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目的の駅で降りると、ホームまでかすかに硫黄の匂いがする。
「足湯だって…へえ~電車を待っている間に入れるんだって。すごいね!無料だし入ってみない?」
春原妹の激しい主張で、結局ホームの片隅にある温泉に入ることになった。
「気持ちいいけど、汗かいてきた…俺にはちょっと熱い」
ぼやいていると、別の旅行者に声を掛けられた。…また女か。
あんまり関わりたくない俺は『のぼせるから』と先に逃げ出した。
俺の後をついて、二人も出てくれたので、タクシーで予約した宿へ向かうことにする。春原兄が意外とそつなくタクシーを捕まえたり手際が良くて驚いたが、
「東雲さん、春原が二人だと混乱するので旅行の間は名前で呼んでください」
そう言って理来に自分の名前をちゃっかり呼ばせる手際の良さにも舌を巻いた。アイツ抜け目がないな。
旅館に着くと、想像していたよりも情緒あふれる和風の建物で良かった。
でも春原兄妹が一部屋とっていたせいで理来と別部屋になってしまったのだけが残念だったけれど…。
宿の女将から『温泉を楽しまれてから、お出かけになられては?浴衣もご用意がありますし』と声を掛けられたこともあり、一同は温泉へ向かうことになった。
「拓海さんてすごく引き締まった良い体していますよね。鍛えているんですか?」
温泉ではなぜか春原兄がしつこく話しかけてくる。…うるせえな…と思ったけれど、無視も大人げない。
「一応。仕事柄体力を使いますからね」
適当に相槌を打ったものの、よく見ると、春原兄もあんな優男な顔をしているがかなり均整の取れた体つきをしている。…コイツも相当鍛えているんだろうな…。
ため息を付きながらも、せっかくなので牽制しておこうと思い立った。
「春原さん、俺と理来は付き合っているんですよ。余計なちょっかいを出すのはやめてもらえませんか?」
ハッキリ言いきってやると、ポカンとした表情をした後、春原兄は含みのありそうな笑顔で答えた。
「確かに私は理来さんを可愛いなと思っていますよ?…でも、拓海さんのことも素敵だと思っていますからね…」
そうウットリと微笑むが、あれ?今はそんな話だったか?
「判っていればいいんです。話はそれだけですから」
洗い場に移動すると、一緒についてきて『背中、流しますよ』と言い出した。…え…怖い。
でも、ここで断わったら怖気図いているみたいで嫌だ。
「じゃあ…お願いします」
そう言い、背中を向けると妖し気な手つきで背中を撫でまわされる。
「フフ…本当に素晴らしい肉体ですね…筋肉の付き方といい私の好みです」
まさかこいつ…恐怖に慄きながら『のぼせそうなので、先に出ます』と慌てて風呂から出た。
もしかしたら俺の貞操の危機だったのだろうか。
今晩、あいつと同じ部屋で寝たらお婿に行けなくされそうで怖い…。
風呂から出て、女性二人を待つ間も俺にとって気まずい拷問の時間は続いた。
「ああ、理来さんもはるかも可愛いね。浴衣似合っていますよ」
先に二人に気が付いて春原兄が手を振ると、二人は嬉しそうにこちらへ来る。
「二人とも、お待たせ~!待った?」
「すっげー待った‼女は長風呂だな」
春原妹の言葉にイラついてつい文句を言ってしまう。
「ゆとりの無い男って、女の身支度に時間がかかることも知らないのかしら?本当に心の狭い男よね~」
キツイ一言を言われるが、お前の兄貴が妖しげな振る舞いをしたせいでこちらは恐怖に慄いていたんだろうが⁈と思うと謝る気にもなれない。
「拓海さん、遅くなってごめんなさい。あの、何か怒っているの?」
理来の浴衣姿はたまらなく可愛くて、ささくれだった俺の心は少しだけ癒された。
「拓海さんは最近沸点が低いから、カルシウムをたくさん取った方がいいですよ?牛乳飲みますか?」
理来にクスクスと笑われて飲んだ瓶牛乳は冷えていてメチャクチャ美味かったけれど。
女性陣が縁日に行きたいと言うのでみんなで散策することになった。かなり本格的で、屋台も数多く出ている。
「リンゴ飴にタコ焼きに…ラムネも飲みたいかも」
理来は食べ物ばかり目移りしているところも可愛いけれど、夕飯前だって判っているのだろうか?
色々見ているうちに『射的がある!あのミニくま…可愛い。挑戦してみるね』と理来は張り切って挑戦し、見事に全弾外すところも最高かよと思う。
よし、ここは「「「じゃあ、俺(私)がやってみる」」」となぜか全員で挑戦することになった。
結果全員が同じミニくまを狙い、全員で叩き落すことになった。…俺が取ってやりたかったのに…。
「これって、全員理来さんにあげたくて取ったんですよね?だったら全員からプレゼントでいいじゃないですか」
そう言うと、春原兄がミニくまを理来に渡してしまった。
オイシイ所だけ持っていく春原兄にはムカつくけれど、理来が『ありがとう、大事にします』と嬉しそうにミニくまを抱きしめているのを見たらまあ、いいかと思えた。
「これ、拓海さんに似ているな…と思ったら欲しくなっちゃったんです」
嬉しそうにミニくまを抱きしめる理来から可愛いことを言われてちょっと…ムラっとしたことは内緒だ。
…本当はミニクマじゃなくて遠慮せずに俺を抱きしめてくれて良いとは思うけれど。
でも、俺たちの旅行1日目はまだ終わってはいなかった…。
「足湯だって…へえ~電車を待っている間に入れるんだって。すごいね!無料だし入ってみない?」
春原妹の激しい主張で、結局ホームの片隅にある温泉に入ることになった。
「気持ちいいけど、汗かいてきた…俺にはちょっと熱い」
ぼやいていると、別の旅行者に声を掛けられた。…また女か。
あんまり関わりたくない俺は『のぼせるから』と先に逃げ出した。
俺の後をついて、二人も出てくれたので、タクシーで予約した宿へ向かうことにする。春原兄が意外とそつなくタクシーを捕まえたり手際が良くて驚いたが、
「東雲さん、春原が二人だと混乱するので旅行の間は名前で呼んでください」
そう言って理来に自分の名前をちゃっかり呼ばせる手際の良さにも舌を巻いた。アイツ抜け目がないな。
旅館に着くと、想像していたよりも情緒あふれる和風の建物で良かった。
でも春原兄妹が一部屋とっていたせいで理来と別部屋になってしまったのだけが残念だったけれど…。
宿の女将から『温泉を楽しまれてから、お出かけになられては?浴衣もご用意がありますし』と声を掛けられたこともあり、一同は温泉へ向かうことになった。
「拓海さんてすごく引き締まった良い体していますよね。鍛えているんですか?」
温泉ではなぜか春原兄がしつこく話しかけてくる。…うるせえな…と思ったけれど、無視も大人げない。
「一応。仕事柄体力を使いますからね」
適当に相槌を打ったものの、よく見ると、春原兄もあんな優男な顔をしているがかなり均整の取れた体つきをしている。…コイツも相当鍛えているんだろうな…。
ため息を付きながらも、せっかくなので牽制しておこうと思い立った。
「春原さん、俺と理来は付き合っているんですよ。余計なちょっかいを出すのはやめてもらえませんか?」
ハッキリ言いきってやると、ポカンとした表情をした後、春原兄は含みのありそうな笑顔で答えた。
「確かに私は理来さんを可愛いなと思っていますよ?…でも、拓海さんのことも素敵だと思っていますからね…」
そうウットリと微笑むが、あれ?今はそんな話だったか?
「判っていればいいんです。話はそれだけですから」
洗い場に移動すると、一緒についてきて『背中、流しますよ』と言い出した。…え…怖い。
でも、ここで断わったら怖気図いているみたいで嫌だ。
「じゃあ…お願いします」
そう言い、背中を向けると妖し気な手つきで背中を撫でまわされる。
「フフ…本当に素晴らしい肉体ですね…筋肉の付き方といい私の好みです」
まさかこいつ…恐怖に慄きながら『のぼせそうなので、先に出ます』と慌てて風呂から出た。
もしかしたら俺の貞操の危機だったのだろうか。
今晩、あいつと同じ部屋で寝たらお婿に行けなくされそうで怖い…。
風呂から出て、女性二人を待つ間も俺にとって気まずい拷問の時間は続いた。
「ああ、理来さんもはるかも可愛いね。浴衣似合っていますよ」
先に二人に気が付いて春原兄が手を振ると、二人は嬉しそうにこちらへ来る。
「二人とも、お待たせ~!待った?」
「すっげー待った‼女は長風呂だな」
春原妹の言葉にイラついてつい文句を言ってしまう。
「ゆとりの無い男って、女の身支度に時間がかかることも知らないのかしら?本当に心の狭い男よね~」
キツイ一言を言われるが、お前の兄貴が妖しげな振る舞いをしたせいでこちらは恐怖に慄いていたんだろうが⁈と思うと謝る気にもなれない。
「拓海さん、遅くなってごめんなさい。あの、何か怒っているの?」
理来の浴衣姿はたまらなく可愛くて、ささくれだった俺の心は少しだけ癒された。
「拓海さんは最近沸点が低いから、カルシウムをたくさん取った方がいいですよ?牛乳飲みますか?」
理来にクスクスと笑われて飲んだ瓶牛乳は冷えていてメチャクチャ美味かったけれど。
女性陣が縁日に行きたいと言うのでみんなで散策することになった。かなり本格的で、屋台も数多く出ている。
「リンゴ飴にタコ焼きに…ラムネも飲みたいかも」
理来は食べ物ばかり目移りしているところも可愛いけれど、夕飯前だって判っているのだろうか?
色々見ているうちに『射的がある!あのミニくま…可愛い。挑戦してみるね』と理来は張り切って挑戦し、見事に全弾外すところも最高かよと思う。
よし、ここは「「「じゃあ、俺(私)がやってみる」」」となぜか全員で挑戦することになった。
結果全員が同じミニくまを狙い、全員で叩き落すことになった。…俺が取ってやりたかったのに…。
「これって、全員理来さんにあげたくて取ったんですよね?だったら全員からプレゼントでいいじゃないですか」
そう言うと、春原兄がミニくまを理来に渡してしまった。
オイシイ所だけ持っていく春原兄にはムカつくけれど、理来が『ありがとう、大事にします』と嬉しそうにミニくまを抱きしめているのを見たらまあ、いいかと思えた。
「これ、拓海さんに似ているな…と思ったら欲しくなっちゃったんです」
嬉しそうにミニくまを抱きしめる理来から可愛いことを言われてちょっと…ムラっとしたことは内緒だ。
…本当はミニクマじゃなくて遠慮せずに俺を抱きしめてくれて良いとは思うけれど。
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