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30.傷物の女
しおりを挟む「そう言われましても…………
わかった。でも公の場ではこれまで通りの口調で話させていただきますので」
「あぁ、それでいい。
それはそれと……あー…その…大丈夫なのか?」
言いにくそうに切り出したかと思うと内容はそんなことだった。大丈夫かと言うのは離婚のことだろうか?と言う事はやはり心配してきてくれたのだ。
「えー、もちろん。
どちらかと言うと清々しているくらい。だって追い出す方法をずっと探していたんだもの。愛人を連れてきたからと言って離縁したとしてもあちらの有責にすることは難しい。それどころか人によっては『愛人の一人も許容できないなんて器の小さい女』なんて噂される。そんなの嫌だから耐えていたのに。
それが急に降って湧いて出た人によって即座に解決してもらえるなんて思ってもいないことでしょう?だから喜びはあっても悲しみは無いわ。
あるとしたらあんな男を選んでしまったって言う後悔くらい」
「あぁ、それはまぁなんというかお前の見る目がないというか…」
「はいはい、わかってる。
確かにセドリック様の言う通り見る目がなかったって自覚しています。だから次はいい人を見つけなくちゃ」
「次?もう次を探しているのか?」
驚いたように目を見開いて私にそう問いかけるセドリック様。
私だって探さなくて良いのなら探したくなんてない。しばらくは一人で気楽に過ごしたいと思っている。だけど伯爵家当主と言う立場上、そういうわけにもいかない。
「えー。ありがたいことに釣書もたくさん来てるわ。自分なら傷物の女でも気にしないって言う人がね」
「なんだその釣書は?それを、受けるのか?」
怒ったような顔をしてそういうが、正直そんな釣書は私だってお断りだ。
それでもすべてを断るのもどうかと思うから数件だけは会うつもりでいる。
「そうね。受けるかどうかはわからないけど、顔合わせぐらいはするつもり。子どもに関しては養子をもらってもいいと思うけど、建前上夫というのは必要になることも多いもの」
パーティーなど社交の場でパートナーが同伴することは少なくない。その時夫がいなければどこか問題があるのではないかと問題視する古びた偏見が未だにあるのだから夫がいるにこしたことはないのだ。
「もうちょっと身近なやつから選んでみてもいいんじゃないのか?」
どこか罰が悪そうにそんなことを言われる。
もちろん身近な男に目を向けなかったわけではない。だが身近な男で良い男と言うのはどんどん結婚してしまっているのだ。
女性より男性の方が婚期が遅いとは言え、それでもある程度若い時期には結婚しているか、婚約者がいるもの。
条件がいい人や、性格がいい人、その人たちからすれば離婚歴のある私ではなく離婚歴もない若くて条件がいい人に決まっている。
だから離婚歴がある歳をとっている私の相手としたら、少し難があっても私を望んでくれる相手から選ぶのが第一なのだ。
はぁ…………わかってはいるけれど自分でこんなことを思ってしまうなんて本当に気が滅入ってしまう。
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