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しおりを挟む2人が部屋に押し込まれてから2日後、再度王家よりナティシアへの招待状が届いた。前回話ができなかったため、王宮で簡単な茶会の席を設けたいとのこと。
ナティシアの準備は執事に任せられることになり、ドレスだけでなくそれに見合ったアクセサリーも問題なく用意された。グレースが生まれてから初めて贅沢品を買い与えられるナティシア。
だが顔を緩めることはなかった。
今回は前回のようなことがないようにと指定された当日王家からの使いがナティシアを迎え、緊張するナティシアは王宮の中にある庭園に案内された。
さすが王宮の庭園。
綺麗な花々が咲き乱れており、花の香りが漂ってくるがきつすぎることもなく、調整されているのだろう。
そんな庭園の一角にはテーブルが用意されている。
そこにはすでに王妃陛下と王太子殿下の姿があった。
ナティシアは慌てて膝を曲げ、臣下の礼をとる。
本来ならここで許可があれば名を告げるところだがナティシアにはそれができない。どうしようかと思案していたところ、声が響いた。
「アクアンティ嬢、これは公式な場ではないの。堅苦しいのはなしよ。
それよりも急に呼び出してしまってごめんなさいね。前回のお茶会でお会いできるのを楽しみにしていたんだけど叶わなかったので、無理を言ってしまったの。
さぁ、座って。もしよければナティシアとお呼びしても?」
王妃陛下の言葉に顔をあげ、同意を示すように微笑みながら顔を縦に振る。
「ふふっ、ありがとう。
本当なら親族と共に来てもらって会話の補助をしてもらうのがいいと思ったんだけど、どうしてもあなたの家はそれがいい様には思えなくって。
だから余計なお世話かと思ったんだけど、彼女を連れてきたの。彼女も話すことができないから彼女とならあなたも話せるかと思って。」
そう言って王妃陛下の隣に立つのは陛下より年上に見える女性。きっと話すことができないという彼女となら手話で話せるかもと配慮してくださったのだろう。
しかしナティシアはそういったことを学んだことがなかった。
グライアンスは元々は字で意思疎通を図ろうとしていたが、グレースが生まれた途端その様子も見られなくなった。
そんな環境のため、手話の教師を雇うはずもなく、ナティシアは覚えることもできなかったのだ。
女性は手で何かをして見せたがナティシアが困惑の表情を浮かべたため、字で「手話がわかるか」と確認した。
ナティシアが素直に首を横に振ると女性は陛下に説明し戻って行った。
「ごめんなさいね。もしかしたらと思ったのだけど手話は分からなかったのね。
ちょっと面倒かもしれないけれど字での意思疎通でもいいかしら」
申し訳なさそうにナティシアに許可をとるが、ナティシアには断る理由もなく素直に頷いてみせ、バッグの中から紙とペンを机の上にとりだした。
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