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31.そんな冗談

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「そ、そんなに困っているなら、例えば、俺なんて…いいんじゃないのか?」

視線をずらしながらそんなことを言うセドリック様に思わず笑ってしまう。

「ふふっ、そんな冗談が言えるようになったのね。
それならこんなところで嫌味言ってないで、早く奥さんの1人でも見つけておばさまたちを安心させてあげれば?」

そう、この男は私よりも1つ年上だと言うのにまだ結婚していない。私以外には普通の対応ができるらしく、あまり笑顔は見せないが紳士的で優しいと社交界では人気のある人物なのだ。

それなのになぜ結婚していないのかよくわからないけど、きっとこの男が願えばある程度の女性はすぐにでも頷くことだろう。
伯爵位は兄のショーン様が継ぐことが決まっているが、騎士として成績を残しているため、将来かなりの有望株だと噂されている男だから。

「だからさ、お前と俺が結婚すれば俺の母親もお前の両親も安心するんじゃないかって…」

「ほんとにバカね…あなたのご両親が求めているのは私なんかみたいに傷がついた女ではなくて可愛らしいお嫁さんに決まってるじゃない。

あなたのご両親には私も子どもの頃からお世話になってるんだから、そんなことで恩を仇で返したくないの。だから変な気を遣ってないで早く相手を連れて来なさいよ」

私のその言葉に男は頭をぐしゃぐしゃとかきむしって「あーもう」となぜか吠えた。

何か気に障る事でも私が言ってしまったのか、そう思ったけど気を使うのはなんだかそこじゃない気がしてそのまま話を流すことにした。

その後は私が困っていた領地問題について2人で話をした。
幼い頃はそんなイメージはなかったけれど、いつからか領地経営に詳しくなり、頭の回転も早くこうして領地の問題点を相談すると一緒に悩みながら解決策を考えてくれる。

しかもかなりいい方法だと思う。

小さな頃から一緒にいるおかげか、こういうところで考え方が似ている。

きっと結婚すればいい旦那になるんだろう。

私も次に結婚する人は当主としての私を支えてくれる人か、一緒に悩んでくれる人がいい。

そんな風に2人で時間を過ごした後、ようやくセドリック様は帰っていった。


それなのに…翌朝、食事の後、ゆっくりしているとまた男の訪問が告げられた。

全く、何を考えているのか。

いくら離婚したとは言え、私とて暇なわけではない。
それに特定の男性が何度も家を訪ねていると言う噂でもたったら、お互いいいことなどないと言うのに。
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