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3.モヒカン、異世界で初戦闘する
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「助太刀の方! 彼らの命は取らぬようにお願いしたい!」
バギーから斧を取り出そうとした俺を見て、女騎士が叫んだ。
なるほど、不殺の精神ってことか。こんなナリだが元は日本人の俺としては、いきなり殺人しまくりはハードルが高いから助かるぜ。日本人の時の記憶は大分怪しいけどな。
「どうすりゃいい! 俺は手加減が苦手だ!」
厳密には手加減できないだけだ。そもそも戦えるのか? そこはハイスペックな身体を用意したという神様の言い分を信じるしかない。
「彼らの動きを止めてくれれば姉上がどうにかしてくれる!」
「本当か……よっと!」
俺はバギーから飛び降りて、一直線にある方向に加速する。
蹴り上げた地面が抉れる感触があった。一瞬で全身が加速する。桁違いの脚力だ。
目標としたクロスボウの男が動く前に、目の前に到達した。
「ひっ、ひぃっ!」
装填作業中だった男はクロスボウを投げ捨てた。逃走する気だ。いきなり二メートル超えのモヒカンが高速接近すれば、そうもなるだろう。
もちろん、俺はそれを見逃さない。男の腹に素早く拳を叩き込む。もちろん、軽くだ。
「ぐぇっ!」
呻き声と共に、男はうずくまった。物凄く辛そうに腹を押さえ、胃液を吐き出している。
軽く殴っただけなのに、想像以上に効いてる。内蔵とか大丈夫かな?
そう思っていると、男の身体が光の紐で拘束された。
見れば、痴女風の魔法使いが杖を手にこちらに向いていた。
「その調子でお願いしますわ!」
「わかった! やってみるぜ!」
返事と共に、身体能力頼みの動きで、俺は次々と護衛を殴り飛ばす。向こうは槍やら剣やらで武装していて命を狙ってきてるのに、こちらは素手で手加減だ。
不公平なようだが、身体の性能が違いすぎて勝負らしきものになってないのでまあ、いいか。
あっという間に俺は護衛の兵士達を蹴散らした。一人を除いて魔法で拘束だ。
「残るはあいつ一人か……苦戦してるみたいだな」
俺が戦っている間、女騎士はずっとリーダーと交戦していた。
あのリーダー、なかなかの腕前らしく双方巧みな剣捌きでやりあっている。
戦いはなかなか終わりそうにない。今も「なかなかやるなっ」「そちらこそ降伏したらどうだっ」とか二人きりの世界に入っている。もう大体決着はついてるんですけどね。
「やれやれ。仕方ねぇな……」
俺は足下にあった、手頃な大きさの石ころを拾った。
ちょうどそのタイミングで、女騎士とリーダーが距離を取ったので声をかける。
「おい! もうお前一人だけだぞ!」
「なんだとっ」
いつの間にか勝負がついたことに驚くリーダー。周囲を確認するために、動きを止まった。
「よっと」
今だと思ったので、俺はちょっとだけ力を込めて、石ころを投げた。
手加減したつもりだが、かなりの速度で石ころは飛んでいった。
そして、リーダーは石ころに反応できなかった。
「ぬがっ!」
頭部に投石の直撃を受けて、リーダーがふらつく。手加減したから昏倒とはいかなかったようだ。 だが、女騎士がその隙を見逃さない。
「貰ったぁ!!」
女騎士は気合いと共に、剣の平の部分で首を軽く弾いた。斬るのではなく、あくまで叩く動作だ。
一瞬、火花のようなものが散って、そのままリーダーは倒れ込んだ。
なるほど、魔法の仕込まれた剣ってやつか……。興味深いな。
「姉上!!」
「お任せですわっ!」
魔法使いが杖を振ると、男は即座に拘束される。
「死、死んでないよな?」
「もちろん、気絶しただけです。逞しい人、礼を言わせてください。姉上も……姉上?」
見れば、妹に呼びかけられた魔法使いは馬車に駆け込んでいた。
「……なんで馬車に?」
「姉上は……目標に向かって真っ直ぐなのです」
少しして、馬車からひょっこり金髪が顔を出した。
「やりましたわセイン! 宝の山ですわよ!! ザックザクですわ!!!」
「おお、やりましたね! 姉上!」
俺を放って女騎士も馬車に向かっていった。馬車の中から「おおっ、これは!」「お宝ですわー!」という歓声が聞こえる。
あまり考えたくないが、恐ろしい想像が脳裏をよぎる。
……もしかして、この二人、馬車を襲ってた?
バギーから斧を取り出そうとした俺を見て、女騎士が叫んだ。
なるほど、不殺の精神ってことか。こんなナリだが元は日本人の俺としては、いきなり殺人しまくりはハードルが高いから助かるぜ。日本人の時の記憶は大分怪しいけどな。
「どうすりゃいい! 俺は手加減が苦手だ!」
厳密には手加減できないだけだ。そもそも戦えるのか? そこはハイスペックな身体を用意したという神様の言い分を信じるしかない。
「彼らの動きを止めてくれれば姉上がどうにかしてくれる!」
「本当か……よっと!」
俺はバギーから飛び降りて、一直線にある方向に加速する。
蹴り上げた地面が抉れる感触があった。一瞬で全身が加速する。桁違いの脚力だ。
目標としたクロスボウの男が動く前に、目の前に到達した。
「ひっ、ひぃっ!」
装填作業中だった男はクロスボウを投げ捨てた。逃走する気だ。いきなり二メートル超えのモヒカンが高速接近すれば、そうもなるだろう。
もちろん、俺はそれを見逃さない。男の腹に素早く拳を叩き込む。もちろん、軽くだ。
「ぐぇっ!」
呻き声と共に、男はうずくまった。物凄く辛そうに腹を押さえ、胃液を吐き出している。
軽く殴っただけなのに、想像以上に効いてる。内蔵とか大丈夫かな?
そう思っていると、男の身体が光の紐で拘束された。
見れば、痴女風の魔法使いが杖を手にこちらに向いていた。
「その調子でお願いしますわ!」
「わかった! やってみるぜ!」
返事と共に、身体能力頼みの動きで、俺は次々と護衛を殴り飛ばす。向こうは槍やら剣やらで武装していて命を狙ってきてるのに、こちらは素手で手加減だ。
不公平なようだが、身体の性能が違いすぎて勝負らしきものになってないのでまあ、いいか。
あっという間に俺は護衛の兵士達を蹴散らした。一人を除いて魔法で拘束だ。
「残るはあいつ一人か……苦戦してるみたいだな」
俺が戦っている間、女騎士はずっとリーダーと交戦していた。
あのリーダー、なかなかの腕前らしく双方巧みな剣捌きでやりあっている。
戦いはなかなか終わりそうにない。今も「なかなかやるなっ」「そちらこそ降伏したらどうだっ」とか二人きりの世界に入っている。もう大体決着はついてるんですけどね。
「やれやれ。仕方ねぇな……」
俺は足下にあった、手頃な大きさの石ころを拾った。
ちょうどそのタイミングで、女騎士とリーダーが距離を取ったので声をかける。
「おい! もうお前一人だけだぞ!」
「なんだとっ」
いつの間にか勝負がついたことに驚くリーダー。周囲を確認するために、動きを止まった。
「よっと」
今だと思ったので、俺はちょっとだけ力を込めて、石ころを投げた。
手加減したつもりだが、かなりの速度で石ころは飛んでいった。
そして、リーダーは石ころに反応できなかった。
「ぬがっ!」
頭部に投石の直撃を受けて、リーダーがふらつく。手加減したから昏倒とはいかなかったようだ。 だが、女騎士がその隙を見逃さない。
「貰ったぁ!!」
女騎士は気合いと共に、剣の平の部分で首を軽く弾いた。斬るのではなく、あくまで叩く動作だ。
一瞬、火花のようなものが散って、そのままリーダーは倒れ込んだ。
なるほど、魔法の仕込まれた剣ってやつか……。興味深いな。
「姉上!!」
「お任せですわっ!」
魔法使いが杖を振ると、男は即座に拘束される。
「死、死んでないよな?」
「もちろん、気絶しただけです。逞しい人、礼を言わせてください。姉上も……姉上?」
見れば、妹に呼びかけられた魔法使いは馬車に駆け込んでいた。
「……なんで馬車に?」
「姉上は……目標に向かって真っ直ぐなのです」
少しして、馬車からひょっこり金髪が顔を出した。
「やりましたわセイン! 宝の山ですわよ!! ザックザクですわ!!!」
「おお、やりましたね! 姉上!」
俺を放って女騎士も馬車に向かっていった。馬車の中から「おおっ、これは!」「お宝ですわー!」という歓声が聞こえる。
あまり考えたくないが、恐ろしい想像が脳裏をよぎる。
……もしかして、この二人、馬車を襲ってた?
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