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37.ごめん、待ってやりたいけど、待てない

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セドリックが言ったことを理解してくると顔が、身体が段々と熱くなってくる。

きっと、顔が赤くなってしまっているであろう。
それを隠すように私は顔をそらそうとした。
それなのに顔が動くのをセドリックの手によって阻止されてしまった。両手で包み込むように顔を抑えられてしまっている。

「セドリック、ちょっと待って。
ちょっと頭が追いつかないの」

かろうじて目だけを逸してそう言うのに、なぜか私の言葉に頬を緩める男。

「ごめん、待ってやりたいけど、待てない。
なんか、今いかなきゃいけない気がする。

キュリール、俺は絶対にお前以外の女なんて見ない。浮気なんて絶対しない。俺の一生をかけてお前を幸せにする。だから俺と結婚してくれ」

私より無駄に身長が高いのに膝を曲げて視線を合わせるように顔を覗き込んでくる男。
顔を逸らしたいのに、それさえ許してくれないひどい男。

どうしてだろう。
今までそんな対象で見ていなかったはずなのに、泣きたいような抱きつきたいような気持ちになってしまう。

「私…わがままなのよ」

「お前のわがままならいくらだって聞いてやる」

「私……可愛げがないわよ」

「俺にとっては可愛げがないお前がとてつもなく可愛いんだ」

「当主だから仕事が忙しいし、一緒にいることもあまりできないかもしれない」

「俺も一緒に手伝う。だから空いた時間は2人で一緒にいよう」

「セドリックの両親も経歴に傷がない女性を望んでるんじゃないかな。受け入れてもらえないかもしれない」

「両親も兄達も俺が幼い頃からキュリールしか見てないことなんて知っている。
キュリールじゃなきゃ、きっと結婚しないこともわかってる。
だからキュリールが離婚したと聞いたときから絶対逃すなって発破かけられてる。
反対どころかずっと楽しみにしてるよ」

下手な言い訳を作って必死に逃げようとしているのに逃げ道なんて全部潰されてしまう。
嫌みばっかり言うくせに、いやに頭が回る男。
そんなところが昔から嫌で、でも尊敬してた。


「でも…でも…………

結婚したら私の事なんて嫌になるかも。

あの人だって結婚してから……」

私の言葉に男はさらに体を屈め、私の顔より下に来ると私の顔を覗き込み視線を合わせた。

「キュミ、俺を信じろ。
俺はお前以外いらない。25年間お前一筋なんだ。絶対に変わらない」

そう言って私の頬に手を当て拭った。
その拭った手が濡れていて、初めて自分が泣いているんだと言うことに気づいた。

キュミ、俺が世界一愛されてる女だって自覚させてやる。
だから頼むよ、俺の隣を選んで」

その言葉に思わず頷いてしまった。

その瞬間体が暖かいものに包まれた。柔らかくはないけど硬くもない。セドリックの身体が目の前にある。
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