「疑ってばかりの君はいらない」
公証院で働くマリアンヌは、婚約者ヴィンセントが持ち込んだ相続証書に疑問を口にしたことで、婚約を破棄されてしまう。
それは、八十年前に交わされたという一枚の証書だった。
記された条件が正しければ、北部の土地と地下資源権はグラハム家へ返還される。ヴィンセントは土地の開発を進め、そこに暮らす人々へ移転の準備まで求め始めた。
けれど、古い記録を調べても、証書の存在を裏づけるものは見つからない。
マリアンヌは一度、自分の判断を誤った経験から、見つからない記録だけで偽物とは決めつけなかった。
文書監察官アーネストや周囲の助けを借り、紙、インク、署名、保管記録を一つずつ確かめていく。
やがて年代鑑定機が示したのは、相続証書の紙とインクが同じ時代のものではないという事実だった。
疑うことを嫌われた令嬢が、確かな記録によって誰かの暮らしを守り、自分を信じてくれる人と出会う、文書鑑定から始まる物語。
文字数 45,911
最終更新日 2026.10.04
登録日 2026.09.22
婚約破棄された伯爵令嬢クレアは、元婚約者を恨むことも、失った立場にすがることもしなかった。
彼女が選んだのは、新たに任された仕事に誠実に向き合うこと。記録を確かめ、曖昧な契約を整理し、対立する人々の言葉に耳を傾ける。その積み重ねはやがて確かな信用となり、彼女を認める人と新しい未来を引き寄せていく。
一方、爵位ある家との華やかな婚約と大きな商機を選んだ元婚約者ライオネルは、成功を急ぐほど家の足元を見失っていく。
人の未来を決めるのは、与えられた爵位か、それとも積み重ねた信用か。
信用を築く令嬢と、信用を使い果たしていく青年。それぞれの選択が明暗を分ける、復讐ではない静かな逆転の物語。
文字数 98,981
最終更新日 2026.10.04
登録日 2026.09.05
「できない理由ばかりを並べる君は、もう必要ない」
公爵家の建築事業を三年間支えてきた設計技師、アリシア・ヴァレンティア。
彼女が地盤を調べ、構造を計算し、現場の問題を直してきた一方で、その功績は婚約者レオナルトの名の下に残されてきた。
けれどアリシアは、それでいいと思っていた。
いずれ結婚すれば、同じ家の仕事になるのだから。
そんな彼女に突きつけられたのは、婚約破棄と「もう必要ない」という言葉だった。
美しい大広間を望む新しい婚約者。
それを実現したいレオナルト。
そして、アリシアの代わりならいくらでもいると考える公爵家。
アリシアは反論しなかった。
ただ、危険を記録し、自分の署名を設計書から外して、公爵家を去った。
やがて彼女は、小さな共同作業所から、自分の名で建物を設計し始める。
一方、アリシアを失っても順調に見えた公爵家の建築では――誰にも見えないところで、小さな数値のずれが積み重なっていた。
復讐するつもりはない。
壊れることを願ったこともない。
彼女はただ、自分の仕事に、自分の名前と責任を残しただけ。
これは、不要だと捨てられた「見えない支柱」が、自分の名で街を築くまでの物語。
そして、その支柱を自ら抜いた者たちが、自分たちの選択の重さを知るまでの物語。
※「全てを設計していたのは、不要と捨てられた令嬢でした」をベースにした作品です
文字数 15,784
最終更新日 2026.10.04
登録日 2026.10.02
「頭を下げる妻は、みっともない」
エドガーは、三年連れ添ったクラリスを離縁した。
彼の隣には、伯爵家の誇りにふさわしいと褒める新しい婚約者がいる。
けれど、クラリスが頭を下げていたのは、夫の約束が守られなかった時だった。
遅れた荷の出荷日を確かめ、支払いの見通しを伝え、相手が待てる形を整えてきた。
その仕事を、夫は知らない。
伯爵家を去ったクラリスは、自分の名で新しい仕事を始める。
一方、エドガーには、彼女が引き受けていた返事と判断が一つずつ戻ってきた。
「もう、あなたの代わりに謝りません」
失った信用の重さに夫が気づく頃、クラリスは自分の言葉を聞いてくれる人と、次の道を歩き始めていた。
文字数 14,584
最終更新日 2026.10.04
登録日 2026.10.03
「伯爵夫人は君より妹の方が相応しいと思っている」
婚約者ジュリアンの仕事を三年間支えてきた子爵令嬢エレナは、妹のアメリアを新たな婚約者にしたいと告げられる。
失敗の可能性に気づき、問題が起きる前に備える。
けれど、何も起きなければ、その仕事の価値は誰にも見えない。
前向きで迷いのない妹を選んだジュリアンに、エレナは婚約解消を受け入れた。
もう、あなたの判断は私の責任ではありません。
その後、侯爵家の嫡男セドリックは、エレナの「念のため」を心配性ではなく、前へ進むために必要な意見として受け止める。
一方、順調に見えたジュリアンとアメリアの事業では、小さな見落としが少しずつ積み重なっていく…。
これは、見えなかった仕事の価値をめぐる、静かな逆転の物語。
文字数 110,128
最終更新日 2026.09.21
登録日 2026.08.22
完璧な兄だった。
文武に優れ、誰もが次代の王にふさわしいと認めていた王太子ギルバート。
だがある朝、兄は突然帰らぬ人となる。
そして第二王子アルフレッドは、思いがけず王太子となった。
兄のようにはなれない。
けれど、兄はかつて言っていた。
「私は物事を見る。だが、お前は人を見る」
人の声に耳を傾け、迷いや違和感を見逃さない。
兄とは違うその力で、アルフレッドは一つずつ王太子としての答えを選んでいく。
やがて彼は、兄が生前に追っていた一つの違和感へたどり着く。
兄なら、どうしたかではない。
自分なら、どうするのか。
これは、兄の代わりではなく、
一人の第二王子が、自分自身の王太子になっていく物語。
文字数 88,875
最終更新日 2026.09.05
登録日 2026.08.09
「武具を作らない鍛冶師とは未来を描けない。」
そう言われ、婚約者との未来は終わった。
彼は武具こそ人を守るものだと信じていた。
私は料理道具や農具など、人々の暮らしを支える道具を作り続けてきた。
どちらが正しいかではない。
ただ、お互いの仕事を理解できていなかっただけだった。
婚約解消を機に家族の工房へ戻った私は、料理人、パン職人、農家、そして領主たちの仕事を一つひとつ見つめ、本当に必要とされる道具を作り続ける。
やがて変わり始めたのは、道具だけではなかった。
人が育ち、現場が育ち、領地が変わっていく。
これは、使う人を見続けた一人の鍛冶師が、人を支える仕事の本当の価値を証明していく物語。
文字数 65,431
最終更新日 2026.08.29
登録日 2026.08.01
「君は翻訳だけしていればいい」
若き外交官エドガーにそう言われ、私は婚約を解消された。
辺境伯家の娘である私は、彼の補佐として各国との交渉を支えていた。
もっとも、私がしていたのは翻訳くらいのものだ。少なくとも彼はそう思っていたらしい。
婚約破棄後も、エドガーは順調に出世した。
だが、その頃から王国の外交には少しずつ違和感が生まれ始める。
今まで問題にならなかったことで不信を買い、なぜか話が噛み合わない。
誰も気に留めなかった小さな違和感は、やがて大きな外交問題へと発展していった。
そして調査を始めた若き外務卿ルシアンは、一つの事実に辿り着く。
失われたのは翻訳係だけではなかったのだと。
文字数 55,584
最終更新日 2026.07.31
登録日 2026.07.11
新進気鋭のフェルナー伯爵家次女、エレノア。
真面目で努力家な彼女は、父を支え、領地を支え、多くの人に頼られながら家の発展に貢献してきた。
けれど、周囲から掛けられる言葉は、いつも同じだった。
「お前なら大丈夫」
絶世の美女である姉は大切に守られ、優秀な自分は頼られる。
それが当たり前だと思っていた。
そんなある日、武門の名家・ヴァルハルト辺境伯家から縁談が届く。
「辺境は大変だが、エレノアならやっていけるだろう」
そうして嫁いだ先で待っていたのは、軍事に強く商業に弱い辺境伯領だった。
持ち前の知識と努力で領地を支え、人を支え、少しずつ豊かになっていく辺境伯領。
そして、成果だけではなく、努力する姿そのものを見てくれる辺境伯カイルとの出会い。
一方、エレノアを失った実家では、誰も気付いていなかった本当の支えの大きさが、少しずつ明らかになっていく。
これは、「お前なら大丈夫」と言われ続けた女性が、誰かと支え合うことを知り、その優しさを未来へつないでいく物語。
文字数 82,412
最終更新日 2026.07.25
登録日 2026.06.26
婚約者は妹を選んだ。
それなら、それで構わない。
そう思ったはずだった。
けれど、婚約破棄の直後、父が告げたのは予想外の言葉だった。
「セシリア、お前は隣国ベルンハルト王国のアレクシスに預ける」
子のいない叔父が率いる大商会。
そこで始まった新しい人生は、失うばかりだと思っていた私に、多くの出会いをもたらしてくれた。
豪快だが誰よりも聡い叔父。
新しい仲間たち。
そして、自分の能力も弱さも正しく見てくれる人。
数字を読み、人を繋ぎ、商いを支える力は、やがて商会だけでなく国を動かす仕事へと繋がっていく。
一方、私の代わりに婚約者を選んだ妹もまた、自分なりに努力しながら前へ進もうとしていた。
これは、婚約者に評価されなかった令嬢が、新天地で居場所と家族、そして本当の幸せを見つけていく物語。
※まもなく完結予定。14日以降1日1話ずつの投稿となります(夜予定)
文字数 110,131
最終更新日 2026.07.17
登録日 2026.06.12
婚約破棄を乗り越えたカレンは第二王子レオニードと結婚。
だが、物語は終わらない。
元婚約者の流れをくむ黒い金へ依存する貴族派閥。
歪み始める物流。 腐敗する地方統治。
王国が静かに崩れる危機に、 カレンは第二王子レオニードと共に立ち向かう。
港湾整備。 流通改革。 貴族腐敗の粛清。 そして、 干ばつによる国家規模の食糧危機…。
数字だけでは人は救えない。
だが、感情だけでも国は支えられない。
これは、 理想と現実の狭間で苦しみながら成長していく二人の物語。
婚約破棄されたので静かに去ったら、第二王子との絆を強めることが出来ました〜元婚約者は奈落の底まで落ちたようです〜
の続編です
文字数 60,449
最終更新日 2026.06.14
登録日 2026.05.26
伯爵家の婚約者として、エレノアは長年その家を支えてきた。
商会との取引管理。
赤字続きの帳簿整理。
浪費によって傾きかけた財政の立て直し。
だが、誰もそれを理解しない。
婚約者であるレオルドは、華やかな令嬢に夢中になり、
母マルグリットは、商人上がりの子爵家を見下し続けていた。
そして、夜会の日。
「地味で可愛げのないお前とは婚約破棄だ」
公衆の面前でそう告げられたエレノアは、
ただ静かに頷く。
「承知いたしました」
その瞬間。
ウェインズ子爵家による支援は、すべて打ち切られた。
回らなくなる伯爵家。
消えていく取り巻きたち。
露わになる借金と浪費。
彼らはようやく思い知る。
自分たちが見下していた令嬢こそ、
伯爵家を支えていた存在だったのだと。
これは、
失ってからでは遅すぎた者たちの転落と、
本当に大切な相手を見つけた令嬢の再生の物語。
文字数 25,895
最終更新日 2026.06.06
登録日 2026.05.30
フェイス侯爵家令嬢ユーアは、第三王子ボートン・ハミルトンの婚約者として、長年彼を支え続けていた。
貴族達への根回し。問題が起きる前の調整。王族として未熟だった彼を、優秀な彼女は陰から守り続けていた。
だが、ボートンはその価値に気付かない。
さらに、すべてを肯定してくれる新興貴族の令嬢へ惹かれた彼は、感情的に婚約破棄を告げてしまう。
その瞬間から、少しずつ全てが崩れ始めた。
会議はまとまらず、派閥関係は悪化。
それまで当たり前に回っていたものは、全てユーアが支えていたのだ。
だが、王太子ロジャーに導かれ、過ちに気づき自らの未熟さと向き合うことで…。
これは、失ってから初めて支えられていたことに気付いた王子が、再び隣に立てるようになるまでの成長物語。
文字数 56,725
最終更新日 2026.06.05
登録日 2026.05.22
ロバート伯爵家令嬢カレンは、婚約者であるハングレー家嫡男エドガーから一方的に婚約破棄を告げられる。
彼は、美貌だけで男を惹きつけるラルムへ夢中になっていた。
だがカレンは感情的にならず、静かに婚約を受け入れる。
そして、その直後からハングレー家の崩壊が始まった。
違法採掘、裏金、不正取引。
黒い噂を抱えていたハングレー家は、次第に王宮監査局の追及を受けて…。
そんな中、カレンへ興味を示したのは、冷静沈着と評される第二王子レオニードだった。
「あなたは、人を見る目がありますね」
誠実な王子と共に、王宮の腐敗を追うことになったカレン。
婚約破棄から始まるのは、破滅だけではなかった。
静かな才女が、本当に自分を理解してくれる相手と出会うまでの物語。
※【完結保証】30話前後で完結予定
文字数 42,065
最終更新日 2026.05.25
登録日 2026.05.17