日本戦車を改造する。

６輪機動戦闘車の脅威・・・

動揺するシベリア基地。

　「イワン司令。」「なんだ。」「これを、どうするんですか。」「・・・・」「モスクワが・・・」「それは、オレも同じだがや。」「・・・・」
　副官のイワノビッチとイワン司令官が報告書をながめて・・・・
そうなのだ、欧州へ流れた日本軍の６輪機動戦闘車の話題が、巡り巡ぐってモスクワへ・・・それからシベリア鉄道で、このシベリア基地へ・・・
　Ｔ３４の天下は終わったと、ドイツの新聞が・・・写真入りで書き立ててるのだ。
英国のロンドンタイムスなんか、英国が技術導入か・・・と、３段抜きで書き立ててるのだ。
　「これは、本当の話ですかね。」と、副官が・・・
「わからん、でもウソとも思えんのだ。」と、イワン司令だ。
　「確かめる必要がありますな。」と、副官が加える。
「しかし、もしマジな話なら、我がＴ３４が敗残だぞ。」と、イワン司令だ。
　「そうなれば、モスクワが永遠になりかねない。」と、イワン司令が嘆くのだった。
「Ｔ３４の新型でもあると・・・」と、副官が・・
　「いや、ウワサも聞いてないぞ。」と、嘆くイワンだ。
新型ができると、たいていウワサが流れてくるものなのだ。
　「満州国の派遣軍が、これを持ってるか確かめる必要があるだろう。」と、イワン司令が決断した。
「しかし、T３４をやられるのがわかっていて、出せる訳がないぞ。」と、副官だ。
　「それは、そうだが・・・」と、考えるイワン司令官である。
実際、６輪機動戦闘車は１両が試験的に完成してるだけだったのだ。
　お披露目でバレードした３両の内、２両は走行ができるだけのハリボテだったのである。
そして、そのハリボテを完成しようと苦労している戦車開発工場だったのだ。
　　
　「うむ、これでは生産ラインへは乗せられないぞ。」「しかし、この４５度装輪は、カナメなのだ。」
「しかし、しかしだ。」「検査をパスした部品が無いじゃないか。」「・・・・」
　そうなのだ、４５度操舵装置がなかなか完成しないのだ。　
それに、１両に６基の操舵装置が必要なのである。
　戦車となるべく部品の共通化を図っていたが、この４５度操舵装置は独自のモノであり、替えがきかない部品なのである。
　４５度操舵ができる初号機は偶然の産物なのかもしれないのだ。
それほど、４５度操舵は工作精度が求められるのである。

　こうして、６輪機動戦闘車をめぐり、ソ連軍と満州国の派遣陸軍との画策が・・・・
まあ、それが互いの抑止力になってるんだが・・・
　それが、解決したのは数ヶ月後のことだった。
「やっと、工作機械が到着しましたか。」「あ、あ、やっとだ。」と、港から降ろされる木箱を見る技師らである。
　「なんせ、満州国にある工作機械では部品の精度が出ないからな。」と、吐き捨てる技師らだ。
「４５度操舵は精度がよくないと。」「これで、あとの２両も完成できそうだな。」と、やっと３両が・・・
　「ところで、部隊の人員はそろったのかね。」「えっ、その、なんです。」と、煮え切らない人事部だ。
まあ、戦闘車両が無いのに募集なぞできないのだが・・・
　「１両に４名の人員が必要だ。」「最低１２名は集めねばならないぞ。」「ハァ。」
内地なら、まだしも。　この離れたクニの満州の派遣軍の希望者なぞ・・・・
　「戦車隊員も、手が一杯なのに、無理ですよ。」「それは、わかるが、そこをヤルのが人事部だろう。」
「そうはいっても・・・」と、人事部の三木主任は困惑するだけなのだった。
 　「ここは、内地で大々的に募集広告を・・・」と、しかしだ。　内地で募集を掛ける予算がないのだ。
しかたなく、満州政府へ働きかける人事部だった。
　内地での満州国の話題は・・・清楚で可憐な満州娘しかない。
満州映画の娘には数多くの女優がそろっていた。
　もちろん、満州政府の肝いりだから、女優らも進んで協力してくれたのである。
満州映画の人気スターの李梨葉（リョウカ）を指名してポスターを制作することとなる。
　もちろん、絵ずらは６輪機動戦闘車と李梨華の組み合わせだ。
砲塔では、美脚が写せない。　仕方がないので戦闘車の正面でほほ笑むスタイルとなったのだ。
　それも、日本の最新の色刷り印刷である。
光学技術は世界に冠たるのだが、写真の印刷も最高なのである。
　駅や、役所に貼られたポスターは、ほとんどが李梨華のファンに・・・・
転売屋の狙い撃ちに・・・
　国会の議決で転売禁止の物品に加えられたとか・・・ポスターでは初だ。
やはり、清楚で可憐なオナゴは強力な戦力なのである。