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2.モヒカン、異世界を疾走する
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「ヒャッハアアアアア!!」
俺は土でできた街道をバギーで気持ちよく疾走していた。
街道の周囲は草原、いや原野というべきか。よくわからない草が好き放題に生えてて、遠くには森が見える。この街道を作ったときに、森を切り開いたのだろう。
神様によって無事に異世界へ転生した俺が目覚めた場所は、周囲に山と森しかない街道だった。
とりあえずバギーで疾走しているが、人どころか動物ともすれ違わなくて寂しいので、叫んでみたたというのが現状だ。
今の俺はモヒカンマッチョだ。「ヒャッハー!」と叫ぶと不思議と落ち着く。
一応、出発前にバギーと荷物を確認した。
荷台にあった荷物の中には携帯食料と水、ノートとペンが入っていた。また、バギーの横には大きな斧が取り付けられていた。
バギーの方は計器類にメモがくっついていて、神様からの説明が書いてあった。
何でもこのバギーは魔力で動いており、燃料補給の必要がないらしい。また、俺の任意でキーの形になってくれるそうだ。街に入る時など重宝するだろう。
そして神様の妻、つまり女神の居場所はすぐにわかった。
遠くに光の柱が見えるのである。
山の向こう、かなり遠そうだが、空に向かって伸びる細い光の柱が見えるのだ。
どうも今の俺は感覚も普通の人間と違うようで、物凄い存在がいる気配をビンビン感じる。
とりあえず、光の柱を目的地として街道をバギーで飛ばしているというわけである
道が悪いから速度は出ていないが、既にそれなりの距離を移動している。
にもかかわらず、農家の一軒も無い。もしかして、物凄い辺境に出て来たのだろうか。不安だ。
あの光の柱も目立つけれど距離感が掴めないのが不安を誘う。「実は地の果てでした」とかありそうで恐い。
とりあえず、どこか人里を見つけて情報を仕入れないといけない。
荷物の中には現地通貨がなかったから金策も必要か。
いや、そもそも今の俺はいかにも悪人面のモヒカンだ。この姿を見られた瞬間に山賊扱いされて襲われたりしないだろうか? ……言語も含めて諸々の不安要素は『支障は無い』という神様の言葉を信じるしかない。
行き当たりばったりになりそうだが、情報不足なのでいかんともしがたい。
荷物にあったノートで神様と連絡を取り合えるらしいので後で色々と書いておこう。サポートを受けれるのは助かるなぁ。
道がどんどん悪くなるのでバギーの速度を緩めながら、そんなことを考えていた時だった。
少し向こうに馬車が見えた。数は二台。
「ん? あれはまさか?」
俺が注目したのは、馬車の周りだった。複数の人がなにかキラキラ反射するものを振り回している。
それが剣だと気づくのに時間はかからなかった。
あの馬車の周りで戦いが起きている。
近づいていくにつれて、戦いの全貌が明らかになってきた。
女性が二人。騎士っぽい胸のでかい銀髪と、魔法使いっぽい胸のでかい金髪が、鎧を着た兵士らしき者と戦っている。兵士の数は五人くらい。女性側が苦戦している。
――聞いた憶えがある。異世界に転生したら襲われた馬車を助け、ヒロインと出会うのだと。
なるほど。これはサービスの行き届いたお仕事だ。
これが神様の用意したチュートリアル的なイベントなのか、はたまた偶然なのかわからないが、感心しながら俺はバギーを加速させた。
○○○
馬車の隊列に近づくと状況がわかってきた。
やはり、女の二人組が苦戦しているようだ。
また、三人の男が地面に転がっていて、光る縄で縛られている。魔法というやつだろうか?
「ヒャッハアアアアア!!」
とりあえず、叫びながらバギーで戦いの中に割って入る。
突然の侵入者に戦いが止まり、場の全員が俺に注目する。
「な、なんだ貴様! なんなんだ!」
クロスボウを持った男が叫んだ。怯えた表情だ。まあ、いきなり変な乗り物に乗ったモヒカンが現れれば怯えもするか。
「……馬車が襲われてるのを見かけたんでな」
そう言うと、男が顔を輝かせた。
「おおっ。力を貸してくれ、これは心強い!」
そんな言葉が別のところから来た。女騎士相手に油断無く剣を構える壮年の男だ。
この男、装備が良さそうなところを見るに男達のリーダーだろう。
「いけません! 正義は我らにありですわ! ワタクシ達にお力添えを!」
次に口を開いたのは魔法使いっぽいの女だ。金髪巨乳。とんでもない美人さんだ。手には教鞭みたいな杖を持っている。何故か胸の谷間が強調され、スカートが途中から半透明になって下着が見えそうな衣服を身につけている。魔法使いじゃなくて痴女の類いかもしれない。
「む……えーと……」
両方から助力を求められてしまった。こういう時、悪い奴(だいたいは男)が襲いかかってくるもんじゃないのか?
「よしっ! 事情を聞こう!」
ここは双方の言い分を聞いてから状況を判断しよう。
俺の反応を見て、壮年の男の方が剣を構えながら口を開く。
「事情も何も、我らには……」
そこまで話したとき、背後に嫌な気配を感じた。
俺は振り返り、素早く腕を振る。
「うぇ……っ!」
振り向いた先でクロスボウを構えた男が驚愕していた。
簡単だ、俺の手の中には、太くて短い矢。クロスボウから発射されたそれが握られていたからだ。
この身体凄いよ! 飛んでくるクロスボウの矢を見てから、余裕で掴めた。……人間のスペックなんか余裕で超えてるんじゃないか?
「馬鹿者! 何をしている!!」
「だって……だってぇ……」
壮年の男が叱責。対してクロスボウの男は怯えきっていた。
考えてみれば、戦場に二メートル超えのモヒカン(バギー付き)が乱入してきて、なんか敵になりそうなんだから、当たり前の反応かも知れない。
とはいえ、俺の命が危険に曝されたのは事実だ。
「なかなか気の利いた対応をしてくれるじゃねぇか。どっちの味方をするか、決めたぜ」
よし、ここは女二人の味方をしよう。
俺は土でできた街道をバギーで気持ちよく疾走していた。
街道の周囲は草原、いや原野というべきか。よくわからない草が好き放題に生えてて、遠くには森が見える。この街道を作ったときに、森を切り開いたのだろう。
神様によって無事に異世界へ転生した俺が目覚めた場所は、周囲に山と森しかない街道だった。
とりあえずバギーで疾走しているが、人どころか動物ともすれ違わなくて寂しいので、叫んでみたたというのが現状だ。
今の俺はモヒカンマッチョだ。「ヒャッハー!」と叫ぶと不思議と落ち着く。
一応、出発前にバギーと荷物を確認した。
荷台にあった荷物の中には携帯食料と水、ノートとペンが入っていた。また、バギーの横には大きな斧が取り付けられていた。
バギーの方は計器類にメモがくっついていて、神様からの説明が書いてあった。
何でもこのバギーは魔力で動いており、燃料補給の必要がないらしい。また、俺の任意でキーの形になってくれるそうだ。街に入る時など重宝するだろう。
そして神様の妻、つまり女神の居場所はすぐにわかった。
遠くに光の柱が見えるのである。
山の向こう、かなり遠そうだが、空に向かって伸びる細い光の柱が見えるのだ。
どうも今の俺は感覚も普通の人間と違うようで、物凄い存在がいる気配をビンビン感じる。
とりあえず、光の柱を目的地として街道をバギーで飛ばしているというわけである
道が悪いから速度は出ていないが、既にそれなりの距離を移動している。
にもかかわらず、農家の一軒も無い。もしかして、物凄い辺境に出て来たのだろうか。不安だ。
あの光の柱も目立つけれど距離感が掴めないのが不安を誘う。「実は地の果てでした」とかありそうで恐い。
とりあえず、どこか人里を見つけて情報を仕入れないといけない。
荷物の中には現地通貨がなかったから金策も必要か。
いや、そもそも今の俺はいかにも悪人面のモヒカンだ。この姿を見られた瞬間に山賊扱いされて襲われたりしないだろうか? ……言語も含めて諸々の不安要素は『支障は無い』という神様の言葉を信じるしかない。
行き当たりばったりになりそうだが、情報不足なのでいかんともしがたい。
荷物にあったノートで神様と連絡を取り合えるらしいので後で色々と書いておこう。サポートを受けれるのは助かるなぁ。
道がどんどん悪くなるのでバギーの速度を緩めながら、そんなことを考えていた時だった。
少し向こうに馬車が見えた。数は二台。
「ん? あれはまさか?」
俺が注目したのは、馬車の周りだった。複数の人がなにかキラキラ反射するものを振り回している。
それが剣だと気づくのに時間はかからなかった。
あの馬車の周りで戦いが起きている。
近づいていくにつれて、戦いの全貌が明らかになってきた。
女性が二人。騎士っぽい胸のでかい銀髪と、魔法使いっぽい胸のでかい金髪が、鎧を着た兵士らしき者と戦っている。兵士の数は五人くらい。女性側が苦戦している。
――聞いた憶えがある。異世界に転生したら襲われた馬車を助け、ヒロインと出会うのだと。
なるほど。これはサービスの行き届いたお仕事だ。
これが神様の用意したチュートリアル的なイベントなのか、はたまた偶然なのかわからないが、感心しながら俺はバギーを加速させた。
○○○
馬車の隊列に近づくと状況がわかってきた。
やはり、女の二人組が苦戦しているようだ。
また、三人の男が地面に転がっていて、光る縄で縛られている。魔法というやつだろうか?
「ヒャッハアアアアア!!」
とりあえず、叫びながらバギーで戦いの中に割って入る。
突然の侵入者に戦いが止まり、場の全員が俺に注目する。
「な、なんだ貴様! なんなんだ!」
クロスボウを持った男が叫んだ。怯えた表情だ。まあ、いきなり変な乗り物に乗ったモヒカンが現れれば怯えもするか。
「……馬車が襲われてるのを見かけたんでな」
そう言うと、男が顔を輝かせた。
「おおっ。力を貸してくれ、これは心強い!」
そんな言葉が別のところから来た。女騎士相手に油断無く剣を構える壮年の男だ。
この男、装備が良さそうなところを見るに男達のリーダーだろう。
「いけません! 正義は我らにありですわ! ワタクシ達にお力添えを!」
次に口を開いたのは魔法使いっぽいの女だ。金髪巨乳。とんでもない美人さんだ。手には教鞭みたいな杖を持っている。何故か胸の谷間が強調され、スカートが途中から半透明になって下着が見えそうな衣服を身につけている。魔法使いじゃなくて痴女の類いかもしれない。
「む……えーと……」
両方から助力を求められてしまった。こういう時、悪い奴(だいたいは男)が襲いかかってくるもんじゃないのか?
「よしっ! 事情を聞こう!」
ここは双方の言い分を聞いてから状況を判断しよう。
俺の反応を見て、壮年の男の方が剣を構えながら口を開く。
「事情も何も、我らには……」
そこまで話したとき、背後に嫌な気配を感じた。
俺は振り返り、素早く腕を振る。
「うぇ……っ!」
振り向いた先でクロスボウを構えた男が驚愕していた。
簡単だ、俺の手の中には、太くて短い矢。クロスボウから発射されたそれが握られていたからだ。
この身体凄いよ! 飛んでくるクロスボウの矢を見てから、余裕で掴めた。……人間のスペックなんか余裕で超えてるんじゃないか?
「馬鹿者! 何をしている!!」
「だって……だってぇ……」
壮年の男が叱責。対してクロスボウの男は怯えきっていた。
考えてみれば、戦場に二メートル超えのモヒカン(バギー付き)が乱入してきて、なんか敵になりそうなんだから、当たり前の反応かも知れない。
とはいえ、俺の命が危険に曝されたのは事実だ。
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