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2.フォレグナーの問題児
しおりを挟む「レティ、今日も町に行くのか?」
「…!お兄様」
私のプラチナブロンドの髪と薄い緑の瞳とは、似ても似つかない亜麻色の髪と深い海を思わせる青の瞳を持つこの人は、私の実の兄であるユリウス・フォレグナーである。
「そうだけど、どうかした?」
「どうかしたって…お前なぁ、父さんの気持ちも少しは考えてやれよ……」
ギクッ
「ウーン、ナンノコトカシラー?」
「はぁ……年頃の娘が未だに婚約もしないで、町をほっつき歩いてるんだぞ?」
「そ、そういうお兄様だって婚約してないじゃない!」
確かに私と同じくらいの子は大抵婚約、結婚しはじめているけれど、私よりも三つも年上のお兄様にとやかく言われる筋合いはない筈だ。
言い返せるものなら、言い返してみなさい!と息巻いている私にお兄様は心底心外だとばかりにため息をついた。
「俺は男だぞ?多少年がいってても、相手なんてすぐに見つかる。それに家は伯爵家。時期伯爵家当主の俺は優良物件だ」
うっ……確かにお兄様のいうことは最もなのかもしれない。
「全く……こんなのでも見目だけはいいもんだから困るんだよ……。お前、社交界でなんて呼ばれてるか知ってるか?」
……知らない。
そもそも私は、社交界に顔を出すことがほぼない。
無難にいけば……フォレグナー家のお転婆娘!とか?
……
…………
自分でいってて悲しくなってきた。
お父様、ごめんなさい。
「……お前の考えてる事は大体わかるが、どうしてかそれはハズレだ」
?
「フォレグナーの鳥籠姫」
………えっ?
今、なんて…………?
「フォレグナーの白百合の君」
いや、
いやいや
いやいやいやいやいやいやいやいや
「誰よそれ!?」
あってるのフォレグナーだけなんですけど?!
誰かと間違えてない?人違いとしか考えられない。
「俺も初めて聞いた時はそう思ったさ。そもそも遺伝子が仕事しなすぎなんだよ?!」
お父様は輝く金髪にお兄様と同じ青い瞳。お母様は亜麻色の髪と同じ瞳。
お兄様はお顔もお母様似で髪も瞳も両親譲りだ。なのに私は何故かプラチナブロンドの髪に薄い緑の瞳。それに顔も両親とは似ても似つかない。
私が生まれた当初は、お母様が浮気をしたんじゃないかと周りから疑われたそうだ。しかし、お父様とお母様は大恋愛の末、結婚したラブラブ夫婦の為お母様を疑った周りにお父様が大激怒。
あ、でも別に似てないから虐められてるとかじゃありませんよ?
寧ろ、デレデレに甘やかされてます。
まあ、つまり何が言いたいのかと言うと、本当に私は誰にも似てないのです。
「せめてお前がもう少しお淑やかだったら、鳥籠姫でも誇らしいんだけどな」
……イラッ
ん~?つまり見目はいいけど、性格がだめだと?
「そもそもだ!なんなんだ鳥籠って!むしろ放し飼いだろ?!」
えっと…うん。
ゴメンナサイ。
でも………
「私だってお兄様の浮いた話なんて今まで一度も聞いたことないわ」
これは、優良物件とかそれ以前の問題のはずだ。
「いや、そ、それはお前、社交界に出てないんだから、知らなくて当然だろ!」
明らかにうろたえた様子のお兄様。
これは、絶対図星だ。
「家のメイド達が話していたのを聞いたの。お兄様は女っ気が全くないって」
「ぐっ……!」
あぁ、あとあんなことも言っていた。
「お兄様はそっちの気?があるんじゃないかって」
「…………」
「お、お兄様?」
さっきとは比べ物にならないほど落ち込んでいる。というか、項垂れているお兄様。
目は死んでいるのに口元だけ笑っているから妙に怖い。
「レティシア。まず初めに聞くが、それ、意味分かって言ってるのか……?」
たまたまメイド達がしていた話をそのまま言ってみただけだから、意味は知らない。勝手に女の人にぐいぐい行けないとか、そういう意味だと思ってたけれど、違うのだろうか?
「えっと、今度話していたメイド達に聞いておきますね」
「だめだ。絶対に聞くんじゃない」
「え?でも……」
「いいか?絶対だぞ!」
こんな様子のお兄様は初めて見た。
私はもしかすると、とんでもないことを口にしてしまったのかもしれない……。
そのまま背を向けて立ち去ると思われたお兄様は数歩進んだところで立ち止まり、「明るいうちに帰ってこい」とだけ言い残して行ってしまった。
(父さんの悩みの種は俺も……か………)
ユリウスが婚活しようと心に決めた瞬間だった。
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