157 / 166
第2章
投げつけられる石
しおりを挟む
私たちの後ろからは、後ろ手に縛られたイヴァンカ国王族たちが歩かされている。どこまでも強気な2人は広間に集まる国民とともに、戦争を起こすつもりなのだろう。だがもし戦争が起こったところで前線には立たず、兵士・国民が死んでいくのをなにも思わず、感じずに見ているだけの王族。それが現実なのだろう。
歩いた先には王宮広場に集まる国民の姿が見える。ザワザワザワっとしていたのが嘘のように、王たちの姿が見えるとその場が静まり返った。
王たちが立つ場所より1階低い場所、中央広場から近い場所に姿を現したのは囚われているイヴァンカ国の王族達。
そこは上階とは違い、手すりなどがない作りの場になっている。広場に集まる民に少しでも近づける場所として作られたそうだ。そのため、王族たちはその手すりがない場所の最前面まで連れていかれた。
自国の王族が見えたからなのか不思議な緊張感が漂っている。そしてそうしている間にも広場には続々と国民が押し寄せ、広場は人で溢れかえっている。
大勢の人で埋め尽くされているのに、整然とした場に緊張感など感じないのか、それともこの緊張感に心地よさを感じたのか、第3王子が声を上げた。
「皆の者!!私たちのためによくぞ集まった!!
私たちは不当に占拠したカリシャール国の兵士に囚われてしまった。
しかし私たちは誇り高きイヴァンカ国の民だ!このような行いに屈することなくしかと国を守ろう!!さぁ!!敵はあいつらだ!!!」
それに追随するように第4王女が甲高い声を上げる。
「その通りよ!私たちの国を妬んだカリシャール国のこの仕打ちは許されるものではないわ!あなた達!今すぐこの無礼な者たちを取り囲んでしまいなさい!
私たちは誇り高き民族なのよ!こんなことに屈するような民族でないことを知らしめなさい!!」
そんな声が広場に響いたとき、ビュッと音がした。と思ったら、「うっ!!」と声がして第3王子がうずくまった。
そしてまたビュッっといくつも音が聞こえたと思ったら、次は第4王女が頭を押さえていた。
「ちょっと!!誰よ!!
敵はあっちだって言ってるでしょう!!間違ったとは言え、自国の王族に石をぶつけるだなんて許されないわよ!覚えていなさい!!」
そう、広場から投げられた石が王子にも王女にもぶつかり、ぶつかった部分を押さえていたのだ。他の王族にもぶつかっているが、他は耐えるようにその場に立ったままだ。
どうしてこの人たちは王族としての矜持を持っているはずなのに、こんなに落ちぶれてしまったのか。
どこかで間違ってしまったのか、それともこの国の王族は元々こうであったのか。歴史でしか知りようがなく、心の内など知るはずもない。
それでも今さら、今まで起こったことをなかったことになどできない。
この選択も彼らが選んだ選択でしかなかったということ。
歩いた先には王宮広場に集まる国民の姿が見える。ザワザワザワっとしていたのが嘘のように、王たちの姿が見えるとその場が静まり返った。
王たちが立つ場所より1階低い場所、中央広場から近い場所に姿を現したのは囚われているイヴァンカ国の王族達。
そこは上階とは違い、手すりなどがない作りの場になっている。広場に集まる民に少しでも近づける場所として作られたそうだ。そのため、王族たちはその手すりがない場所の最前面まで連れていかれた。
自国の王族が見えたからなのか不思議な緊張感が漂っている。そしてそうしている間にも広場には続々と国民が押し寄せ、広場は人で溢れかえっている。
大勢の人で埋め尽くされているのに、整然とした場に緊張感など感じないのか、それともこの緊張感に心地よさを感じたのか、第3王子が声を上げた。
「皆の者!!私たちのためによくぞ集まった!!
私たちは不当に占拠したカリシャール国の兵士に囚われてしまった。
しかし私たちは誇り高きイヴァンカ国の民だ!このような行いに屈することなくしかと国を守ろう!!さぁ!!敵はあいつらだ!!!」
それに追随するように第4王女が甲高い声を上げる。
「その通りよ!私たちの国を妬んだカリシャール国のこの仕打ちは許されるものではないわ!あなた達!今すぐこの無礼な者たちを取り囲んでしまいなさい!
私たちは誇り高き民族なのよ!こんなことに屈するような民族でないことを知らしめなさい!!」
そんな声が広場に響いたとき、ビュッと音がした。と思ったら、「うっ!!」と声がして第3王子がうずくまった。
そしてまたビュッっといくつも音が聞こえたと思ったら、次は第4王女が頭を押さえていた。
「ちょっと!!誰よ!!
敵はあっちだって言ってるでしょう!!間違ったとは言え、自国の王族に石をぶつけるだなんて許されないわよ!覚えていなさい!!」
そう、広場から投げられた石が王子にも王女にもぶつかり、ぶつかった部分を押さえていたのだ。他の王族にもぶつかっているが、他は耐えるようにその場に立ったままだ。
どうしてこの人たちは王族としての矜持を持っているはずなのに、こんなに落ちぶれてしまったのか。
どこかで間違ってしまったのか、それともこの国の王族は元々こうであったのか。歴史でしか知りようがなく、心の内など知るはずもない。
それでも今さら、今まで起こったことをなかったことになどできない。
この選択も彼らが選んだ選択でしかなかったということ。
35
あなたにおすすめの小説
【完結】幼い頃からの婚約を破棄されて退学の危機に瀕している。
桧山 紗綺
恋愛
子爵家の長男として生まれた主人公は幼い頃から家を出て、いずれ婿入りする男爵家で育てられた。婚約者とも穏やかで良好な関係を築いている。
それが綻んだのは学園へ入学して二年目のこと。
「婚約を破棄するわ」
ある日突然婚約者から婚約の解消を告げられる。婚約者の隣には別の男子生徒。
しかもすでに双方の親の間で話は済み婚約は解消されていると。
理解が追いつく前に婚約者は立ち去っていった。
一つ年下の婚約者とは学園に入学してから手紙のやり取りのみで、それでも休暇には帰って一緒に過ごした。
婚約者も入学してきた今年は去年の反省から友人付き合いを抑え自分を優先してほしいと言った婚約者と二人で過ごす時間を多く取るようにしていたのに。
それが段々減ってきたかと思えばそういうことかと乾いた笑いが落ちる。
恋のような熱烈な想いはなくとも、将来共に歩む相手、長い時間共に暮らした家族として大切に思っていたのに……。
そう思っていたのは自分だけで、『いらない』の一言で切り捨てられる存在だったのだ。
いずれ男爵家を継ぐからと男爵が学費を出して通わせてもらっていた学園。
来期からはそうでないと気づき青褪める。
婚約解消に伴う慰謝料で残り一年通えないか、両親に援助を得られないかと相談するが幼い頃から離れて育った主人公に家族は冷淡で――。
絶望する主人公を救ったのは学園で得た友人だった。
◇◇
幼い頃からの婚約者やその家から捨てられ、さらに実家の家族からも疎まれていたことを知り絶望する主人公が、友人やその家族に助けられて前に進んだり、贋金事件を追ったり可愛らしいヒロインとの切ない恋に身を焦がしたりするお話です。
基本は男性主人公の視点でお話が進みます。
◇◇
第16回恋愛小説大賞にエントリーしてました。
呼んでくださる方、応援してくださる方、感想なども皆様ありがとうございます。とても励まされます!
本編完結しました!
皆様のおかげです、ありがとうございます!
ようやく番外編の更新をはじめました。お待たせしました!
◆番外編も更新終わりました、見てくださった皆様ありがとうございます!!
【完結】婚約破棄された令嬢の毒はいかがでしょうか
まさかの
恋愛
皇太子の未来の王妃だったカナリアは突如として、父親の罪によって婚約破棄をされてしまった。
己の命が助かる方法は、友好国の悪評のある第二王子と婚約すること。
カナリアはその提案をのんだが、最初の夜会で毒を盛られてしまった。
誰も味方がいない状況で心がすり減っていくが、婚約者のシリウスだけは他の者たちとは違った。
ある時、シリウスの悪評の原因に気付いたカナリアの手でシリウスは穏やかな性格を取り戻したのだった。
シリウスはカナリアへ愛を囁き、カナリアもまた少しずつ彼の愛を受け入れていく。
そんな時に、義姉のヒルダがカナリアへ多くの嫌がらせを行い、女の戦いが始まる。
嫁いできただけの女と甘く見ている者たちに分からせよう。
カナリア・ノートメアシュトラーセがどんな女かを──。
小説家になろう、エブリスタ、アルファポリス、カクヨムで投稿しています。
不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。
桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。
戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。
『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。
※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。
時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。
一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。
番外編の方が本編よりも長いです。
気がついたら10万文字を超えていました。
随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!
【完結】悪役令嬢は折られたフラグに気が付かない〜王子たちは悪役令嬢の平穏を守れるのか!?〜【全23話+おまけ2話】
早奈恵
恋愛
エドウィン王子から婚約破棄されて、修道院でいじめ抜かれて死んでしまう予知夢を見た公爵令嬢アデリアーナは、男爵令嬢のパナピーアに誘惑されてしまうはずの攻略対象者との出会いを邪魔して、予知夢を回避できるのか試そうとする。
婚約破棄への道を自分で潰すつもりなのに、現実は何だか予知夢の内容とどんどんかけ離れて、知らないうちに話が進んでいき……。
宰相インテリ子息、騎士団長の脳筋子息、実家を継ぐために養子になったわんこ系義弟、そして婚約者の王太子エドウィンが頑張る話。
*リハビリに短編を書く予定が中編くらいになってしまいましたが、すでにラストまで書き終えている完結確約作品です。全23話+おまけ2話、よろしくお願いします。
*短い期間ですがHOTランキング1位に到達した作品です。
【 完結 】「婚約破棄」されましたので、恥ずかしいから帰っても良いですか?
しずもり
恋愛
ミレーヌはガルド国のシルフィード公爵令嬢で、この国の第一王子アルフリートの婚約者だ。いや、もう元婚約者なのかも知れない。
王立学園の卒業パーティーが始まる寸前で『婚約破棄』を宣言されてしまったからだ。アルフリートの隣にはピンクの髪の美少女を寄り添わせて、宣言されたその言葉にミレーヌが悲しむ事は無かった。それよりも彼女の心を占めていた感情はー。
恥ずかしい。恥ずかしい。恥ずかしい!!
ミレーヌは恥ずかしかった。今すぐにでも気を失いたかった。
この国で、学園で、知っていなければならない、知っている筈のアレを、第一王子たちはいつ気付くのか。
孤軍奮闘のミレーヌと愉快な王子とお馬鹿さんたちのちょっと変わった断罪劇です。
なんちゃって異世界のお話です。
時代考証など皆無の緩い設定で、殆どを現代風の口調、言葉で書いています。
HOT2位 &人気ランキング 3位になりました。(2/24)
数ある作品の中で興味を持って下さりありがとうございました。
*国の名前をオレーヌからガルドに変更しました。
婚約破棄したくせに「僕につきまとうな!」とほざきながらストーカーするのやめて?
百谷シカ
恋愛
「うぅーん……なんか……うん、……君、違うんだよね」
「はっ!?」
意味不明な理由で婚約破棄をぶちかましたディディエ伯爵令息アンリ・ヴァイヤン。
そんな奴はこっちから願い下げよ。
だって、結婚したって意味不明な言掛りが頻発するんでしょ?
「付き合うだけ時間の無駄よ」
黒歴史と割り切って、私は社交界に返り咲いた。
「君に惚れた。フランシーヌ、俺の妻になってくれ」
「はい。喜んで」
すぐに新たな婚約が決まった。
フェドー伯爵令息ロイク・オドラン。
そして、私たちはサヴィニャック伯爵家の晩餐会に参加した。
するとそこには……
「おい、君! 僕につきまとうの、やめてくれないかッ!?」
「えっ!?」
元婚約者もいた。
「僕に会うために来たんだろう? そういうの迷惑だ。帰ってくれ」
「いや……」
「もう君とは終わったんだ! 僕を解放してくれ!!」
「……」
えっと、黒歴史として封印するくらい、忌み嫌ってますけど?
そういう勘違い、やめてくれます?
==========================
(他「エブリスタ」様に投稿)
断罪される令嬢は、悪魔の顔を持った天使だった
Blue
恋愛
王立学園で行われる学園舞踏会。そこで意気揚々と舞台に上がり、この国の王子が声を張り上げた。
「私はここで宣言する!アリアンナ・ヴォルテーラ公爵令嬢との婚約を、この場を持って破棄する!!」
シンと静まる会場。しかし次の瞬間、予期せぬ反応が返ってきた。
アリアンナの周辺の目線で話しは進みます。
王妃候補に選ばれましたが、全く興味の無い私は野次馬に徹しようと思います
真理亜
恋愛
ここセントール王国には一風変わった習慣がある。
それは王太子の婚約者、ひいては未来の王妃となるべく女性を決める際、何人かの選ばれし令嬢達を一同に集めて合宿のようなものを行い、合宿中の振る舞いや人間関係に対する対応などを見極めて判断を下すというものである。
要は選考試験のようなものだが、かといってこれといった課題を出されるという訳では無い。あくまでも令嬢達の普段の行動を観察し、記録し、判定を下すというシステムになっている。
そんな選ばれた令嬢達が集まる中、一人だけ場違いな令嬢が居た。彼女は他の候補者達の観察に徹しているのだ。どうしてそんなことをしているのかと尋ねられたその令嬢は、
「お構い無く。私は王妃の座なんか微塵も興味有りませんので。ここには野次馬として来ました」
と言い放ったのだった。
少し長くなって来たので短編から長編に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる