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29.お茶会
しおりを挟むサロンに移りお茶をすることになったこの男は幼なじみの伯爵家次男カジューラ・スライス。
スライス伯爵家にはカジューラ様とその兄ショーン様とジョーイ様、妹のニーナがいる。母同士が仲がよかったスライス家とタンゼット家は一緒によく遊んでいた。ニーナは長男のショーン様と12歳年の離れた妹であり、ニーナが生まれるまでは年下の私にショーン様たちはよく気にかけてくれた。
けれど、この男だけはそれが気にくわないのか、毎回嫌味を言ってくる奴だった。
はじめはヒーローごっこをやっていた時だった。
王子役のショーン様と勇者役のジョーイ様が姫役の私を守ってくれていると、騎士役のカジューラ様が怒って私に言ってきた。
「王子にも勇者にも守ってもらうなんてなんてやつだ。本物の姫はいろんな男に守ってなんてもらわない。騎士に守ってもらうはずだ!!」
またみんなで図書館でショーン様とジョーイ様と一緒に勉強した時も怒っていた。
「女のくせにどうしてそんなに賢いんだ!!」
嫌みを言われないようにと気を付けてはいたけど、何かをやっては何か違うとこから嫌みをふっかけてくる。
きっと自分も年下なのに私だけが年下かのように扱われるのが嫌だったんだろう。
でもありがたいことにお兄様たちはそんなセドリック様を毎回往なしてくれた。だから自分が悪いと落ち込むことはなかったんだと本当に感謝している。
そんなセドリック様が私に婚約者ができたと聞いたときには、1番最初に屋敷に駆けつけた。
「キュリール!!婚約者ができたというのは本当か!!ど、どうせ軟弱な奴なんだろう!!そんな奴と結婚するなんて…」
そう言って何かと悪態をついていった。
それからも顔を見るたびに考え直したほうがいいんじゃないかとか、どうせそんな結婚長続きするはずない、なんて失礼なことを言っていった。
でも今考えればその言葉はどれも正解だった。というのがなおさら癪にさわる。
そういえば2人でお茶をした記憶なんてほとんどない。
本当に何かと突っかかってくる人だから周りが心配して、セドリック様がお茶をしようと誘うと誰かがいつも同席してくれていたのだ。だけど今日はそうもいかない。
お茶が準備され、机に並べられた菓子を見るとそれは本当に王都で人気があるという菓子ばかりだった。
しかも最近は人気がありすぎて入手困難だと聞いていたからちょっと嬉しい。
「お菓子をいただき、ありがとうございます。
しかも本当に人気のお菓子ばかりたくさん。
屋敷の者達と一緒に食べさせていただきます。
でも手に入れるのが大変だったんではありませんか?」
「いや、ちょっとした伝手があっただけだから気にしないでいい。
なぁ、頼むからその話し方やめてくれないか。気持ち悪い。
昔みたいに普通でいい」
私の質問に答えたかと思うと、とてもやりづらそうな顔をしながら頭をポリポリとかいてそんなことをいうセドリック様。
小さいころから一緒に遊んでいたからもちろん小さい頃はこんな口調だったわけではない。
でも嫌味ばかりいう彼に対しては距離を置く意味も込めて、いつからか敬語になった。
セドリック様が嫌がることはわかっていたけれど、自分が悪いということもわかってほしいものだ。
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