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33.抱っこ
しおりを挟むだが何を考えたのか、次の瞬間「じゃあ!じゃあ行こう!!」そう言ったかと思うと、男は立ち上がると同時に私の体を持ち上げた。
「きゃぁぁぁぁ!!!!ちょっと、何してるの???」
「何って、キュリールの気が変わらないうちにデートに行くんだよ」
「あら、本当にデートに行くの?
って、そうじゃないわよ。どうして私を抱き抱えるのよ、行くなら行くで歩けるわよ!」
セドリックの腕の中で私がそう批判すると、赤い顔のままこういった。
「嫌だね。
捕まえとかないとやっぱりなしなんて言われて、デートがなしになりかねないだろ。どうせもう馬車だ。黙ってろ」
そういったセドリックは耳まで真っ赤になっていた。
なんだか普段と違う様子に戸惑ってしまうが、そんな事を考える余裕は私にもない。
馬車に乗ったというのにこの男は、私のことを降ろしてくれない。
あろうことか私を膝に乗せたまま馬車が走り始めてしまったのだ。
「ねぇ、ちょっと!!おろしてよ。
いくら騎士になりきってるにしても、騎士でもこんなことするかわかんないわよ」
セドリックは私と顔を合わせたくないのか、顔に手を当てたまま窓の方を向いている。
「うるせー…どうせ街までそう遠くないんだから別にいいだろ?」
言っていることの意味も、やっていることの意味もわからない。
遠くないからいいとはどういうことなんだろう。
反対に遠くないんだからこそおろして欲しい。
顔を合わせたくないほどならばさっさと降ろしてくれればいいのに、降りようとすれば手に力が込められ降りることができない。
それからも私が頼んでも結局馬車が止まるまでおろしてくれなかった。
そしてやっと止まった馬車。
横抱きにされたまま馬車から降りることがあんなに怖いことだなんて思わなかった。。
おかげでセドリックの首に抱き着いてしまった。
どうにか馬車から降ろされてようやく男の腕から解放されたと思ったのに、私の手をつかんだまま左手は離してくれなかった。
ほんとうに、今日はどうしたと言うのだろう。
慣れたわけではないが私も諦め、手をつないだまま向かった先は、今流行の劇がやっていると言う劇場だった。
でも確かセドリックはこういったものが苦手だったはず。そう思ってチラッと見るも入場の手続きを済ませてしまった。
もう今日はこの男の好きにさせよう。それにこの劇自体は見てみたかったのだから存分に楽しめばいい。
そして見た劇は本当に素晴らしかった。
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