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■3.ハロウィンナイトの鬼は甘く
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「だからその、天然煽り上手……」
「え?」
「いや。俺がよくても薪は気にするもんな。……わかった。だいぶ冷めたと思うけど、風呂の準備をしてくるから、その間にやっぱり薪は食っとけ。キッチンの鍋にはまだ熱いのが残ってるし、レンジも適当に使ってくれていい」
「……はい。――わわっ、じ、自分でできますって……っ」
「ん。でも、俺がしたいから」
自分の口元を手で覆いながらふるふると頭を振った真紘は、けれどすぐに薪と床の間に手を滑り込ませて抱き留めるように身体を起こすと、薪の乱れきった髪を直したり、顔に残る、真紘がわからなくてしんどいと流した涙の跡や、飲み込みきれずに口の端から零れていったお互いの唾液を親指でぐっと拭き取り腰を上げた。
――煽り上手なのはどっちなの……。
そのまま部屋を出てシャワールームへ向かっていった真紘の背中に、薪は心から思う。胸がキュンと鳴るほどの優しい言葉とは裏腹に、仕草や手つきはいつも通りの強引な真紘のままで、今度は子宮の奥がきゅぅ……っと甘く鳴く。
真紘のキスは経験の乏しい薪にも察して余りあるほど激しく、また、過激と言い換えても遜色ないだろうものだったものの、けして薪の身体を自分の思いのままにしようとしているわけではなかったことは、本能的にわかる。
薪が止めたとき、我に返った真紘は〝どうにも歯止めが……〟と言っていたけれど、本当にそれだけだったのだろう。むしろ、激しければ激しいほど真紘の思いごと注ぎ込まれているようで、薪はそれが心の底から嬉しくて、全部受け止めたくて、欲しくて、応えたくて、必死に真紘と舌を絡め続けたようなものだった。
――ご飯を食べて、お互いにシャワーを浴びたら、そんな主任と……。
そんなことを思いながら、薪はさっきは一口だけで終わってしまったお粥をレンゲでひと匙掬い取ると、はむっと口いっぱいに放り込んだ。
本当はシャワーを浴びたらそのまま真紘とベッドになだれ込みたい衝動が薪の身体を疼かせているけれど、キスだけであの激しさだ。ここ二週間、特にこの三日間の自分の生活を思い返すと、弱った身体では到底、受け止めきれない。
それでは真紘に申し訳ない――というより、薪の気持ち的に、もったいない。
欲しがれば欲しがっただけ、真紘はきっと薪の身体に〝自分を好きになってもいい〟と刻み込んでくれるはずだ。そんなの、全部感じたいに決まっている。
とはいえ、あの金曜日の夜、思いがけず真紘と映画館で遭遇してしまい、あれよあれよという間に急激に関わる機会が増えた――いや、真紘に意図して増やされたときから、悔しいけれど好きになるきっかけや兆候はたくさんあった。
それをどうしても認めたくなくて、ずっと気づかないふりをしてきたけれど、足湯場でのあのキスがとどめになってしまったようなものだ。
鬼だ鬼畜だ超ドSだ、だって〝あの〟新田真紘だ、仕事以外では絶対に関わりたくないと何度となく思ってきたはずの真紘からの唐突すぎるキスに〝気持ちいい〟しかわからなかったことこそ、いくら拒もうが抗おうがどうしようもないほど真紘に落ちていく決定打になっていたのかもしれないなと、薪は思う。
「好きになってもいいって体に刻み込んでほしいって、ずるいよね、きっと……」
カチャリとレンゲを置くと、薪は口の中で小さく声を転がした。
――でも、主任を安心して好きになりたいんだもん……。
オフィスの鬼と付き合うには、薪のほうにもそれ相応の心構えと、そんな鬼が自分を好きでいてくれるという確かな〝証〟のようなものがほしかった。
もちろん〝証〟とセックスが必ずしも直結するわけではないことは、薪にだってわかる。けれど、安心材料のひとつになることは間違いないし、好きだから身体を求めることも、好きになってほしいから、好きになりたいから身体を求めることも、それはそれでひとつの〝証〟として成立するんじゃないかと思えてならない。
とどのつまり、薪は真紘と深く深く繋がって、自信を持ってもっともっと真紘に溺れていきたいのだ。それをグズグズになるまで身体に刻み込んでもらい、真紘のことを〝好き〟しかわからなくしてほしい――。
「……食べなきゃ」
そのためには、少しでも多く食べておかないと身が持たない。
レンゲを持っていた手に今度は箸を持ち、薪は卵焼きにかぶりつく。なんとなく出汁巻き卵を想像していたけれど、鬼の真紘が作るには可愛すぎる、砂糖で甘く味つけされた卵焼きは、冷めつつあっても薪の身体をじんわり温かくしてくれた。
*
「ぁん……ぁっ、ん……っ。ぅん、んんっ……ぁ、あっん……っ」
「薪、どこがいい? 薪の気持ちいいところ、全部教えてくれ」
「それ……っ。それ、一緒は……ゃあ……っ」
「わかった。もっとしてやる。腕でも背中でも、どこでもしがみついてろ」
「……んああっ――!」
それからベッドルームでは、素肌がシーツに擦れる衣擦れの音と、ベッドが軋む音、断続的に甘い声で喘ぎ続ける薪の声と、そんな中でも耳にはっきり届く、薪の中から溢れて止まらないくちゅくちゅという粘着質な音が響き続けていた。
首筋を舌でなぞったり吸い上げたり、かと思えば唇で柔く食まれながら、さらに指で中のほうを弄られていた薪は、真紘の〝もっとしてやる〟という低くサディスティックな声と同時にしなりを強くした指先に翻弄され、大きく嬌声を上げる。
こんな調子で、薪はさっきからずっと真紘に鳴かされっぱなしだ。
何度、真紘が見ている前で薪だけ絶頂に達したかも、もうとっくに芯まで快感に痺れてしまっている頭では、どうしたって数えようもなかった。
今度のもまた、薪だけだ。
「ゆ……び、抜いて……動かすの、だ……め……」
真紘の腕にしがみついて大きな絶頂の本流になんとか耐えた薪は、けれど長く強い余韻が引かないうちから指を動かしはじめた真紘に、零れそうなほど目に涙を溜めて、ちょっと待ってほしいと訴えかける。
どうしてもカクカクと小刻みに動いてしまう腰が恥ずかしくて、足の間に差し込まれた真紘の胴をぎゅっと挟み込むものの、少しも力が入らないから、指の動きを追うようにしてまたいやらしく腰が浮いてしまうのを止められない。
それがまた薪の羞恥心を煽るのと同時に甘く鳴かせるため、ますます真紘は薪を絶頂に至らせようと奥や恥骨の裏のスポットを執拗に責め立てるのだ。
――こんな愛撫が、薪の身体の至るところで、もうずっと続いている。
口の中はもちろん、それと同時に乳房を揉みしだいてみたり、鷲掴んでみたり。その膨らみの先端にある固く尖ったふたつの実を指で挟んだり、ぐりぐりと押し潰してみたり、摘んでみたり、口に含んで吸ってみたり、ザラザラと舌で転がしてみたりと、真紘は本当に薪の身体に〝刻み込む〟勢いでとめどなく愛撫を続けた。
そのたびに薪の身体は弓なりにしなり、背中が浮いた。ずんずんと子宮の奥からうねりが起きて、蜜が溢れ、自分でも肌を垂れていったのがわかるくらいだった。
たまらなくなって、もぞもぞと膝頭を擦りつければ、ぐっと足を割られ、そこに真紘の身体が滑り込む。隠すものもない中、かっぽりと開かれた両足の間に顔を埋めた真紘は、今度はすでに敏感になりすぎているくらい敏感な淫芽にぢゅーっと吸い付き、薪はそこで、まな裏をチカチカさせながら一回目の絶頂を味わった。
そこからはもう、何が何だかわからない。
何度も真紘に絶頂に導かれながら、そうして今に至る。
「だめじゃない。どこがいいか全部教えろって言った。そこに〝俺を好きになってもいいって刻み込め〟って言ったのは薪なんだから。いい子だから――な?」
「ああっ! やだっ、主任……っ! そんなとこ、だめだって……っ!」
「ちょっと黙ってろ。ここもしっかり刻み込むところなんだから」
「そんな……っ! そこ、さっきだって、散々……っ」
「いいだろ、薪が気持ちいいなら」
「や、ゃめ……ぁあっっ――!」
けれど、どうやら真紘には何を言っても煽る結果にしかならないらしい。やっと中から指を抜いてくれたと思ったのも一瞬で、先ほども散々、舐められ、吸われ、舌で遊ばれ、ぐじゅぐじゅになっている花芽に顔を寄せて一気に吸い上げられた。
当然、薪はまた真紘の前で自分だけオーガズムに身体を震わせる。
真紘だってもうずいぶん前から自身を大きくしていて、ボクサーパンツにきっちりとその形を浮かび上がらせているというのに、薪が触ろうと手を伸ばすと腕を取られ、シーツの上に固定されてしまうので、どうしようもない。
薪の身体の上を真紘が滑っていくときくらいしか、膨らみや硬さ、大きさから真紘の興奮を感じ取ることができなくて、それが薪はひどくもどかしかった。
「薪、どこがいい? もっと気持ちよくしてやる。言え」
「しゅ、にんが触ったとこ……っ、ぜん……ぶ」
「特にどこだ?」
「全部しか……っ、わ、わかんない……。けど、もう中に欲し……っ」
本当に何回だろう。
感じすぎてしまって、全身が性感帯にでもなってしまったんだろうかと思いながら、薪は息も絶え絶えに真紘に聞かれるままに答える。真紘が触れたところ全部に感じてしまって、どこがどう気持ちよくて、何をどうされたらもっと気持ちいいのか、薪はもうわからなかった。
ただ、もう指だけじゃ足りないことだけは、わかる。刻み込むならそこに、奥の奥に、中がいっぱいに満たされるまで真紘が欲しい――。
「……どうなっても知らねーぞ。いいか」
すると、ゆっくりと身体を起こし、髪の毛を掻き上げた真紘が、低く唸るようにそう言った。薪を見つめるその双眸はひどく獣じみていて、目が合った瞬間、ぞわりと背筋を這い上がってくる得体の知れない感覚に身震いすら覚える。
けれど、薪だって欲しい。
自分だけ気持ちいいのも、真紘の屹立が窮屈そうにボクサーパンツの中に収まっているのも、もういい加減、切なすぎると思っていたところだ。
「はい。……主任。私のこと、主任が〝好き〟しかわからなくしてください」
「――っ。天然煽り上手が。薪の望み通りにしてやるよ」
その瞬間、薪にがばりと覆い被さった真紘が激しいキスを降らせはじめた。
下のほうで真紘が急いた様子で全身を露にする気配とベッドの軋みを感じて、薪は、真紘の舌の動きに必死に追い縋りながら、まるでこのときを待っていたとばかりにさらに溢れだす蜜が秘裂や隘路を潤沢に満たしていくのを、ずん……と重く深く降りてくるような子宮の感覚で知る。
「んっ、んんっ……んっ、んぅ……っ」
キスはまだ、降り止まない。薪に使わせていた枕の下に手を入れた真紘が、数瞬ののち、ビリ――と包みを破いた音がして、付けるその数秒だけ、唇が離れる。
「……待っ、て。してもらった分、私も主任に、したいです……っ」
「今日はいい。もう一秒だって余裕がない。挿れるぞ」
「そんな……っ。それじゃあ、主任がっ。待っ、ん――あ……っ」
そのわずかばかりの時間に薪も手や口でしたいと言ってみたけれど、真紘は聞き入れてくれる様子はなく、一秒だって余裕がないという言葉の通り、ひどく切羽詰まったように自身の先端で合わせ目を辿って入り口を探し当てる。けれど、そこからは慎重に中を進んで、ゆっくりと時間をかけて薪の奥までその熱塊を沈めた。
「――っ。はぁ……。薪の中って、こんななんだな。……すげぇ」
すると、すぐに動きはじめるだろうと思っていた真紘が、薪の奥に挿入を果たしたそのまま、ピタリと身体の動きを止めた。見ると眉間にしわを寄せて固く目を瞑っていて、まるで昂ってくるものを必死に抑え込んでいるようだった。
「主任……?」
薪の呼びかけに目を開け、ゆるゆるとこちらを見つめてきても、真紘の眉間には深くしわが刻まれたまま、必死に抑え込むような切ない表情は変わらない。
「悪い。ちょっとまだ、動けない」
「え?」
「可愛く吸い付いて離してくれない」
「主任もです。熱くて大きくて、私に〝甘えてる〟って感じが可愛いです」
「……うるせーよ。俺には〝やっと〟なんだ、もう少しこのままでいさせてくれ」
「はい」
どうやら真紘には、まだ動けるだけの余裕はないらしい。
薪のほうとしても、中でじっとしていても下腹部の苦しいくらいの圧迫感と、ドクドクと波打つ熱い塊の存在感に〝いる〟と激しく主張され続けているものの、つい今しがたまで休む間もなく鳴かされ続け、そこかしこに甘い倦怠感を覚えていた身体には、この思いがけない小休止は、正直、とてもありがたいものだった。
「え?」
「いや。俺がよくても薪は気にするもんな。……わかった。だいぶ冷めたと思うけど、風呂の準備をしてくるから、その間にやっぱり薪は食っとけ。キッチンの鍋にはまだ熱いのが残ってるし、レンジも適当に使ってくれていい」
「……はい。――わわっ、じ、自分でできますって……っ」
「ん。でも、俺がしたいから」
自分の口元を手で覆いながらふるふると頭を振った真紘は、けれどすぐに薪と床の間に手を滑り込ませて抱き留めるように身体を起こすと、薪の乱れきった髪を直したり、顔に残る、真紘がわからなくてしんどいと流した涙の跡や、飲み込みきれずに口の端から零れていったお互いの唾液を親指でぐっと拭き取り腰を上げた。
――煽り上手なのはどっちなの……。
そのまま部屋を出てシャワールームへ向かっていった真紘の背中に、薪は心から思う。胸がキュンと鳴るほどの優しい言葉とは裏腹に、仕草や手つきはいつも通りの強引な真紘のままで、今度は子宮の奥がきゅぅ……っと甘く鳴く。
真紘のキスは経験の乏しい薪にも察して余りあるほど激しく、また、過激と言い換えても遜色ないだろうものだったものの、けして薪の身体を自分の思いのままにしようとしているわけではなかったことは、本能的にわかる。
薪が止めたとき、我に返った真紘は〝どうにも歯止めが……〟と言っていたけれど、本当にそれだけだったのだろう。むしろ、激しければ激しいほど真紘の思いごと注ぎ込まれているようで、薪はそれが心の底から嬉しくて、全部受け止めたくて、欲しくて、応えたくて、必死に真紘と舌を絡め続けたようなものだった。
――ご飯を食べて、お互いにシャワーを浴びたら、そんな主任と……。
そんなことを思いながら、薪はさっきは一口だけで終わってしまったお粥をレンゲでひと匙掬い取ると、はむっと口いっぱいに放り込んだ。
本当はシャワーを浴びたらそのまま真紘とベッドになだれ込みたい衝動が薪の身体を疼かせているけれど、キスだけであの激しさだ。ここ二週間、特にこの三日間の自分の生活を思い返すと、弱った身体では到底、受け止めきれない。
それでは真紘に申し訳ない――というより、薪の気持ち的に、もったいない。
欲しがれば欲しがっただけ、真紘はきっと薪の身体に〝自分を好きになってもいい〟と刻み込んでくれるはずだ。そんなの、全部感じたいに決まっている。
とはいえ、あの金曜日の夜、思いがけず真紘と映画館で遭遇してしまい、あれよあれよという間に急激に関わる機会が増えた――いや、真紘に意図して増やされたときから、悔しいけれど好きになるきっかけや兆候はたくさんあった。
それをどうしても認めたくなくて、ずっと気づかないふりをしてきたけれど、足湯場でのあのキスがとどめになってしまったようなものだ。
鬼だ鬼畜だ超ドSだ、だって〝あの〟新田真紘だ、仕事以外では絶対に関わりたくないと何度となく思ってきたはずの真紘からの唐突すぎるキスに〝気持ちいい〟しかわからなかったことこそ、いくら拒もうが抗おうがどうしようもないほど真紘に落ちていく決定打になっていたのかもしれないなと、薪は思う。
「好きになってもいいって体に刻み込んでほしいって、ずるいよね、きっと……」
カチャリとレンゲを置くと、薪は口の中で小さく声を転がした。
――でも、主任を安心して好きになりたいんだもん……。
オフィスの鬼と付き合うには、薪のほうにもそれ相応の心構えと、そんな鬼が自分を好きでいてくれるという確かな〝証〟のようなものがほしかった。
もちろん〝証〟とセックスが必ずしも直結するわけではないことは、薪にだってわかる。けれど、安心材料のひとつになることは間違いないし、好きだから身体を求めることも、好きになってほしいから、好きになりたいから身体を求めることも、それはそれでひとつの〝証〟として成立するんじゃないかと思えてならない。
とどのつまり、薪は真紘と深く深く繋がって、自信を持ってもっともっと真紘に溺れていきたいのだ。それをグズグズになるまで身体に刻み込んでもらい、真紘のことを〝好き〟しかわからなくしてほしい――。
「……食べなきゃ」
そのためには、少しでも多く食べておかないと身が持たない。
レンゲを持っていた手に今度は箸を持ち、薪は卵焼きにかぶりつく。なんとなく出汁巻き卵を想像していたけれど、鬼の真紘が作るには可愛すぎる、砂糖で甘く味つけされた卵焼きは、冷めつつあっても薪の身体をじんわり温かくしてくれた。
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「ぁん……ぁっ、ん……っ。ぅん、んんっ……ぁ、あっん……っ」
「薪、どこがいい? 薪の気持ちいいところ、全部教えてくれ」
「それ……っ。それ、一緒は……ゃあ……っ」
「わかった。もっとしてやる。腕でも背中でも、どこでもしがみついてろ」
「……んああっ――!」
それからベッドルームでは、素肌がシーツに擦れる衣擦れの音と、ベッドが軋む音、断続的に甘い声で喘ぎ続ける薪の声と、そんな中でも耳にはっきり届く、薪の中から溢れて止まらないくちゅくちゅという粘着質な音が響き続けていた。
首筋を舌でなぞったり吸い上げたり、かと思えば唇で柔く食まれながら、さらに指で中のほうを弄られていた薪は、真紘の〝もっとしてやる〟という低くサディスティックな声と同時にしなりを強くした指先に翻弄され、大きく嬌声を上げる。
こんな調子で、薪はさっきからずっと真紘に鳴かされっぱなしだ。
何度、真紘が見ている前で薪だけ絶頂に達したかも、もうとっくに芯まで快感に痺れてしまっている頭では、どうしたって数えようもなかった。
今度のもまた、薪だけだ。
「ゆ……び、抜いて……動かすの、だ……め……」
真紘の腕にしがみついて大きな絶頂の本流になんとか耐えた薪は、けれど長く強い余韻が引かないうちから指を動かしはじめた真紘に、零れそうなほど目に涙を溜めて、ちょっと待ってほしいと訴えかける。
どうしてもカクカクと小刻みに動いてしまう腰が恥ずかしくて、足の間に差し込まれた真紘の胴をぎゅっと挟み込むものの、少しも力が入らないから、指の動きを追うようにしてまたいやらしく腰が浮いてしまうのを止められない。
それがまた薪の羞恥心を煽るのと同時に甘く鳴かせるため、ますます真紘は薪を絶頂に至らせようと奥や恥骨の裏のスポットを執拗に責め立てるのだ。
――こんな愛撫が、薪の身体の至るところで、もうずっと続いている。
口の中はもちろん、それと同時に乳房を揉みしだいてみたり、鷲掴んでみたり。その膨らみの先端にある固く尖ったふたつの実を指で挟んだり、ぐりぐりと押し潰してみたり、摘んでみたり、口に含んで吸ってみたり、ザラザラと舌で転がしてみたりと、真紘は本当に薪の身体に〝刻み込む〟勢いでとめどなく愛撫を続けた。
そのたびに薪の身体は弓なりにしなり、背中が浮いた。ずんずんと子宮の奥からうねりが起きて、蜜が溢れ、自分でも肌を垂れていったのがわかるくらいだった。
たまらなくなって、もぞもぞと膝頭を擦りつければ、ぐっと足を割られ、そこに真紘の身体が滑り込む。隠すものもない中、かっぽりと開かれた両足の間に顔を埋めた真紘は、今度はすでに敏感になりすぎているくらい敏感な淫芽にぢゅーっと吸い付き、薪はそこで、まな裏をチカチカさせながら一回目の絶頂を味わった。
そこからはもう、何が何だかわからない。
何度も真紘に絶頂に導かれながら、そうして今に至る。
「だめじゃない。どこがいいか全部教えろって言った。そこに〝俺を好きになってもいいって刻み込め〟って言ったのは薪なんだから。いい子だから――な?」
「ああっ! やだっ、主任……っ! そんなとこ、だめだって……っ!」
「ちょっと黙ってろ。ここもしっかり刻み込むところなんだから」
「そんな……っ! そこ、さっきだって、散々……っ」
「いいだろ、薪が気持ちいいなら」
「や、ゃめ……ぁあっっ――!」
けれど、どうやら真紘には何を言っても煽る結果にしかならないらしい。やっと中から指を抜いてくれたと思ったのも一瞬で、先ほども散々、舐められ、吸われ、舌で遊ばれ、ぐじゅぐじゅになっている花芽に顔を寄せて一気に吸い上げられた。
当然、薪はまた真紘の前で自分だけオーガズムに身体を震わせる。
真紘だってもうずいぶん前から自身を大きくしていて、ボクサーパンツにきっちりとその形を浮かび上がらせているというのに、薪が触ろうと手を伸ばすと腕を取られ、シーツの上に固定されてしまうので、どうしようもない。
薪の身体の上を真紘が滑っていくときくらいしか、膨らみや硬さ、大きさから真紘の興奮を感じ取ることができなくて、それが薪はひどくもどかしかった。
「薪、どこがいい? もっと気持ちよくしてやる。言え」
「しゅ、にんが触ったとこ……っ、ぜん……ぶ」
「特にどこだ?」
「全部しか……っ、わ、わかんない……。けど、もう中に欲し……っ」
本当に何回だろう。
感じすぎてしまって、全身が性感帯にでもなってしまったんだろうかと思いながら、薪は息も絶え絶えに真紘に聞かれるままに答える。真紘が触れたところ全部に感じてしまって、どこがどう気持ちよくて、何をどうされたらもっと気持ちいいのか、薪はもうわからなかった。
ただ、もう指だけじゃ足りないことだけは、わかる。刻み込むならそこに、奥の奥に、中がいっぱいに満たされるまで真紘が欲しい――。
「……どうなっても知らねーぞ。いいか」
すると、ゆっくりと身体を起こし、髪の毛を掻き上げた真紘が、低く唸るようにそう言った。薪を見つめるその双眸はひどく獣じみていて、目が合った瞬間、ぞわりと背筋を這い上がってくる得体の知れない感覚に身震いすら覚える。
けれど、薪だって欲しい。
自分だけ気持ちいいのも、真紘の屹立が窮屈そうにボクサーパンツの中に収まっているのも、もういい加減、切なすぎると思っていたところだ。
「はい。……主任。私のこと、主任が〝好き〟しかわからなくしてください」
「――っ。天然煽り上手が。薪の望み通りにしてやるよ」
その瞬間、薪にがばりと覆い被さった真紘が激しいキスを降らせはじめた。
下のほうで真紘が急いた様子で全身を露にする気配とベッドの軋みを感じて、薪は、真紘の舌の動きに必死に追い縋りながら、まるでこのときを待っていたとばかりにさらに溢れだす蜜が秘裂や隘路を潤沢に満たしていくのを、ずん……と重く深く降りてくるような子宮の感覚で知る。
「んっ、んんっ……んっ、んぅ……っ」
キスはまだ、降り止まない。薪に使わせていた枕の下に手を入れた真紘が、数瞬ののち、ビリ――と包みを破いた音がして、付けるその数秒だけ、唇が離れる。
「……待っ、て。してもらった分、私も主任に、したいです……っ」
「今日はいい。もう一秒だって余裕がない。挿れるぞ」
「そんな……っ。それじゃあ、主任がっ。待っ、ん――あ……っ」
そのわずかばかりの時間に薪も手や口でしたいと言ってみたけれど、真紘は聞き入れてくれる様子はなく、一秒だって余裕がないという言葉の通り、ひどく切羽詰まったように自身の先端で合わせ目を辿って入り口を探し当てる。けれど、そこからは慎重に中を進んで、ゆっくりと時間をかけて薪の奥までその熱塊を沈めた。
「――っ。はぁ……。薪の中って、こんななんだな。……すげぇ」
すると、すぐに動きはじめるだろうと思っていた真紘が、薪の奥に挿入を果たしたそのまま、ピタリと身体の動きを止めた。見ると眉間にしわを寄せて固く目を瞑っていて、まるで昂ってくるものを必死に抑え込んでいるようだった。
「主任……?」
薪の呼びかけに目を開け、ゆるゆるとこちらを見つめてきても、真紘の眉間には深くしわが刻まれたまま、必死に抑え込むような切ない表情は変わらない。
「悪い。ちょっとまだ、動けない」
「え?」
「可愛く吸い付いて離してくれない」
「主任もです。熱くて大きくて、私に〝甘えてる〟って感じが可愛いです」
「……うるせーよ。俺には〝やっと〟なんだ、もう少しこのままでいさせてくれ」
「はい」
どうやら真紘には、まだ動けるだけの余裕はないらしい。
薪のほうとしても、中でじっとしていても下腹部の苦しいくらいの圧迫感と、ドクドクと波打つ熱い塊の存在感に〝いる〟と激しく主張され続けているものの、つい今しがたまで休む間もなく鳴かされ続け、そこかしこに甘い倦怠感を覚えていた身体には、この思いがけない小休止は、正直、とてもありがたいものだった。
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