「ふぅん?」
真っ赤な顔で反論するタクヤをにやにやとしながらリョウがじっと見つめる。
「何か分かったのか?」
突然後ろから声がして、ふたりはハッとして振り返るとその場に立ち止まった。
そこには爽やかに笑うカイがいた。
ふたりの所まで歩いて来ると、にこりと笑ってふたりを見つめる。
「何かって?」
面白くなさそうに口を尖らせ、タクヤは睨み付けるようにカイに問い返す。
カイに対する態度も相変わらずである。
「いや、アレかな? とか、もしかしたらアレかも、とかね」
「アレってなんだよっ!」
「もちろん、アレはアレだよ」
真っ赤な顔で怒鳴り付けるタクヤに、カイは楽しそうに満面の笑みで答える。
「だからなんなんだよっ!」
怒鳴りながらも悔しくなり、タクヤは涙目になりながらカイを睨み付けた。
「何してんだよ」
今度はイズミの声が聞こえ、タクヤはちらりと振り返る。
「何が?」
「何がって、お前がだよ」
涙目のまま、むすっと口を尖らせるタクヤを、イズミは呆れた顔で答える。
「別にっ、どうもしないよっ」
そう言ってタクヤは再び歩き出してしまった。
イズミにも馬鹿にされると思ったのだ。
「何を拗ねてんだ……まったく。別に苦手な物のひとつやふたつ、気にすることないだろ。いちいち反応するからあいつらが面白がるんだ」
大股で歩くタクヤに追いつくと、イズミは溜め息交じりにタクヤに言い聞かせる。
「しょうがないじゃんっ、俺はこういう性格なのっ!」
睨み付けるようにイズミを見ると、タクヤは更に歩みを速める。
「おいっ。……お前だって、いつも俺の気持ちなんてっ……」
追い掛けるように自分も速く歩き出したイズミだったが、ハッとして口を押えるとその場で立ち止まってしまった。
「えっ?」
声を荒げたイズミに驚き、タクヤは振り返って立ち止まる。
「聞き返すな……なんでもない」
じっと自分を見つめるタクヤからイズミはぱっと目を逸らした。
「……ねぇ、イズミ。もしかして、俺のこと心配してくれてんの?」
先程聞こえた言葉が気になり、タクヤはイズミの所まで引き返すと覗き込むようにして問い掛ける。
「うるせぇ黙れっ。知るかっ」
いつものように答えることなくイズミはぷいっと横を向いてしまう。
しかし、その横顔が真っ赤になっていることに気が付き、タクヤは顔を綻ばせながら「ありがと」とぼそりと呟いた。
☆☆☆
少しずつ近付いているはずなのだが、全くといっていいほど距離が縮まっていないように思える。
先程から少しだけ嫌な予感がする。
しかし、それを認めたくないのも事実だ。
「なぁ~んかさ。無意味な感じ?」
ぼそりと呟いてみる。
「何がだ?」
少し冷たさを含む返事が返ってきた。
「なんも」
軽く舌打ちをして、タクヤは少し早足に歩いてイズミから離れる。
「…………」
子供だな、と思いながら前を歩くタクヤを見つめ、追い掛けることはせずイズミはただ深く溜め息を付いた。
少し後ろから付いてきている気配を感じながら、タクヤは先頭を大股に歩いていた。
自分たち以外に気配を感じない。
あの光は一体なんなのか。
ひとりで歩いているうちに、段々と不安に襲われていくのを感じた。
ふと立ち止まって後ろを振り返り、自分の不安を取り除こう――、そう考えた時であった。
突然自分たちの右側から物凄い轟音がした。
地響きにも似たその音は、こちらへ近付いてきているようにも思える。
――ヤバイ。
誰もがそう思った。
どちらへ行けばいいのか分からないが一斉に走り出していた。
何かが近付いてきている。
魔物? 人? それとも別の何か?
何がなんだか分からないといった目まぐるしさの中で、頭をフル回転させる。
「もうっ! なんにも襲ってこないって言ったの誰だよっ!」
思わず叫んでいた。
皆がどこへ向かったのかは分からないが、誰かが自分と同じ方向に走ってきているのは分かった。
誰の気配かなんて感じている余裕もない。
このまま走り続けているのも混乱でおかしくなりそうだった為、声に出してみただけであった。
しかし――。
「はぁ? 知らねぇよっ」
返ってきた返事は面倒臭そうに答えただけであったが、その声に思わず走りながら振り返る。
「えっ!?」
「んなこたぁ、どうでもいいんだよっ! さっさと逃げねぇとヤバイんだよっ!」
必死に走るその姿は、タクヤが思う3人の誰でもなかった。
「へ?」
一言しか出てこない。
全く何がなんだか分からない。
「……アンタ、誰?」
走りながら自分の右側を走る男に尋ねる。
「そんなこと答えてる場合かっ!」
周りが暗く、走りながらちらっと見ただけの為はっきりとは分からないが、声質からしてもタクヤと同じくらいの年齢に感じた。
短めの髪と、一瞬だけ見えた少しきつめの瞳。身長はタクヤと同じくらいだろうか。
身なりからはその人物が勇者なのかどうかも分からない。
ただ、腰の辺りを見ると剣を所有していることが確認できた為、きっと勇者であろう。
しかし、いつから居たのか。
そばに居たならなぜ気が付かなかったのか。
何かが押し迫っているにも関わらず、タクヤは男のことを必死で考えていた。
すると、すぐ右側から更に大きな音がし、近くの木がなぎ倒されたのが見えた。
ふたりは反射的にその場に立ち止まり、剣を構えた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
38
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる