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当主とは…
しおりを挟む「畏まりました。そのようにおっしゃるのでしたら仕方ありませんわ。
やはりお父様もダレン様達と一緒に明日までにはお屋敷を出て行ってくださいまし。」
「なっ!なぜお前にそのような事を言われなければならない!私はカシミール家当主だぞ!!」
そう鼻息荒くした真っ赤なお顔のお父様がおっしゃっています。
しかし、それが間違っているのです。
「いいえ。お父様は当主ではございません。昨日までの当主代理でございます。そして今日からは私が侯爵家当主でございます。」
「なっ!????」
そう。お祖父様が亡くなられた際、相続が発生したのですが一人息子であるお父様にはどうしても任せられないと最後まで思い悩み、お祖父様の元で勉学に励んでいた孫娘の私に相続を行ったのです。しかし、お祖父様が亡くなったのは私が12才の時。まだあまりに幼いとのことからお父様が当主代理となったのです。
しかしお父様はそのような仕組みを理解しておられなかったのか、お祖父様が亡くなったら自分が自動的に当主となったと思われたようで、今のこの状況が出来上がってしまったのです。
そして今日は私の18歳の誕生日。この国でいわゆる成人と認められる歳。その為今日からは相続に基づき私が当主となるのです。
「お祖父様からの相続書類もここに。どうぞ確認なさってください」
そういって書類を広げるとお父様のお顔は赤から青へと変わっていっています。
どうにかご理解していただけたのかしら。
「………で、では……ミカリーナは?」
そんな小さな呟きが聞こえました。ふと、私は考えながら
「そうですね………
元々平民で育ち、貴族の礼儀を覚えることも嫌そうでしたので、やはり平民として暮らされるのがよろしいのではないでしょうか」
そう答えていました。
見ればお父様と同じような顔の色をしたダレン様とそのご両親が俯いていらっしゃいます。
「ご理解頂けましたか?
では、せっかくのお祝いの席ですので、パーティーを再開いたしましょう。
皆様、お見苦しいところをお見せして大変申し訳ございません。最後までお楽しみ頂ければと思います」
そう宣言したと思ったら…
「やっぱりお義姉様は意地悪ね。平民だからと私をいつも見下して。そんなことだからダレン様にも捨てられてしまうんだわ!」
そう声高に叫ぶ義妹。その行為がすでに貴族として相応しくないとなぜわからないのかしら。
「そうね。見下したつもりはないけれどあなたが侯爵家当主の妻に相応しいとは今の行動ひとつとっても思えないわね」
「なっ!」
今まで表では義妹の意見を否定したことはなかったので驚いたのかもしれない。でも今日からは侯爵家当主。それに相応しい行動をしないといけない。黙って放っておいてはいけないのです。
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